FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

太陽光はFIT価格が下がると儲からないのか

産業用太陽光発電所、いわゆる野立て太陽光事業は、固定買取価格が年々下がってきました。送電量50kW以下といういわゆる「低圧」の発電所の場合、当初1kWhあたり40円だったFIT価格は、2019年には14円、2020年は13円(しかも全量買取なし)です。

 

FIT価格が下がると太陽光は儲からないのか

さて、太陽光の話をすると、たいてい言われるのが「昔は買取価格が高かったけど、最近は安くなってしまいましたよね(だから昔ほど儲からなくなったでしょう?」という言葉。

 

いえ、実はそんなことはないんです。なぜなら、買取価格が下がるとともに設備の価格も下がってきたからです。太陽光発電のコストと収益の構造を確認しましょう。

 

まず収益は、発電量1kWhあたりの買取価格がFITで決まっています。2012年は40円でしたが、これが2019年には14円まで下がりました。ここだけ見ると、65%も売上減です。
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ソーラーサポートセンターより


ところが、同時に太陽光発電設備、主にソーラーパネルの価格も低下しています。1kWhあたりの売上も下がりましたが、パネルのほうも急速に値段が安くなっており、どちらかというとパネルの価格下落のほうが大きいくらいです。

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ソーラーパートナーズより

 

つまり投資として考えた場合、売上も減りますが投資額も減るので、利回りは変わらないということになります。同じ資金を投資する場合、設置するソーラーパネルの数が増えるので、売上額も同等という感じです。

パネル以外の条件はちょっと変わる

太陽光発電所の必要資金のほとんどはパネルとパワコンですが、ほかにも必要なものがあります。昔と現在で大きく変わるのは土地ですね。

 

単価が半分になれば、単純計算でパネルの枚数も2倍になり、設置に必要な土地もその分広くなるからです。日当たりがよく、しかも広い土地が必要になる。これはなかなか難しいところで、業者がだんだん物件を見つけにくくなっている理由でもあります。

 

でも、土地が広くなるからコストが上がるのかというと、これがまたそこまで単純でもありません。太陽光発電に使われる土地は、だいたいにおいて利便性の悪い場所にある土地で、普通に売れば二束三文というものが多いからです。太陽光発電に使うからこそ高い値がつくわけです。

 

そして、太陽光発電業者(EPC業者)は、土地と発電システムをひっくるめたコストに対して、表面利回りが10%前後になるように価格を調整して売りに出します。パネルの値段と土地の値段を足し上げてコストを決めるのではなく、まず利回り10%ありきで、逆算して土地の値段が決まるような感じです。

 

なので、土地が狭くても広くても、利回りにはあまり影響しません。もちろん、自分で土地を探してきて発電所を建てるのであれば、違うんでしょうけど。

そもそもFIT価格はIRR一定になるように下げられてきた

そもそも経済産業省の資料を見ると、FIT価格は闇雲に下げられてきたわけではなく、パネル価格の下落と、調達金利の下落を見ながら調整されてきたことが分かります。

調達価格等の設定に当たって想定している適正な利潤(IRR)の水準は、 FIT 制度開始当初に国内外の金利水準や各電源の事業リスクを踏まえて、 区分ごとに設定されたものである。集中的に再エネ電気の利用拡大を図 るため、FIT 法の施行の日から3年間(2012 年7月1日~2015 年6月末) については、利潤配慮期間として1~2%の IRR が上乗せされ、事業用 太陽光発電の IRR は6%とされていたが、利潤配慮期間の終了により、 2015 年7月1日以降の IRR は5%となっている。

※経産省 平成 31 年度以降の調達価格等に関する 意見(案)

そして、太陽光発電事業が成熟してきて事業的なリスクが減っていることや、金利低下による資金調達コストの低下を反映させて、2019年のIRRは4%で計算されています*1

 

このようにIRRを元にFIT価格が計算されてきたので、投資家の観点でいうとどのタイミングでもリターンはそれほど変わらないというわけです。もちろん、初期の太陽光発電投資家は、海のものとも山のものとも分からないというリスクを負っていたので、その分1〜2%の追加IRRとなっていますが。

 

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2020年はFIT価格13円まで低下

さてそのFIT価格は19年までは価格が下がるだけでしたが、2020年度はいろいろと変わりました。発電量50kWを堺に、50kW以下を「低圧」、50kW以上を「高圧」と通称しますが、それぞれの単価が変わったのです。

  • 低圧(50kW以下)       13円
  • 高圧(50kW以上250kW以下) 12円

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低圧のほうが1円高いですが、「地域活用要件」という厳しい条件が付きました。これを満たさないと売電できません。

  1. 余剰売電であること
  2. 災害時に活用できること
  3. ソーラーシェアリングは全量売電可能

低圧は30%以上を自家消費しないとダメ

この「余剰売電」というのがくせ者です。自家消費可能な設備にした上で、計画書を提示し、自家消費の比率を30%以上にする必要があります。そして、災害時に使えるよう、パワコンにコンセントを設置することが必要です。

 

実質的に、発電のみを行う太陽光はもうダメで、工場などの屋根に設置して、自家消費しつつ、余った分を売る形になります。投資商品としては厳しいですね。

 

というわけで、市場にはまだ物件が出ていますが、新規の物件は2019年の14円モノで終了。FITの門は完全に閉じられたといえます。

*1:ちなみに、経産省が想定したIRR5%というのは、全期間をならしてみると5%利率の定期預金に預けたのと同じという意味で、つまりはだいたい15年で投資額が倍になる計算になります。表面利回りが10%なのに、どうしてIRRが5%になるのかというと、別途さまざまなコストがかかるというよりも、20年でFITが終了してしまうことが主要因だと考えられます。

太陽光土地の決済実行 土地売買契約の注意点

太陽光発電所1号基の建設が近づいています。そのために、契約済みの土地の決済を済ませてきました。あまり土地の売買は慣れていないので、都度新鮮です。どんな流れで、注意点はどこにあるのかを調べてみました。

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決済当日の流れ

決済当日は、土地近くに出向いてやりとりするのが一般的なようです。メンツは、売り主、買い主(ぼく)、仲介不動産屋、司法書士。売り主は、権利書や印鑑証明、契約書などを持ち寄り、それを司法書士がチェックします。

 

買い主は、現金を用意して、売り主が本当にその土地の所有者だということを確認(実際は司法書士がチェック)した上で、現金を手渡します。司法書士に、登記移転の委任状を書いて渡し、これで終わり、という感じ。

 

司法書士が、登記移転の手続きを行い、権利書と登記簿をあとで郵送してくれるという流れです。

なぜか現金?

世間のサイトを見ると、現金手渡しは盗難リスク、数え間違いなども発生するので、銀行振込が増えている、とあります。が、今回は現金指定。ATMは1日の引き出し限度額が定められているので、なかなか多額の現金を引き出すのはやっかいです。正直ちょっと面倒。

 

ただ話を聞くと、売り主の権利書などを確認する前に現金を振り込むとトラブルになることがあるということ。権利を持っていないのに売って、現金を振り込んでしまったら、これってただの詐欺じゃん? と思いますが、こういうトラブルを避けるために、同時決済をするのだそうです。

 

そのため、振り込みを使う場合も、権利書の確認を終えたあと、銀行振り込みを行い、売り主の口座に着金を確認してからその後の処理を行うということでした。うーん。面倒。エスクローサービスとかないのでしょうか。仮想通貨の送金なら、その場で10分もすれば確認できるのに。

土地売買契約の注意点

今回複数の太陽光発電所の建設にあたり、土地契約書も複数やりとりしています。それを見ると、意外にそれぞれの契約内容が違っていることに気づきます。よくある違いを簡単にまとめました。

 

