前回、指値買いの代わりにオプションのプットを売ることで、買えても買えなくてもプレミアム分得をする、という「ターゲット バイイング」について書きました。
今回は、そのプット売りがどんな損益構造になっているのかを、少し深掘りして考察してみます。
まずオプションの説明には必ず出てくる表現ですが、「プット」とは指定した価格(行使価格といいます)で、それ(原資産といいます)を売る権利のことをいいます。「プットを売る」とは、売る権利を売るので、買うことになります。ややこしいですね。
例えば、16ドルで3月21日に銀を売る権利(プット)を売ります。このプットの買い手は、3月21日に16ドルで銀を売ることができるわけです。誰に売るのかというと、プットの売り手、つまりあなたです。16ドルで銀を「売ることができる」ということは売らなくてかまいません。3月21日に銀が15ドルになっていたら、16ドルで売ったら相場よりも1ドル高いので儲かります。なので、権利を行使して、あなたに16ドルで売ります。逆に、銀が17ドルだったら、16ドルで売っても利益にならないので、権利を放棄してそのままです。
プットを売った側からすると、3月21日に銀価格がどうなっているかで損益が変わります。
- 16ドル以下 相手は権利行使。あなたは、銀価格が16ドル以下なのに16ドルで買わなくてはなりません。最初に得たプレミアム分は得をします
- 16ドル以上 相手は権利放棄。何も起きません。最初に得たプレミアム分は得をします
これを損益グラフにすると、下記のようになります。
青い線は、16ドルで銀の現物を買った場合の損益グラフ、赤い線は行使価格16ドルのプットオプションを売った場合の損益グラフです。こちらは、権利行使日の損益を表しています。横軸が銀価格、縦軸はその時の利益になります。プレミアムは0.8ドルと仮定しています。
オプションの損益はどうしてこんなグラフになるのでしょうか? 価格が16ドル以下に下がっていた場合は、16ドルで購入しなくてはいけないので、価格差分だけ損失になります。16ドル以上の場合、相手は権利を放棄するので、最初にもらったプレミアム分(0.8ドル)だけ利益が出ます。16ドル以下で購入した場合でもプレミアム分は損失が減少することになります。
この途中で折れ曲がった形が、オプションの損益の基本形です。プット買いの場合は、y軸で上下反転した形になりますし、コール売りの場合は、x軸で左右反転した形、コール買いの場合は、さらにy軸で反転した形になります。
ターゲットバイイングのところでは、指値買いの代わり、と書きましたが、正確には、このように価格下落はそのまま損失、価格が上昇しても利益は頭打ち、ただしプレミアム分は収入になる、という構造です。
実はここまでは、オプションの入り口です。多少複雑に見えますが、この後の話に比べるととてもシンプルです。実際のオプションでは、次の2つの要素が入ってきます。僕自身も勉強中なので、おいおいまとめて書いていきます。