法人と作ると、税理士から「税抜経理にしますか?税込経理にしますか?」と聞かれます。消費税を入れて計算していくのが税込経理、消費税を入れずに計算して最後に消費税を入れるのが税抜経理。そのくらいの認識しかなかったので、どんなメリットデメリットがあるのか、調べてみました。
税抜は、交際費の枠が多くなる
まず中小企業(資本金1億円以下)は、交際費を年800万円まで全額損金計上可能というのは有名です。ところが、この800万円には、消費税を入れる場合と入れない場合があります。
税込経理だと消費税を入れて800万円まで。税抜経理だと消費税抜きで800万円まで。つまり、税抜経理のほうが年間64万円分、交際費の枠が大きくなります。でもいや、年間864万円も交際費は使わないので、どっちでもいいのですが。
税抜は、資産の一括償却枠が多くなる
パソコンとか机とか事業に使うものを買ったときに、金額によって処理が変わります。購入金額をすべて損金とできる場合もあれば、複数年で減価償却しなくてはいけない場合もあります。
例えば10万円未満のものは即時償却、全額その年の損金にできますが、この10万円の計算は、消費税を入れる場合と入れない場合があります。税込経理なら税込み10万円、税抜経理なら税抜き10万円。つまり、8000円程度違ってきます。
これはけっこう大きいですね。10万円は際どいラインなので、即時償却するためには税抜経理のほうが有利です。
税抜は、償却資産の取得価額が小さくなる
太陽光発電システムは、「固定資産の中で事業に使用するもの」なので償却資産となります。そして、償却資産は課税標準額(簿価?)に対して1.4%の償却資産税がかかります。太陽光発電システムだと取得価格が1500万円くらいしますから、その1.4%は21万円にもなります。課税標準額は、減価償却によって減少していきますが、毎年1.4%を払うものなので重要です。
ところが、この取得価格の計算は、税抜経理と税込経理で変わってくるのです。つまり、税込経理だと消費税込みの価格を取得価格とします。
償却資産の取得価額の算定に当たり、消費税については、税務上採用している経理方式により申告してください。(税抜経理方式であれば消費税を含まない価額で、税込経理方式であれば消費税を含む価額で申告してください。)
8%取得価格が変わるので、1基あたり年1万6800円も償却資産税が変わってきます。
税込は、特別償却と特別控除が有利になる
これまで税抜経理のほうがなにかと有利になる点ばかりでしたが、税込経理のほうが有利になる点もあります。それは特別償却や特別控除などの税制優遇です。
特別償却は、条件を満たすと固定資産の減価償却を一気に行える、つまり早期に損金化できるというものです。このときの固定資産額は、消費税込みの場合と消費税抜きの場合があるため、込みのほうが償却額が多くなります。といっても、減価償却を前倒しできるだけといえばそれだけなので、そのために償却額自体を大きくするメリットがそれほどあるようには思いません。
特別控除は、支払うべき税金の額が減る(戻ってくる)というものです。こちらも資産取得額の○%という計算になるので、取得額に消費税を含められる税込経理のほうが有利になります。
太陽光の場合、ほかの特例を除いてざっくり計算すると、償却資産税は1.4%なので、1500万円のシステムの場合21万円程度です。これをがゼロになる特別控除を受けられた場合で考えます。税抜経理だと1500万円で21万円がゼロに。税込経理だと 22万6800円がゼロに。つまり、1万6800円控除額が違います。
免税業者は税込み経理のみ
ちなみに、税込経理と税抜経理は自由に選ぶことができますが、免税事業者は自動的に税込経理となるようです。
なお、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理方式によります。
太陽光発電の場合、最初は課税事業者で始めてシステムを購入し、消費税還付を受けます。その後、3年後に免税事業者に戻るというのが定番です。つまり、税込経理と税抜経理で悩むのは最初の3年だけということになります。
そして、最初の3年はうまくいけば、特別控除が得られるので、償却資産の取得価額が変わっても相殺される感じです。交際費も800万円も使いません。ただし一括償却できる額が8%変わるのは大きいので、まずは税抜経理でいきたいと思います。