公租公課の精算

契約書にあったりなかったりするのが、公租公課の精算です。土地には固定資産税がかかりますが、これは毎年1月1日の所有者に支払い義務があり、請求書が送られます。

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通常は、「所有権移転までに抵当権などの担保権・賃借権などの用益権などの一切の負担消除を約束」する条項が入っていると思います。その土地に担保が設定されていれば、買い主は困りますし、固定資産税が未払いだと差し押さえられてしまいます。まぁここは一般的に契約書で保証されているでしょう。

 

しかしあったりなかったりするのが、その年の固定資産税などの公租公課の精算です。例えば、7月1日に決済、引き渡しを行う場合、その年の固定資産税は売り主と買い主のどちらが支払うのかという点です。特に書いてなければ、売り主が支払ってあり、それで終わりでしょう。「日割りで按分して精算」などとある場合、7月1日ならちょうど半年ですから、固定資産税などを両者で折半、つまり、買い主が半分支払うことになります。

手付解除のペナルティ

不動産の売買は、契約を結ぶとともに、だいたい売買価格の1割程度の手付金を支払います。そのまま決済に進めば、残りの9割を払って終わりなのですが、意外とキャンセルしたいという場合があるものです。

 

ぼくの場合も、農転許可が下りずに売買がキャンセルとなり(特約事項で記載してある)、手付金が返ってきたことがあります。また、一時は売り主が「やっぱり売らない」と言い出して、キャンセルになりかけた土地もあります。

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買い主がキャンセルする場合は手付金の放棄、売り主がキャンセルする場合は手付金の倍返しが一般的なのですが、これは通例であって、契約書に記載がない場合もあります。

 

さらに、「手付解除の期限」が定められている契約書もあります。これは、上記の手付放棄/手付倍返しで解除できる期限に制限を設けるものです。民法では、手付解除について、次のように定めています。

買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。(民法557条 第一項)

しかし、「契約の履行」が何を意味するかは不明瞭なので、売り主に不利だという話です。

 

ある不動産会社のサイトには、一般的な手付解除の期限を次のように記載しています。これを過ぎての契約解除には、別途定めたペナルティ(代金の2割など)を定めることが多いようです。

  • 契約から決済まで1ヶ月以内  決済の1週間から10日前
  • 契約から決済まで〜3ヶ月 契約日から1ヶ月前後
  • 契約から決済まで〜6ヶ月 契約日から2〜3ヶ月

しかし、太陽光発電については決済まで長い長い時間がかかることが頻繁にあります。1年、2年ということも多いんですね。その間には買い手の事情も大きく変わる可能性があります。それを考えると、手付解除期限をなくすか、決済予定日の1ヶ月前くらいにするなどが、リスクコントロールとしては大事なように思います。

 

ただもちろん、これは双方に影響するものです。手付解除期限を設けなければ、「やっぱり土地は売らん!」という場合に倍返しで終わってしまうこともあるので、売りたい気持ちが強いのか、買いたい気持ちが強いのかで考えることも大事そうです。

 

いやはや不動産売買は奥が深いものです

こんな投資はしてはいけない(2) 新築ワンルームマンション

たまに、不動産屋からワンルームマンション投資の連絡をいただきます。どこをどう検討しても、投資に値しないのですが、いらないというのに物件案内を送るということで、郵便が届きました。

 

前回のやっちゃダメ!投資の外貨預金に続いて、今回は新築ワンルームマンション投資です。

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新築ワンルームマンションに注意

買っちゃダメ!絶対。のワンルームマンション投資ですが、パターンはだいたい決まっていて、

  • 新築
  • 家賃保証のサブリース契約
  • フルローンだが高金利
  • 賃料収入よりもローンや管理費のほうが高い。持ち出し
  • 「節税になる」がセールスポイント
  • 「ローンを払い終えたら年金代わり」というアピール

という感じです。

 

何はともあれ、投資でやっているのに毎月持ち出しが発生するというのがすごいところです。いや、もちろん持ち出しは発生するけど、出口でそれらを取り返せる利益が出るという収益物件もあるでしょう。でも、同じワンルームマンションでも、中古で、毎月利益を生みながら、出口でも売却益が見込めるという物件だってたくさんあるわけです。

 

そんな中で、CFやIRRとにらめっこしながら、収支を見たり最適なローン条件を計算したりするのが投資だと思うのですが、こと新築ワンルームマンションに関しては、節税くらいしかウリになるものがないわけです。

豪華さをアピールする物件資料

それを象徴するのが、同封されている資料です。投資観点では、毎年のCFと残債の状況、売却時点での想定売却価格などを書いたシミュレーションがほしいところなのですが、そういったものはまず入っていません。

 

逆にしっかり入っているのは、いかに利便性が高い豪華なマンションなのかをアピールするパンフレットです。要は、自分で住むための分譲マンションのパンフレットと同じものです。

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いや、「心安らぐプライベート空間」って、誰のプライベート? ぼくが住むわけじゃないよね? 宅配ロッカーとか食洗機とか、それ使うのぼくじゃないよね。

 

投資家観点では、こういった金のかかる設備を入れることで、それに見合う高い賃料を取れるのかということですが、その点はもちろんこう書いてあります。「リーゾナブルな家賃設定で、ほぼ満室です」

 

いや、サブリース契約なんだから、満室じゃなくてもこちらには収入は入ります。設備を豪華にして賃料を安くすれば、そりゃ埋まるでしょうけど、それって管理会社にとってのメリットで、オーナーのメリットじゃないですよね。

 

「ローンを払い終えれば、”資産”が手に入ります」。これも必ずうたわれるウリ文句です。でも、資産の定義は、それを持つことで利益を生み出してくれるものです。そしてその評価は、費やしたお金に対して見合う利益を生むかどうか、です。ローンを払い終わった築30年の都心ワンルームマンションは、たしかに利益は生むでしょうが、それが見合うかどうかは別問題です。

成功事例の額がすごい

こういうことを気にする投資家も多いのでしょう。売却による出口での成功例を書いた書類も同封されていました。こちら、1985年に購入し、33年後の2018年に売却したという事例です。自己資金と月々の持ち出し(!)とさらに租税公課(!)も入れて、投入資金は約850万円。売却時のリフォーム費用に80万円かけています。

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当時1160万円で買った物件が、33年たってそれでも1050万円で売れました。それでどのくらい利益が出たのかというと、たったの120万円です。租税公課とわざわざ書いてあるということは、この持ち出しによる損失で所得税が減った分を加味しているということですね。

 

ざっと計算すると、投資額に対する複利利回りは0.4%です。値下がりのリスクなども背負いながら、この利回り。持ち出しはイニシャルではなく33年間続いたでしょうから、多少利回りは改善しますが、倍になっても0.8%でしかありません。

 

しかも想像するに、これは登記手数料や売買の仲介コストは含まれていないように思います。また、売却益が出たということは、約20%の長期譲渡課税がかかります。これも入っていないでしょうね。

 

これが成功事例として挙げられるあたり、新築ワンルームマンションのすごさが分かります。また33年経って売却というのは、ここ5年ほどの不動産価格上昇をもってしても、やっと損益トントンになったのが18年ということでもあります。

投資は利益を目指すもの。所有欲を満たしたい?という人は別ですが

ここからよく分かるのは、投資というのはあくまで利益を生むためにするものだということです。なぜ他人が住むマンションに豪華設備が必要なのか、まったく僕には分かりません。キャッシュさえ生んでくれれば、それこそボロ家でも問題ないわけです。考えるべきは、空室や修繕にかかるコストが、家賃収入に見合うかどうか、売却時にどんな値付けになるかであって、物件の豪華さなんて、大家には関係ありません。

 

営業がしつこく買うよう迫ってくる投資商品ではなく、営業が売らなくても売れる商品を探すようにしましょう。

 

