正月休みなので、2018年1年間の読書記録を振り返ってみたいと思います。まずは投資関係の読書35冊から。けっこうな不動産投資の本を読んだ1年でしたが、なかなか良い本には巡り会えませんでした。どうしても、「成功した大家さんの自分のやり方」というものがほとんどで、僕が好む、エビデンスとロジックに基づいた経営法という本がありません。
一方で、経済および株式投資についてはなかなかおもしろい本を読めました。
- インデックス投資は勝者のゲーム
- 世界のエリート投資家は何を考えているのか/世界のエリート投資家は何を見て動くのか
- 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について
- ファイナンス理論全史
- あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
- その他の本 125冊
インデックス投資は勝者のゲーム
インデックス投資は勝者のゲーム──株式市場から確実な利益を得る常識的方法 (ウィザードブックシリーズ Vol.263)
- 作者: ジョン・C・ボーグル,John C. Bogle,長尾慎太郎,藤原玄
- 出版社/メーカー: パンローリング
- 発売日: 2018/05/13
- メディア: 単行本
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この『インデックス投資は勝者のゲーム』は、バンガード創始者のボーグルが書いた一冊です。Amazon Primeで無料でkindle版を読めます。実は2007年に出た『マネーと常識』の改訂版になります。株価を決める要素は、利益と配当とPERで決まるという、エビデンスに基づいた説明が、ぼくの中で株価を見る際の指針を作ってくれました。
なぜインデックス投資をするべきかを、エビデンスを元に理解したいならば最適な一冊です。最適というのは、『ウォール街のランダム・ウォーカー』は高く分厚いからです。ただし、「インデックスファンドバンザイ!」という本なので、中立性という意味ではランダム・ウォーカーに軍配があがると思いますが。
世界のエリート投資家は何を考えているのか/世界のエリート投資家は何を見て動くのか
コーチとして世界的に有名なトニー・ロビンズの投資本です。まるでテレビショッピングのような構成と演出ですが、内容は他に例のないものでした。何より、世界最大のヘッジファンドのマネージャ、レイ・ダリオへのインタビューで「オールウェザーポートフォリオ」について聞いているのが貴重です。
またセミリタイアを目指す人向けに、経済的事由を5つの段階に分けて定義しているのも参考になりました。「いくらあればセミリタイアできるのか?」は永遠に人気の問いですが、実際の金額を出して考えてみようという著者のアプローチには賛同できます。
世界のエリート投資家は何を考えているのか: 「黄金のポートフォリオ」のつくり方 (単行本)
- 作者: アンソニー・ロビンズ,山崎元,鈴木雅子
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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世界のエリート投資家は何を見て動くのか: 自分のお金を確実に守り、増やすために (単行本)
- 作者: アンソニー・ロビンズ,山崎元,鈴木雅子
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について
こちらの本は投資に興味のある人ならぜひ読んでほしい一冊です。3回に分けて書評を書きましたが、下記のようなことを不思議に感じている人なら、フェアな答えが期待できます。
- 日本国債はなぜ暴落しないのか?
- 株価が暴落するとなぜ円が買われるのか?
- リスクプレミアムとは一体なにか?
改めて、株価とは経済と一体であり、経済は為替や金利に大きく関係していることがよく分かる本になっています。
- 作者: 田渕直也
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/07/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ファイナンス理論全史
いろいろな本を通して現代金融理論を学ぼうとしていますが、コンパクトにまとまっている良書がこちらです。インデックス投資を志す人が、エビデンスというよりロジックを知りたいなら、この一冊で必要な用語はだいたい出てくると思います。
あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
ファイナンス理論全史が金融理論にフォーカスしたものなら、こちらはもっとファイナンス的です。著者の野口真人はM&Aコンサルティングなどを行うプルータス・コンサルティングの創業社長であり、企業価値をファイナンス的に見るとどうなるか? という観点でいろいろな例が出てきます。
DCFに必須のWACCの話や、最後は行動経済学の話やオプション価格評価モデル*1 まで踏み込んでいます。ファイナンスの面白さを知るにはうってつけの一冊だと思います。
あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
- 作者: 野口真人
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その他の本 125冊
そのほか読んだ本だとSFが32冊、一般小説が18冊、経済系が17冊、ノンフィクションが27冊というところでした。それらの中からいくつかオススメを。
この『恋する寄生虫』は、恋に落ちた二人が、その恋の理由が二人にとりついた寄生虫がもたらしたものだということに気づく……というお話です。人間の感情って本当は何なの? ということを考えさせます。
この話に共感したら、次はグレッグ・イーガンの『幸せの理由』がオススメです。脳に機械を入れてスイッチを押すだけで幸せを感じられるようになった主人公は、それをどう受け止めるのか。人間の感情なんて、しょせん化学物質によるものなのか? と考えさせる本です。
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 文庫
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人間の感情だけでなく、判断力でさえ、僕らが思っているよりも曖昧なものかもしれない。そんなふうに感じさせるが、kindle Singlesで登場している『 おうむの夢と操り人形』です。AIが進歩した未来、人間はAIとどう付き合うのか。AIが世界を動かしていく中、人間が果たすべき役割とは何なのか。そうしたことに関心があれば、ラストまで一気読みです。
SFでマイ・ベストに入るのが、2018年に読んだ『われらはレギオン』です。人間の身体を捨てて人工知能になった主人公が、何でも生産できる3Dプリンターを持ち、光速に近い速度で飛べる宇宙船を新たな身体として、宇宙で冒険する物語です。
深刻な話は少なく、神に近い力をもった主人公が宇宙狭しと飛び回るSFです。3Dプリンターで自分の複製さえ作り出します。ただし、そこはかとなく、身体をもたない人間とは何なのか、自分とはいったい何なのか(記憶も能力も複製したらそれは何なのか)ということを問いかけます。
ソフトウェア会社の社長兼プログラマーのボブ・ジョハンスンは、SF大会の会場で交通事故にあい死亡した。目覚めてみると、なんと117年後、キリスト教原理主義国家となったアメリカで、恒星間探査機の電子頭脳になっていた!はからずもほぼ無尽蔵の寿命と工業生産力を手に入れたボブは、人類の第2の居住地を探して近隣の星系を探索し、つぎつぎに新発見や新発明を成し遂げていく
政治モノはあまり読まないのですが、年末に読んだ『総理にされた男』と、『大統領失踪』はよくできた物語でした。青臭さが逆に感動を呼ぶ総理にされた男、ベストセラーの方程式に沿って書かれた感のある大統領失踪、いずれも一気読みできるエンターテイメントです。
*1:2018年はちょっとお休みしてしまいましたが、オプションは本当に面白い。儲かるということではなく理屈として面白い!