ぼくが投資を初めてから、どんな考え方で実行してきたかということをまとめておきます。一言でいうと「投資は銘柄選びではない」です。
一昔前までは、投資、特に株式投資はギャンブルと同義な感じで、「10倍になる◯◯株の選び方」とか「資産1億円を稼いだ投資法」とかがメディアでももてはやされていました。一攫千金というか、元手をいかに早期に何倍にも増やすか、という考え方です。
バリュー投資を志すも
ぼくが20年ほどまえに投資を始めたときも、実は似たり寄ったりでした。手法は割安株を買うというバリュー投資。いわゆる目指せバフェットです。当時読んでいた本は、バフェット本が多かったと記憶しています。
ちょうど下記の『賢明なる投資家』を読んだのが2004年でした。
賢明なる投資家 ? 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法
- 作者: ベンジャミングレアム,土光篤洋,Benjamin Graham
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- 作者: メアリー・バフェット,デビッド・クラーク,井手正介,中熊靖和
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なので、P/LやB/S、C/Fを理解しようと四苦八苦したのを覚えています。この頃学んだ財務諸表の読み方は、本業の方でも役にたっているので無駄ではないのですが、投資という観点でいうと、ファンダメンタルズを理解したからといって、うまい銘柄選びができるわけでもないというのも事実でした。
当時購入したのは、武田薬品やNTTドコモなど。結果的には全然バリュー投資ではなく、メジャーな大型株への投資になっていました。そして、本当にバリュー投資を志すのであれば、長期で持たなくてはいけないのですが、10%から20%くらいの含み益が出た段階で、怖くなって売ってしまったんですね。
投資としては失敗ではなかったのですが、これは本当にたまたま市況が良かったとしかいいようがありません。このスタイルのまま投資をしていたら、どこかで大きな損失を被っていただろうと思っています。
インデックス投資に目覚める
スタイルを大きく変えるきっかけになったのが、下記の『ウォール街のランダム・ウォーカー』と『敗者のゲーム』です。ちょうど2007年のことでした。この2冊からの最大の収穫は、「投資は銘柄選びではない」という考え方です。
ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理
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「上がりそうな企業を見つけて投資する」というのは 、アナロジーとして「ルーレットで当たりそうなところに賭ける」に似ていて、どうしてもギャンブル的に考えがちでした。ところが、この2冊の思想を簡単にいうと、「上がりそうな企業なんて見つけられない」「株式市場は成長し続けているので、株式市場全体を買うのが投資だ」というものでした。
これは本当に目からウロコで、2倍になる銘柄は見つけられないだろうけど、年7%の資産成長ならなんとかなるかも、と実感しました。投資によって資産が増加していくイメージが、このとき初めて見えたのです。
年15%も不可能ではないという実感
2007年といえば、翌2008年にかけて起こった金融危機〜リーマンショックのあったタイミングです。実質的に投資を初めたのは、この年だといえると思います。下記のグラフは、2007年時点の資産を1としたときの推移です。2018年には8倍強まで伸ばすことができました。
継続的に貯蓄も行い、本業のストックオプションもあったので、純粋な投資分では5倍程度の増加ですが、それでも年率にすると15%以上です。 わずか10年ほどの投資期間でも、ここまで伸ばすことが可能でした。
銘柄選びではなくアセットアロケーション
銘柄を選ばないで株式市場全体に投資するというと、じゃあ投資家は何を工夫するの? と思うかもしれません。実際には、販売コストと運用コストが小さいインデックス商品を選んで購入したら、あとは何もすることがありません。というか、何かするとパフォーマンスが悪化します。
それでも工夫がゼロというわけではありません。ぼくが2007年当時に買ったインデックスは、米S&P500インデックス連動の「IVV」と、新興国インデックス連動の「EEM」と、米国/カナダを除く先進国中大型株インデックス連動の「EFA」でした。この時買った3つのETFは未だに売却せずに持っています。