公庫のスタンプラリーをこなして融資ゲット

公庫で融資の内諾をいただいという記事を書きました。さて続いては契約です。この契約、けっこうなスタンプラリーです。あっちこっちを周り、ハンコを押してもらって、やっと契約となるのですが、さて。

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契約に必要な書類明細が届いた

内諾の電話のあと、契約に必要な書類を準備してね♪ と郵送物が届きました。この中の「抵当権設定契約証書」以外は、全部用意です。

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意外と面倒な印鑑証明

「借用証書」は必要事項を記載して印鑑を押すだけなので簡単なのですが、意外に面倒なのは「印鑑証明」です。これは、借り主である法人と、連帯保証人の個人のものが必要になります。

 

個人のほうは、マイナンバーカードを使ってコンビニで取得。200円で取得できました。もちろん、クレカでチャージしたnanacoを使い、セブンイレブンで取得です。意外に便利じゃん、マイナンバーカードという感じ。

 

問題は法人の印鑑証明です。以前も書いたように、登記簿謄本は郵送でも申し込めますが(しかも意外に早く届く)、印鑑証明は通常、法務局まで足を運ばなければなりません。土日はやっていないというおまけつきです。普段は日中の時間を作るのはそんなにたいへんではないのですが、ちょうどこのときはバタバタしていて先延ばしになっていたのでした。 

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で、ほかの書類を準備しながらふとみたら、年末に取得した印鑑証明が残っているではないですか。そのうち使うかもしれないから、取っておけ、と、前回法務局に行ったときに取得したものです。通常有効期限は3ヶ月なので、取りすぎるのもアレですが、1枚くらい余計にあると便利なものです。

預金通帳はネットバンク不可

預金通帳はメガバンクの法人口座を使います。ネット銀行は不可というこれまたお役所仕事です。そして、「預金口座振替利用届け」という書類に、銀行で印鑑を押してもらう必要があります。当然窓口です。

 

手続き自体は5分程度で完了したのですが、ふと「ネットバンキングってどうなっていましたっけ?」と聞いたら、「解約されています」という返答が。あれ? 解約なんてやってないけどな……と思って聞くと、「こちらの新サービスがオススメです」と言い始めます。

 

ちょっと待って。申込済みのサービスがどうなったのを調べてほしいんだけど。話をすり替えられてる……。で、よくよく聞くと、利用がないまま数ヶ月経つと自動で解約になるそうです。解約になる旨、メールも送ったということでした。そうだったっけ?

 

じゃあ新たにサービスを申し込もうとしたら、「二度目になるので契約手数料2200円がかかります」だそうで。しかたなく申込みましたが、この融通の効かなさはさすがです。最初に気持ちよく法人口座を開けてくれた三井住友銀行、恩を感じていたのですが、少しマイナスです。

収入印紙は郵便局で

続いては郵便局に行って、収入印紙を買います。2万円也。そういえば、「郵便局ってキャッシュレスに対応したんでしたっけ?」と窓口で聞くと、「郵便と切手のみの対応です。ウチの店舗では3月以降からの対応です」だそうで。裏で「そりゃ収入印紙は現金だよね」とか話しています。

 

いやはやこんなところにも現金信仰が。なぜこんなに現金が好きなんでしょう。手数料のことを言ってるのかな? なら振り込みで手数料こっち持ちでもダメなのかな? ◯◯なら当然現金でしょう、というのは信仰だと思うのですが、違うのでしょうか。

 

そういえば、先日土地の契約に行ったときも、不動産屋から「代金の支払いは、司法書士立ち会いのもと、現金で」と言われました。えと。現金ってATMから下ろすのに限度額があるんですけど。そんなに大金を持ち運ぶのって、怖いんですけど。やっぱり現金信仰は根強いです。

団体生命保険は任意

団体生命保険は、公庫の場合任意です。審査が終わってから加入を決められるので、団信に入らないからといって審査で不利になることもありません。これはいわば掛け捨ての生命保険なので今回はパス。もし何かあっても太陽光は売電を続けてくれますし、連帯保証人が死亡した場合は、その債務(?)も相続されます。さすがに、相続人に対して連帯保証人の資格がない、とは言わないのでしょう。

契約自体は30分程度で

「今日いまから伺ってもいいですか?」という電話に、快く対応してくれた公庫の担当者。書類自体は記入ミスなどを一緒にチェックしながら30分ほどで完了です。スタンプラリーさえこなせば、それほど大変ではありません。

 

「これで契約完了です。3日後には入金となります」と言われたのですが、実は太陽光設備建設のスタートが間近に迫っており、入金を求められています。「2日後ってわけにはいきませんか?」と一応聞いてみたら、いいですよ、とすんなり対応。こういうところではけっこう融通を利かせてくれるんですね。公庫。

 

今回初めて公庫を利用してみたのですが、さすが中小企業の味方。終始丁寧で分からないこともしっかり教えていただき、公庫の審査・契約担当の方には感謝です。一方で、銀行の殿様的な態度が目につきました。質問してもはぐらかすような返答をするくせに、こちらがなにかいうと「チッ」と舌打ちしたりするんですね。銀行様という感じなのでしょうか。

 

お客様として扱えとはいわないのですが、せめて対等な立場で対応してほしいものです。

IRRに影響する要素 借入期間、レバレッジ率、そして金利

前回、公庫で安い金利で借入が決まったものの、IRRが心配だという記事を書きました。簡単にいえばIRRとは、その事業の利回りを、定期預金金利と比較したらどれくらいに相当するかを表すものです。これを試算してみました。

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Equity IRRとProject IRR

IRRは、単純な利回りとは違い、キャッシュフローが得られるタイミングを加味して、将来のキャッシュを割り引いて足し合わせ、それが投資額と同額になるときの割引率を指します。言葉にすると分かりにくいですが、要は初期投資額を定期預金に預けた場合、何%金利がつく定期預金と同じかということを意味します。

 

太陽光のような投資では、自己資金(Equity)だけでなく借入(Debt)を使って投資しますが、このとき、Equity+Debtの合計を初期費用として計算したIRRを、Project IRRといいます。一方で、Equityだけを初期費用として計算したものを、Equity IRRといいます。

 

Project IRRの計算では、借入金返済前のキャッシュフローを用いますが、Equity IRRでは借入金返済後のキャッシュフローを使います。今回は事業評価ではなく投資評価ですので、Equity IRRが適していると思いますし、これまでの計算でもこれを使ってきました。

 

しかし、Equity IRRとProject IRRでは当然数字が違ってきます。具体的には、借入金を使ってレバレッジをかけることで、Equity IRRのほうが数字が向上します。

Equity IRRに影響する要素

そこに影響する要素はというと、

  • Equity比率が小さいほうがIRRが向上(レバレッジ率拡大)
  • 借入金の金利が安いほうがIRRが向上(金利差分だけキャッシュフロー向上)
  • 借入期間が長いほうがIRRが向上(近い未来のキャッシュフローが改善するため)

といったものがあります。IRRの計算式は比較的シンプルなのですが、「NPVがゼロになる割引率を求める」という式のため、数学に弱いぼくにはレバレッジ率や金利変化、借入期間変化のIRR感応度を一般的に計算することができませんでした。なかなか難しい。

 

できたのは、具体的に融資を受けた案件*1で、それぞれのIRRを計算して比較してみました。その結果はけっこう驚愕で下記のグラフのようになりました。

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縦軸はEquity IRR、横軸は返済期間です。驚いたことに、金利変化はほとんど(といっても、1.5%と2.25%で、1.5〜2.7ポイント程度違います。返済期間が長いほど、その差は広がります)影響がなく、返済期間が長くなるほどIRRが向上することが分かりました。返済期間が15年から10年に短くなることで、金利は0.64ポイントも安くなったのに、IRRは23.77%から14.31%に低下してしまうのです。

