株式投資をやっている方なら、どこかで「貸株」について聞いたことがあるかもしれません。証券会社によっては「株券貸借取引」と呼んだりもします。
信用取引などで株を「売り」から入る場合、誰かから株を借りてこなくてはなりません。この貸し手になるのが「貸株」です。貸株の対価として、年0.1〜数パーセント程度の金利を得ることができます。
ネット証券の多くではオンラインで申し込み可能ですし、旧来の証券会社でも、(ある程度のボリュームが必要だったりしますが)対応可能ですので、確認してみる価値はあります。
金利は、銘柄によって異なります。これは、借りたい人が多いかどうか、つまり信用売りのニーズが高いかどうかが背景にあるようです。そして貸株を行うにあたっては、いくつか注意点があります。
1つは、貸株中は名義人が証券会社となること。ですので、権利確定日も貸株中だと、1)配当を受け取る権利 2)株主優待を受け取る権利 3)議決権 を得ることができません。
ほとんどの証券会社では、配当を受け取れない代わりに、同額を金利として払い出してくれますが、この場合、配当所得ではなく雑所得となります。つまり、源泉分離課税の20%ではなく、給与上乗せの総合課税の計算となります。つまり、税金的には確実に損となります(総合課税のほうが税率が低い人は、配当でも総合課税を選択できるため)。
また、株主優待を受け取れないのもデメリットですね。僕は楽天証券で貸株サービスを利用していますが、楽天証券では権利確定日だけ貸株を返却してもらい、権利確定日を過ぎたら再び貸株するという設定が可能です。1年ほど前まで、これを手動で操作しなくてはならなかったので、ありがたいサービスです。
なお、金利については、こちらも雑所得の総合課税扱いです。ここも残念ですね。そして貸株の対象となるのは、主に日本株式です。またNISA口座の株や、外国株は対象外です。
ネット証券およびみずほ証券について調べた限りでは、金利は日次決算で当日〜数日後に入金されます。また、途中解約によるペナルティもありません。
最後に、貸株のリスクについても認識しておきましょう。通常株式は、証券会社に口座はあったとしても「証券保管振替機構」に預託し、分別管理されています。つまり、仮に証券会社が破綻しても、預けている株式は保護されていて、損失を受けないということです。ところが貸株の場合、証券会社に預ける形になり、分別管理の対象から外れてしまいます。そのため、証券会社が破綻すると株が戻ってこないというリスクがあります。
過去、大手証券会社が破綻したこともあり、ここが唯一のリスクといえるでしょう。それでも、大手の系列の証券会社が破綻して株が戻ってこなくなるリスクは、たいへん小さいと考えています。