いま考えるとなかなか偏った選択ですが、このようにさまざまなインデックス商品をどのように組み合わせるかが、工夫のしどころになります。これをアセットアロケーションといいます。
株式だけでなく、株式と値動きが連動しない投資先を組み合わせることで、リターンを減らさずリスクだけを減少させることができるのです(効率的フロンティア)。現在は、社債系の「PFF」「ARCC」や、住宅債券の「MBB」、国債系の「IEF」など債券系のインデックスETFを組み入れるアセットアロケーションに変更しています。
どのインデックスを組み入れるか、それぞれの比率をどのくらいにするかが、まさに工夫のしどころ。ボラティリティやベータ値、デュレーションなどの指標を見ながら、バックテストなども織り交ぜながら最適な組み合わせを目指すわけです。
そうは言っても個別株
インデックス投資に目覚めたわけですが、年率15%という伸びは、実はインデックス投資だけで得られたものではありません。インデックス投資よりは小さなボリュームですが、個別株への投資も行いました。
投資先は米国ハイテク株です。最初に投資したのはGoogleとAmazonです。その後、Facebookの上場直後、下落したタイミングで購入し、1年少々前にNVIDIAとTeslaも購入しました。比較的、米国ハイテク株に土地勘があったおかげもありますが、現在のところこれらの投資は大成功しています。
検討したものの購入しなかった銘柄もいくつかありますが、買っておけばよかったと思うのはAppleとAlibabaです。一方で、買わなくて正解だったのはTwitterでした。
実は、Facebookは2回ほど、GoogleとAmazonは1回ほど、都度、手持ちの半数を売却しています。結果論でいえば、売却は失敗だったわけですが、やはり個別株で急騰すると、利益確定をしたくなるのが人の本性なんだろうとあらためて思います。
変わった投資は面白い
メインはインデックス投資で、サブでハイテク成長株への投資を行っているわけですが、投資への関心が高まってくると、もっと売ったり買ったり銘柄の組み替えをしたくなるんですね。勉強もしたくなります。
ただしインデックス系の売買はしないほうがいいし、成長株のほうも基本持ち続けたいと思っています。そこで知的好奇心を満たすためと、変にメイン部分を触りたくならないように、新しい投資手法にもトライをはじめました。
1つが、FXを使った異業者アーブです。こちら売り買いはしないのですが、為替変動を常時チェックしながら証拠金の調整はしなくてはなりません。これが面倒そうにも思えますが、投資操作の意欲を満たしてくれるんですね。為替にも関心が高まって一石二鳥です。
もう1つが、VIX投資です。現時点ではポジションをクローズしていますが、たいへん面白い投資になります。S&P500のボラティリティ指数なので急騰しても時間がたてば一定の値に戻ってくること、ETNだと、コンタンゴという仕組みによって基本的に価格が下がり続けること、など面白い仕組みがたくさんです。
そして、VIX投資を研究する中で出会ったオプションです。銀のプットオプション売りのほか、ドル建て資産でカバーする為替のカバードコールも一時期やっていました。基本的にゼロサムゲームのトレーディングですが、勝率が非常に高い代わりに負けるときは大きく負けるという特徴をもった取引です。プットオプション売りは仮に権利行使されても、今度はカバードコールに移行するという手もあって、これまた面白いです。
さらに、2017年初頭というちょうどいいタイミングで大きくトライした仮想通貨も、たいへん興味深い投資対象です。ファンダメンタルズが存在せず、ケインズがいう「美人投票」そのものといった取引ですが、マネーそのもののあり方を問い直す性質があります。投資としてはおすすめできる対象ではありませんが、ブロックチェーンの可能性も含めてウォッチ対象としては素晴らしいものだと思っています。
そして今年トライしようとしているのが、太陽光発電です。FIT価格も18円まで下がり、税制優遇もなくなった今、なぜ太陽光? という見方もありますが、売上額が確実性がたいへん高く、融資が引きやすいという、不動産に近いながらなかなかおもしろい性格を持っているものだと思っています。
投資で成功している方は、口々に「1つの手法に精通してマスターすること」の重要性を言います。ただ、投資にはこのように様々な手法があって、それぞれがたいへん面白いということも知ってほしいと思います。
単に資産運用するだけなら、全世界株インデックスの「VT」に、米国債権インデックスの「IEF」か「TLT」あたりをまぜて買っておけば終わりというやり方もあります。ただし、投資は知的好奇心をさまざまな角度から刺激する、面白い趣味でもあるのです。