IRRのレバレッジ観応率 

もちろん、IRRにはレバレッジ率が大きく影響します。つまり、自己資金の何倍の借入をするかでIRRが変わるわけです。こちらも金利ごとに、15年の返済期間として、レバレッジ比率ごとにグラフ化してみました。

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縦軸はEquity IRR、横軸はレバレッジ倍率です。こちらも実は金利よりもレバレッジがIRRに大きく影響することが分かります。

 

不動産投資では、金利絶対値よりも、「できるだけ長く」「できるだけ頭金を小さく」することが重要だとよく言われますが、これは返済期間とレバレッジ率がEquity IRRに大きく影響するということを意味しています。

 

もっとも、レバレッジを高めると、売上が想定に届かなかったときに簡単にキャッシュフローがマイナスに転じてしまうというリスクがあります。また金利上昇リスクについても感応度が上昇します。ただし、太陽光の場合、売上はFITによって保証されており、不動産に比べて返済期間は短めのため、金利上昇リスクもそれほど影響は大きくありません。ということで、狙うなら金利よりも返済期間。15年返済を20年返済にできれば、トータルのEquity IRRは1.5倍程度に上がるという計算になります。

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*1:年間売電粗利180万円、借入1500万円という粗前提です

公庫の融資が決定した 金利1.51%の10年固定(太陽光)

これまで何度も足を運んできた政策金融公庫から、ついに融資決定の連絡が来ました。金利は想定を上回る好条件の1.51%。10年返済固定金利です。

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これまでの公庫申込みの流れ

思い返せば、最初に公庫に相談に行ったのは18年11月でした。このとき相談にいったら、経産省の書類や東電の書類が揃ってから来てね♪ と言われ、やっと準備が揃ったのは建設の目処がたった19年12月です。

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12月中に書類をまとめて再度提出に行き、1月に入ってから担当者と面談がありました。連帯保証人となるぼく自身のことや、事業内容、保障内容などについて相当細かく聞かれ、また書類をたくさん出し、待つこと10日程度。

 

電話がかかってきました。

 

「◯◯さん、融資の稟議が降りました! ついては契約の日取りを相談したく」

 

「おお、ありがとうございます! ちなみに金利はどのくらいでしょうか?」

 

「1.51%になります。最初にお話していた(2.1%)よりも、かなり頑張りました」

 

「それはすごいです。ちなみに、担保設定についてはどんな流れになりますか?」

 

「土地も上モノ(太陽光パネル)も、担保予定の書類をお書きいただいて、あとから設定で大丈夫です」

返済10年金利1.51%とは

ちなみに、借り入れたのは合計で1500万円。信販の融資条件と比較すると、次のような感じです。

  • 公庫 1.51% 10年 固定金利
  • 信販 2.15% 15年 固定金利

金利が違うので、総支払額を比較すると、公庫が1627万円、信販が1770万円と143万円ほど公庫のほうが少なくなります。一見いいこと尽くめのように見えますが、本当でしょうか?

※信販の金利も15年固定でした。誤解していました

 

重要なポイントは返済期間10年か15年かです。当然ですが、10年のほうが1年あたりの返済額が多くなります。案件によっては、これによってキャッシュフロー、手残りがゼロかマイナスに落ち込む可能性があります。利息分も減るので、税務上の損金も少なくなり、早期から黒字となり、税金も発生してきます。

 

キャッシュフローについては、さすがにこれがマイナスになるような物件には公庫も融資を付けないようで、実際の物件で試算してみても問題はありませんでした。当初10年の間、太陽光からのキャッシュフローを生活費などに期待しているのでない限りは、問題ありません。

 

税金は、トータルでは利益総額に対して一定税率が課されるので、これによって特に増えたり減ったりするものではありません。総返済額が減るので総利益額は増え、結果納税額も増えるでしょうが、利益が増えているので文句はありません。

 

では何が気になるのか。IRRです。

 

その投資のトータルの利回りを、他の投資商品と比較するモノサシとなるのがIRRなわけですが、これはさまざまな要素が影響を与えるからです。少し考察してみましたので、次回まとめてみます

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リアルアセットセグメント:2020年の運用方針

2020年から、資産の運用を5つのセグメントに分けて把握していきます。株式セグメント債券セグメントヘッジセグメントオルタナティブセグメント、リアルアセットです。最後は、投資というよりも事業に近い、リアルアセットセグメントの運用方針についてまとめます。

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目的および基本的性格

太陽光発電所の運営を通じて、レバレッジを効かせた事業運営を行い、安定したインカムゲインの取得を目指します。また運営の箱としては資産管理法人を使い、適切な節税を行います。

 

サラリーマンが持つ信用は、適切な投資資産と組み合わせることで、低利のレバレッジを可能にします。これは属性や資産に応じて金額や条件が変わってくるため、うまく活用することが重要です。

 

太陽光発電については、18円/kWhの固定価格買い取り制度(FIT)を用いて安定した売電収入を実現します。投下資金あたりの期待リターンは6%とします。

投資対象

メインは太陽光発電所の運営による売電ですが、レバレッジかつインカム取得という同様の性格を持った投資として、不動産投資を同時に検討します。 

運用方針

ほかの投資先とは異なり、これは事業と呼べる内容になります。期待リターンは高めに出ますが、その分手間がかかり、オンラインでは完結しません。また、投資先は千差万別であり、同じものを複数購入することができません。

 

サラリーマンがメインの人の場合は、それが本業になりますので、こうした手間のかかる資産運用は不向きとなりますが、ぼくの場合はこっちが本業で、サラリーマンは趣味なので、必要なだけ手間をかけて、事業の成功を目指していきます。

 

具体的な手間の掛け方としては、次のことを想定します。

資産運用会社

運用の箱には、資産運用会社を使います。法人税率と消費税の益税を狙って、2社設立しましたが、2023年開始といわれるインボイス制度の動向によっては益税がなくなる可能性があります。

 

とはいえせっかく2社あるので、将来の法人単体での借入を目指して、1社は節税メインに用い、もう1社は決算書をピカピカにして優良企業を目指す想定です。資産運用会社を使った節税方法はいろいろとあり、現在のところ下記を考えています。

1社は約款に有価証券等による運用も記載しており、証券口座を作成することで名義を増やすことや、FX/CFD口座を開設することで、先物と株式の利益を通算して運用できるようにすることも想定しています。

 

また不慮の出来事で相続が発生してしまった場合、資産の一部を法人所有としておくことで、相続課税額の圧縮も期待しています。

投資リスク

太陽光発電に関しては、発電額を国のFIT制度によって固定価格で買い取ってもらえるというメリットがあります。売上が基本的に固定され、安定した事業運営が可能です。

 

またいったん稼働を始めてしまえば、伸びてくる雑草を刈ること以外はほぼメンテナンスなしで稼働するため、ランニングコストが小さいのが特徴です。

 

一方で、20年を越えた先の売電価格は保証されません。電力需要がなくなることはないので、無価値になるわけではなく収入を生み続けますが、そのリターンは未知数です。 リアルな設備を用いた事業のため、事故や災害などによって設備が破損し、発電が止まってしまうリスクがあります。保険にも加入していますが、発電停止リスクを完全になくすものではありません。

 

また、最大のリスクはインフレです。売電価格が固定のため、インフレが進行すると実勢価格と固定買取価格の差がなくなってしまう可能性があります。このとき、同時に借入金利も上昇が見込まれるため、初期の段階でインフレが発生すると事業計画に大きな狂いが生じる可能性があります。

現在の投資資産

先日、改めて太陽光発電事業の価値算定をDCF法を使って行う方法を検討しました。現在のところ、一基も稼働していないため、初期費用の前払い分が資産価値となります。これを前提として再計算すると、5セグメントの資産内訳は下記のようになります。

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リアルアセットの比率は6%と、ほぼヘッジセグメントと同等です。これが全太陽光発電所が稼働したときには、6倍ほどの規模に拡大し、資産全体に占める比率は25%程度まで拡大する見通しを立てています。

 

前払い費用の内訳は、次の通りです。購入済みの土地代金が約半分、ほかは草刈り代金の前払い分が28%、東京電力へ支払った電力負担金が8.8%となっています。

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現在確保している7基のうち、1基は工事開始間近。公庫での融資も依頼しました。2基は春頃には稼働する見通しです。残り4期については、農地転用許可や東京電力の連携見積もり待ちとなっており、まったく計画が立っていません。いずれも押さえてから1年半が経過しており、噂に聞いたとおり、太陽光発電所は稼働まで時間がかかるものだと実感しています。

 

【2019年のリアルアセット運用目論見書】

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太陽光発電事業の企業価値を改めて試算 2020年版

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毎月、ポートフォリオ報告という形で総資産のチェック(B/S)とインカムの状況(P/L)をまとめています。そしてそろそろ太陽光発電所の一基目が稼働するので、そろそろ再評価を行っておこうと思います。

基本的な考え方はDCF

企業や債券など、商品の価値を評価する際には複数の方法があります。よく言われるのが、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチですね。

 

コストアプローチは、要するにかかったコストを足し合わせて価値とする方法です。ただし、太陽光発電のような場合は明らかにこれは適切ではありません。投下コストは売却価格とは全く一致しないからです。

 

マーケット・アプローチは、同じような資産がいくらで売買されているかを見て価値を算定します。昨今は太陽光発電所のセカンダリーマーケットも整ってきていて、売却時の評価も出せることは出せますが、こちらもまだ適切とは言い難そうです。

 

ということで、インカムアプローチです。これはその資産が将来生み出す収益(インカム)を足し合わせて価値とします。ただし、今年のインカムと、来年のインカムでは価値が違います。未来のインカムほど価値が下がるからです。どのくらい価値が下がるかを「割引率」といいます。この割引率に基づいて将来のインカムを割り引いて、全部出し合わせるのがDCF法です。

割引率をどうするか?

太陽光の場合、20年分のキャッシュフローはほぼ正確に計算できます。それを割り引いて足し合わせればいいのですから、簡単といえば簡単です。しかし問題は「割引率」をいくつにするかです。前回の試算では、インフラファンドが採用しているリスクプレミアムにリスクフリーレートを足して、割引率2.1%で計算してみました。

 

割引率が大きければ将来のインカムを小さく評価することになるので、価値が小さくなります。逆に小さな割引率なら価値が大きくなります。

 

普通の企業価値評価では、負債コストと株主資本コストを合わせたWACCを使いますが、今回はM&Aをするわけではないので負債コストは計算に入れません。負債部分の利払いと元本返済はキャッシュフローに反映されていますので、今回考える必要があるのは株主資本コストだけ。100%株主資本コストという考え方でいきます。

 

株主資本コストは、株主が期待する収益率であり、CAPMで導く方法が一般的です。

  • 期待収益率 = リスクフリーレート + β ✕リスク・プレミアム

国債の利回りであるリスクフリーレートに、市場感応度であるβとリスクプレミアムを掛けたものを足すことで求めます。でもまぁこれは株価の場合ですね。太陽光発電にβなんてありません。

 

よくよく考えてみると、今回の話はもっと簡単です。ぼくが太陽光発電のアセットクラスに対する期待収益率を、6%と置いているからです。

期待収益率が6%とはどういうことか

さて期待収益率が6%というのはどういうことでしょうか。これはその資産を保有しているとき、投資額に対して年平均で6%のリターンが得られることを指しています。毎年6万円をコンスタントに生み出す資産であれば、その資産の価値は100万円だということです。

 

もし収益がコンスタントではなく、年によってバラツキがあるとしたら、IRRを計算してそれが6%となる初期投資額が、資産価値ということになるでしょう。

 

例えば、売電収入からコストと利払い、元本返済を引いたキャッシュフローが40万円、ローン返済後の16年目から20年目までは130万円を生み出す太陽光発電所があったとします。これに対してIRRが6%になる初期投資額は617万円だということが分かります。同様に、各年のキャッシュフローを6で割り引いて合計すると、その合計額、つまりDCFによる評価も617万円になります。

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こう計算すれば、毎年平均して6%のインカムを生んでくれる資産と同額となる価値がいくらなのかを導き出すことができます。

具体的な計算方法

では具体的な計算方法です。これまでは確保した各発電所を割引率約2%で割り引いて現在価値を計算し、それを資産価値として評価していました。でもよくよく考えるとこの方法はよくないですね。

 

確保しているのはいいととして、その発電所への資金投入はまだのところがけっこうあるからです。本来は稼働して始めてキャッシュを生むことが確実になるものなので、土地を決済して稼働が確実になって初めてDCFで収益を足し上げる必要があります。

 

ではすでに支払い済みの土地手付金などはどう考えればいいでしょうか? これはもし稼働しなければ返済されるお金なので、無利子の貸付金と同じです。つまり、資産額にそのまま足し合わせる必要があります。

  • 稼働見込みの発電所のDCF評価(割引率6%)+手付金など支払い済み金額(※稼働発電所の費用は足さない)

これが太陽光発電所群の資産評価額となります。

 

ということは、1つも稼働していない現在の状況では、要は支払い済みのコストだけが資産評価額ということですね。

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ノンリコースローンの不動産投資のメリット、デメリット

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不動産融資の手法の一つに、「ノンリコースローン」というものがあります。これは、融資を受けた不動産以外に返済義務がないというローンになります。普通は不動産経営に失敗すると、自分の資産から持ち出しで借りたローンを返済しなくてはならないのですが、ノンリコースローンの場合、不動産を差し出せばチャラになるというものです。

例えば、不動産を対象とした場合、返済の原資は対象となる不動産の産み出すキャッシュフローのみを返済原資に限定する。銀行などの貸し手も、借り手に対し、対象の不動産以外の財産をもって返済することを要求できず、不動産運用終了後の不動産売却額が返済金額を下回っていても、それ以上は借り手に請求できない。

ノンリコースローン - Wikipedia

ノンリコースローンの不動産の説明を聞いてきた

日本ではめずらしいノンリコースローンですが、これを扱った投資用マンションの物件があるということで、話を聞いてきました。

 

こちら、首都圏の新築軽量鉄骨のマンションで、話を聞いたのは7戸✕4階建ての大型物件。価格は2億円を超えます。このうち、土地と物件価格の85%をノンリコースローンで融資が出るというものでした。自己資金は15%+諸経費になります。

 

ただし新築ということもあり、それほど有利な物件ではありません。表面利回りは7.4%。ざっと計算すると、5年後の税引前IRRは8.9%、税引後で5.2%です。

 

そしてノンリコースローンだけに、金利は2.5%(5年固定)の35年。ん? 安い金利とは思いませんが、そこまでバカ高ではないですね。鉄骨の耐用年数34年を越える返済期間というのも悪くないです。軽量鉄骨ですが、1F部分だけ鉄の厚みを増やすことで34年にしているそうです。

ノンリコースローンならではのいろいろな条件が

しかし話をいろいろ聞いてみると、さまざまな条件がありました。まず、販売会社が提供するサブリース契約(10%)が必須です。また、火災保険なども金融機関指定のものが必須となります。火災10年、地震5年で計100万超です。賃料の3%を、将来の修繕積立金として別口座に強制的に積み立てる必要もあります。

 

法人での投資も可能ですが、その場合、新設法人か他になんの事業もやっていない法人でないとダメということで、太陽光発電の法人は使えません*1

 

契約締結時に金融機関に払う保証手数料も、通常は10万円くらいのようですが、こちらは融資額の2%。400万円を超える値段になっています。

 

そして当初5年間は、ローン解約時に非常に高額な手数料がかかります。譲渡税が安くなる5年を越えたら、ほぼノーコストで解約はできるようですが、実質的に5年間は持ち続けるという仕組みです。

いったいどんなときにノンリコース?

気になるのは、どんなときにノンリコースとなるかです。つまり、不動産を差し入れることで融資をチャラにできるのはどんなときかですね。こちら、実は借主側の都合ではまったくノンリコースにならないんだそうです。

 

唯一、ノンリコースとなるのは、家賃収入(こちらは保証)からサブリース費用(10%)を除き、修繕積立費用を引いた額が、3ヶ月間マイナスになったときです。つまり、賃貸経営として破綻している状況だと、物件は召し上げられ、ローン残債もチャラとなるわけです。

 

正直、この物件は新築であり、サブリース付きということで周辺相場に比べてもけっこう家賃を抑えたものになっています。それでも35年と期間が長いため、初年度からちゃんとキャッシュフローが出るようになっていて、これがマイナスになるという状況は、自殺者が出たとか火災で全焼してしまったとか、そういうことくらいしか思いつきません。

 

ちなみに火災で全焼した場合はというと、火災保険から建物代は全額出るようですが、「ノンリコースは多分適用にならない」という話でした。ふーむ。

ポイントは5年後の出口戦略

ちょっと気になるリスクはいくつかありますが、少なくとも、当初5年は下手の打ちようがないくらいガチガチです。サブリース前提でキャッシュフローも出るので、まぁ5年は間違いなく想定通りのリターンを生むのでしょう。

 

問題は5年後以降の出口です。

 

新築ですから5年後に売るときは中古です。新築プレミアムで入居していた人も、築5年となると家賃が下がるでしょう。そしていくらで売却できるのか。中古の物件の場合、どのくらいの利回りが出るのかで買い手は考えます。この物件近辺の場合、相場は利回り7.5%程度です。割り戻して売却価格を見ると……*2

 

あらら。これまでに得たキャッシュフローを足し上げても、赤字です。これは厳しい。

 

最初の5年は計画どおりにいくが、残った物件はすぐに売るのは難しい状況ということですね。ブレークイーブンポイントを越えた額で売れるには、少なくとも10年の保有が必要だというのが、ざっくりとした試算でした。ちなみに10年持つと、税引前IRRで10.1%、税引後で6.8%とダメダメではないところまできます。

ノンリコースローンの最大のメリットはなにか?

いったいノンリコースローンのメリットってなんだ? と思ったのですが、ここで、「属性ではなく物件に対して融資する」という基本的な考え方がポイントだということに気づきました。

 

つまり、属性が悪くても買える。これがノンリコースローンのメリットだということです。年収が低い、職業が安定していない、すでに多くの融資を受けていて与信枠がない。こんな場合でも、頭金となる15%の現金さえ用意できれば買えてしまうということです。

 

なるほど、直近の不動産融資の渋さを考えると、欲しいのに融資が引けなくて買えないという人もたくさんいます。そういう人にとっては、キャシュさえあれば85%の融資が引けるこのローンはなかなか面白いものになるのでしょう。

 

なかなか不動産の世界は面白いものです。

 

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*1:とはえ一回ローンを組んでしまえば、他の事業もOKということらしいです。いやはや役所的

*2:年間家賃収入が150万円の場合、投資家が表面7.5%の利回りを期待するならば、150万/0.075で2億円ということになります。

太陽光発電融資で政策金融公庫に申し込みしてきた流れ

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やっと太陽光発電所の1号基が建設の目処がたちました。現在、信販会社で金利2.15%のローンを前提に進めていましたが、誰でも一つはいけると言われる政策金融公庫に、融資の申込みに行ってきました。その流れをまとめておきます。

申し込みには経産省認定書と東電書類が必要 

なんにも決まっていないところから審査が完了してしまう信販系(ジャックス、アプラス)とは違い、公庫の場合、書類の嵐から始まります。まず、申込みには経産省の認定書と東電の接続書類が必須です。

 

つまり、ほぼ工事がスタートできる状況に近づいてから、審査を申し込むということになります。18年の11月に初めて行ったときに、「書類がそろってからまた来てね」と言われたものでした。

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申し込みから融資までの流れ 

流れをざっとまとめると、次のようになります。

  1. 公庫の窓口に相談に行くと必要書類について教えてもらえる
  2. 必要書類を揃えて、窓口に持参する
  3. (1週間から2週間後)書類の確認が終わり、面談の日程調整連絡が入る
  4. 面談の実施
  5. (約1ヶ月後)審査結果が出て、OKなら融資が決定する
  6. (土地を担保に入れるなら)担保設定を司法書士に依頼する
  7. (数日後)融資額が振り込まれる

つまりは最短でも窓口に行ってから1ヶ月半はかかるという感じのようです。

どんな書類を求められるのか?

書類については、本当に多種多様さまざまなものが必要になります。しかもすべて原本が基本。持っていったら、その場でコピーを取って返してくれたりもしますが、とにかく原本を揃える必要があります。そしてやりとりは、手渡しか郵送かFAX。なぜかメールは使えなんだそうです。いただいた名刺にも、そういえばメールアドレスがありませんでした。

 

まず今回、申し込み(2)に必要となった書類は下記の通りです。これは僕の場合なので、他の人の場合は違うかもしれません。

  • 創業計画書 所定のフォーマットあり
  • 借り入れ申込書 所定のフォーマットあり
  • 登記簿謄本 原本必須。法務局に行くか郵送でゲット
  • 決算書1期分 ※僕の場合、すでに法人を設立済みで一期目が終わっているので
  • 経産省認定書
  • EPC業者の見積書
  • 物件概要所(EPC業者のものでOK)
  • 担保となる土地の公図、全部事項証明書
  • 追加で試算表 決算から6カ月が過ぎている場合、半期分のP/L試算表が必要です。税理士に頼めば作ってくれます

担保のあるなしで金利が変わる

公庫の場合、担保のある/なしで金利が変わります。下記の「基準金利」が現在の太陽光発電への融資利率ですが、担保なしが2.15〜2.45%、担保ありが1.21〜2.10%となっています。0.3ポイント以上も違うわけで、それは担保をいれたほうがいいですね。

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金利情報|国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫

担保に入れるのは発電所の土地になります。まぁ二束三文の土地なのですが、あれば担保として見てくれるようです。ただし担保価値によって利率が変わり、よほど価値のある土地以外だと最も高い金利となるようです。

 

土地の担保設定には司法書士による手続きが必要なのですが、地主からの名義変更と担保設定を同時に行えば安くつくと教えていただきました。ただし、審査がOKになってからでないと担保設定ができないので、審査に通る→地主に名義変更を依頼→同時に担保設定→数日後、融資実行という流れになります。

 

また太陽光の場合、パネルについても動産担保として追加担保に入れるんだそうです。

返済引き落としはネット銀行不可!

もう一つの落とし穴は、なんと返済の引き落とし先はネット銀行が全滅です。うーん。これはひどい。

 

というのも、特に新設法人ではネット銀行の口座は比較的容易に作れても、メガバンクなどはなかなか難しいからです。公庫の担当者もそれは知っていて、「作りやすいのでみなさんネット銀行の口座をお持ちなんですが、それではダメなんですよ」と。さすが政府100%出資です。ユーザーの利便性とはかけ離れたサービス基準です。

 

幸いにして、僕の場合三井住友銀行の口座を開けているので、こちらを使う予定です。それにしても、使い勝手の点でネット銀行のほうが絶対便利なんですが。

面談の際にはさらに追加書類

さて、面談の際にはさらに追加の書類を求められます。今回の場合、下記の書類を用意するよう求められました。

  • 法人預金通帳(最近6カ月以上)
  • 事業税領収書 ※e-taxだと出ないのですが……
  • 公共料金の領収書
  • 法人借入のある場合、支払明細
  • 代表者個人の借入がある場合、支払明細
  • 担保に予定されている物件の資料
  • 自宅の不動産賃貸借契約書および家賃の支払い状況が分かるもの
  • 発電所にかかわる見積書(東電、草刈り、周辺の発電状況など)
  • 運転免許証など身分証明書
  • 代表社個人の預金通帳、有価証券等の明細(最近6カ月以上)
  • 源泉徴収書または確定申告書
  • 発電設備の保証関係、土地地主の年代、EPC業者アフターフォロー体制、追加機器の必要の有無

いやはや。書類集めと情報収集だけでもやっかいです。これは、公庫融資コンサルの事業が成り立つのも分かります。面談が完了したら、どんな状況だったのかまた書きたいと思います。

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太陽光の「先端設備導入計画」木更津にて一基完了

太陽光には税制優遇措置がいくつかありますが、その1つ「先端設備等導入計画」による、「生産性向上の特措法」が、一基分完了しました。

未稼働案件で、最初の3年の償却資産税がゼロに

こちらは、未稼働の太陽光発電設備に対して、償却資産税がゼロになるという優遇策です。1500万円のパネル&パワコンという資産は、簿価の1.4%の税金が毎年発生します。これが3年間ゼロになるので、合計で50万円程度の税を削減できます。

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申請はけっこうやっかい

ぼくの場合、税理士が成功報酬型で申請をやってくれるということで依頼しましたが、それでも書類集めはそこそこ面倒でした。

  • 発電事業計画書
  • EPC業者作成の計算明細(発電予想量、売電単価など)
  • 設備認定通知書
  • 保守関係の契約書、見積書
  • 土地売買契約書
  • 連携負担金証明書類(東電)

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これを税理士に送った上で、作成された書類に印を押して、該当の市区町村へ提出です。あとはおまかせなので、まぁ楽といえば楽ですが、こうした書類を用意するためのコスト、それを審査するためのコストって、補助金額の半分以上に達してるんじゃないか? という気もします。

市区町村は太陽光への税制優遇措置を厳しくしてる

こうして先端設備導入による生産性向上特措法の申請を進めていましたが、各市町村は太陽子発電を除外することが増えているようです。

 

ところが、市町村が公表している「導入促進基本計画」(市町村が作成し国の同意を得たもの)では除外していないが、Webでは除外と書いている市町村もあれば、計画およびWebの双方で除外していないが、申請してみると除外しているとして不認定になる市町村もあります。こういう情報提供の不徹底さが、お互いの大きなコスト負担になっているわけですね。

 

筑西市については、申請も済んでうまくいくかな? と思っていたら、市から速達の書類が。「市内の事務所の所在を確認できる書類を送れ」と。いやいや、そんな話は初耳です。市内に物理的な事務所がないと申請除外だということのようです。そんなわけで、最後の段階で申請取り下げを行うことになりました。

税理士に成功報酬を払って木更津完了

そんな中、認定までこぎ着けたのが木更津市。工事日程もそろそろ決まり、年末から年始にかけて稼働を見込んでいます。

 

税理士に成功報酬費用を振り込んで、この案件も完了です。しかし、報酬は前払いで、その効果は稼働後の3年間の税金の減少ですから、時差が発生するものですね。

 

久しぶりに太陽光の話題でした。

収益不動産の価格はピークを打ったか?

収益不動産への関心をずっと持ち続けているのですが、こと相場の状況でいうと、やっと価格がピークを打って低下が始まったかな? という感じのようです。利回りでいうと、上昇が始まったかもというところ。

区分マンションは利回り低下継続

まず区分マンションですが、利回りの低下は落ち着いてきたようですが、上向いてはきていません。リーマンショック直後の2010年からの健美家のデータです。2010年当時は、区分の利回りが12%もあったんですね。価格も当時から約2倍になっています。

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一都三県を抜き出すとこんな感じです。序列でいうと、東京23区→川崎市→横浜市→埼玉主要→東京市部→千葉主要という感じで、見事に層になっています。10年前は東京23区でも9%を超える利回りでした。

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一棟アパートは価格のピークを超えたか

一方で、一棟アパートは2013年1-3月に価格がピークをつけ、徐々に下がってきているようです。利回りも復活の兆しが見えます。

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一都三県で見ても、埼玉主要部や横浜市、そして東京23区で利回り上昇の兆しが出てきています。しかし、2012年など東京23区よりも川崎市のほうが利回りが低かった時代もあるんですね。

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一棟マンションもアパートと似た傾向

一棟マンションもアパートとよく似た傾向です。一足早い2017年10−12月にピークをつけたようで、価格下落も早く、現在は2015年あたりの価格まで戻ってきています。

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一都三県で見ると、23区以外での利回りが、2018年に入ってから上昇しているのが分かります。ただし、23区はまだ戻りが渋い状況ですね。

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実需不動産は下がっていないが、収益不動産はピークを打った

住宅ローンなどの金利は引き続き低く、過去最低を更新中という状況です。一方で、スルガ銀行に端を発する、地銀の貸し出しバブルは弾けました。属性に関わらずフルローンが出たのも今は昔。現在は、普通に頭金を2〜3割入れてほしいと言われます。

 

つまり借りにくくなってきているわけで、これが収益不動産価格の下落を招いているのでしょう。価格が下がることで、利回りは上昇しています。

 

こうやって振り返ってみると、この10年は早くに不動産を買った人の勝ちだったことがよく分かります。利回りも高く、物件価格も2倍になっているのですから。ただし、普通のサラリーマンでも融資が簡単に引けるようになったのはこの5年ほどですから、10年前は買いたくても買えないというのも事実でしょう。

 

不動産投資では、物件価格や利回りもあるが、借りられるかが最も重要だとよく聞きます。たくさん借りてレバレッジを効かせることで、もし低利回りだとしてもIRRは大きくなるわけです。

 

低金利はまだまだ継続するという見方が一般的ですが、価格はどう動くか。不動産投資は面白そうなので、ぜひトライしたいのですが、ほんと、5年前に買っておけばよかったという感じです。

 

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固定資産税の支払いを忘れて督促が来ました

 太陽光発電所の敷地として購入した土地。その固定資産税の支払を忘れていました。1回目は、下記の記事のように支払いを済ませたのですが、2回めは自分で覚えていてはらう必要がありますね。当たり前ですが。

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地域によって違う支払い時期 

今回、改めて確認してみると固定資産税は年間4回に分けて払いますが、地域によってそのタイミングは異なるようです。例えば東京23区だと、それぞれの締め切りは1期が6月30日、2期が10月2日、3期が12月27日、4期が2月28日。

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ところが、この土地の場合、スケジュールはこうなっています。

  • 1期 5月7日 支払済
  • 2期 7月31日 督促を受けた!
  • 3期 9月30日 これから
  • 4期 12月25日 これから

うーん。場所によって違うとはややこしい。ちなみに督促料として100円が上乗せされていました。この督促料は、租税公課として費用に入るものなのか、たぶん入ると思うのですが、今度税理士に聞いてみます。

支払いはnanacoで

今回の税金も、Androidに入れたモバイルnanacoで払いました。リクルートカードでチャージすることで、1.2%還元を受けつつ、支払うことができます。

 

ちなみに、今ひとつマイナーなファミペイでも、実は税金を支払うことができます。いまのところ、別途の手数料を取られずに税金などの支払いをできる電子マネーは、nanacoとファミペイの2択ですね。

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nanacoにリクルートカードでポイントを得つつチャージできるのは月間3万円までなので、今月もチャージをしておきました。

 

4000万円あれば家賃13万円の家に住める

持ち家か賃貸かの論争は尽きることがありませんが、投資家目線でもう一度考えてみたいと思います。

 

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4000万円を投資したらいくらの収入になるか?

ここに4000万円あったとします。これを投資に回すとしましょう。期待利回りは5%です。すると、年間で200万円の利益が出ます。2割の税金を引いても160万円ですね。月額に直すと13万3000円です。

 

つまり4000万円を投資して、その配当で家に住むなら13万円の家に住めるというわけです。東京南西部で見ると、築10年以内でも13万円だせば50〜60平米のマンションに住めることがわかります。

4000万円出すとどんな家が?

では4000万円ではどんな家が買えるかというと、やはり築10年くらいだと50〜60平米くらいのマンションになります。よく探せば、もう少し広かったり新しいものもありますが、多少お得といった程度です。

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※HOMESのサイトで、3500〜4000万円、築10年以内のファミリータイプ中古マンションを検索したところ 

 

そして購入時にはざっくり1割程度の諸費用がかかります。そして購入した場合は、管理費が1万円〜、修繕積立金が1万円〜、そして固定資産税が年間10万〜 かかってきます。20年住むとしたら、諸費用400万+管理費360万+修繕積立金360万+固定資産税300万といったところでしょうか。締めて1420万円にも上ります。

 

ここにさらに住宅ローンの金利がかかってきます。税金優遇もいろいろとありますが、差し引きプラスとはなかなかならないでしょう。

賃貸なら4000万円は残る。持ち家なら4000万円の不動産が残る

20年後、どうなっているかというと、賃貸なら4000万円の元金が残ります。持ち家なら4000万円で買った不動産が残ります。

 

もちろん、5%運用というのはそれなりにリスクがありますから、4000万円が毀損しているかもしれません。持ち家の場合は20年後に4000万円より値下がりしているリスクもあります。というより、4000万+1420万円の5420万円に価値が上がっていないと、実質的に損失です。

賃貸のほうがグレードが落ちる?

いやいや、4000万円の持ち家物件と13万円の賃貸物件はそもそもモノが違う、という考え方もあります。賃貸物件は、持ち家ほど豪華ではなく、収益優先ですから安普請の場合も多いのです。逆に、立地や広さが重要で、設備などをそれほど気にしなければ賃貸でもいいということになります。

 

ちなみに礼金や更新費用のないURの物件を見ると、13万5200円で46平米ですが、大田区で自動お湯張り、防犯カメラ、インターネットなどけっっこうちゃんとした設備になっていることがわかります。

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世田谷区の物件では78平米で14万5600円となっており、比較的4000万円の物件に近いイメージですね。

利回り5%の投資なんてあるのか? 

投資をしたことのない人の場合、5%の利回りなんて想像がつかない人もいると思います。しかし下記でもまとめたように、一定のリスクを取れば5%くらいの投資先はけっこうあるものです。

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もちろん、もっとリスクを取ってよければソーシャルレンディングやARCCなど、10%に迫る投資先はいまでもいろいろとあります。

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幅広い債券に分散投資するバンガードのETF BNDなら、現在ちょうど3%程度の利回りが出ます。4000万円ではなく約6500万円が必要になりますが、それでも安定して13万円の家賃なら払える計算です。

 

 

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初の消費税還付が来た その仕組みとは

先日、法人の初決算が終わりました。赤字決算だったので法人税の支払いはなく、住民税の均等割だけ納付したところです。すると、さっそく昨期の消費税還付が税務署から振り込まれていました。額は少しではありますが、うれしいことです。

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消費税は売上と費用の差額を払う

さてこの消費税還付とは何なのか。改めて確認しておきたいと思います。

 

まず消費税は別名付加価値税と呼ばれます。売上高から原価を引いた残り、それが付加価値です。付加価値の8%を消費税として納めることになります。P/Lを図解すると、この付加価値は、さらに従業員の取り分である人件費と、株主の取り分である純資産増加額と、税金である法人税に分割されます。

 

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単純に売上の8%を消費税として収めてしまうと、企業が企業から仕入れて販売した場合に、各企業がそれぞれ8%を納めることになり、税支払いが重複してしまいます。そのため、仕入れた分は差し引いて、「付加価値」だけに税金をかける形です。

 

消費税を入れ込んでもう少し図解するとこうなります。

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売上の8%に当たる消費税が、預かったものです。このうち原価にかかる消費税は、仕入れのときに支払っています。残りの付加価値にかかる消費税を実際に納めることになります。

付加価値がマイナスだとどうなるか?

では売上よりも原価が大きく、付加価値がマイナスのときはどうなるでしょうか? 数式的にいうと、付加価値の8%を納めるのですから、納めるのは−8%、つまり8%戻ってくることになります。これが消費税還付です。

 

図解するとこうなります。

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消費税還付の条件

ただし消費税還付を受けるには、条件があります。それは課税事業者でなければならないということです。

 

法人は売上高が1000万円以内の場合、免税事業者となります。これは売上についてくる預かった消費税はそのままもらい、付加価値につく消費税は収めなくていいという制度です。これによる利益を、益税ともいいます。

 

中小法人の場合、売上高が8%嵩上げされるし、書類仕事は減るし、いいのですが、収めなくていいので、戻ってくる消費税があった場合もなしになります。

 

ただし、自ら「課税事業者」を選択することもでき、すると消費税納税義務が生まれます。逆にいうと還付も受けられるということです。ただし、いったん課税事業者を選択すると3年間は免税事業者に戻ることができません。

太陽光発電事業のセオリー

さて、太陽光発電事業では、初期に発電設備の購入という大きな原価が発生します。そのため、購入年度は基本的に付加価値はマイナスです。つまり、売上との差額について消費税が還付されるということです。

 

例えば売電売上が100万円、設備購入費が1500万円だったとします。売上には8%の消費税が乗って支払われるので、100万+8万円の売上です。設備にも8%乗るので、1500万+120万円のコストです。付加価値は、▲1400万円。支払うべき消費税はその8%の▲112万円となります。支払った消費税120万円から預かった消費税8万円を引いても同じです。

 

この112万円が還付される。これは大きいですね。そのため、設備購入年度から3年間は課税事業者でいるのがセオリーです。

 

4年めからは免税事業者に戻ります。継続して設備購入をしていない限り、大きな原価はかかりません。一方で、売電売上はフルで出てきます。つまり、しっかりとプラスの付加価値がうまれる状態になり、消費税の支払い義務が生じるからです。

不動産投資では消費税還付は封じられている

さて、似たようなお金の動きをするものに不動産投資があります。物件購入時に大きな支払いが発生し、そのあと長期に渡って売上が立っていきます。以前は、不動産投資でも消費税還付をうまく行う方法が節税策として話題でした。でも、現在はほぼ封じられています。

 

それは、「消費税の還付額は売上に占める課税売上の割合に応じて決まる」からです。太陽光の場合、売上の全額が課税売上なので問題ありません。ところが、不動産の家賃収入は消費税が発生しない売上なんですね。賃貸住宅に住んでいると分かるのですが、家賃に消費税はつきません。

 

この抜け道を探そうといろいろな手段が編み出されました。例えば、不動産を購入した年度には家賃収入を発生させず、物件に自動販売機を設置してそこから課税売上を上げることで課税売上比率を100%にし、還付を受けるという手法です。また、金の売買には消費税がかかることに着目して、大量の金取引を行って課税売上比率を上げるという方法も聞いたことがあります。

 

ただし、こうした抜け穴はどんどん塞がれています。いたちごっこではありますが、不動産での消費税還付はけっこう難しい状況です。

 

ちなみに、PLにはコストとして計上されていても、その全額が消費税還付の対象になるわけではありません。会計上のコストと、税務上のコストは違うんですね。そんなわけで、うれしい消費税還付でした。