投資でセミリタイアする九条日記

セミリタイアを実現したサラリーマン。ETF投資を中心に、太陽光投資や不動産投資、オプション、VIX、FX、CFDまで使って資産運用をしています。

キャッシュフローが出ない土地値以下不動産を考える

不動産の物件を探している中で、面白いものに出会いました。土地の値段以下、それどころか積算価格以下の値付けがされている一棟アパートです。場所も都内で悪くなく、ブランド価値のある立地です。ただし、利回りが4%以下と悪く、20年ローンだと税前キャッシュフロー(CF)がほぼゼロになります。利益は黒字なので税金は取られ、税引き後CFはマイナスです。

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※写真はその物件ではありません

さらに、昨今の融資引き締めを受けて、20%程度の自己資金を入れる必要があります。となると、初期に必要な現金が大きい上に、持っていると毎月お金が減っていくという恐ろしい案件です。

 

それでも面白いのは、土地として売れば即座に買値の1.3倍くらいの値が付きそうなところ。ではなぜすぐに建物を潰して売らないかというと、大元のオーナーが住居人として借りて住んでおり、契約上、立ち退かせられないからのようなのです。ただしこの方はかなりの高齢で、5年から遅くとも15年後には施設などに移らざるを得ない。

 

つまり、どんどん現金が減っていく中、元オーナーさんが引っ越してくれれば売却して資金を回収できるという投資になります。完全なキャピタルゲイン投資ですね。地上げみたいなものです。

純資産額のシミュレーション

まずは純資産額の年別シミュレーションです。平均居住年数を3年、募集にかかる平均月数を1.7ヶ月、平均募集費用を2ヶ月、平均原状回復費用を2ヶ月として、試算しました。メンテナンス費なども入れて、経費率は27%です。自己資金は2割入れて1.3%の20年ローンとしてみました。固都税や売買時の諸経費、所得税なども入れた税引き後の純資産額推移が下記になります。

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青棒が個人での購入、赤棒が法人での購入です。売却金額は積算評価額としました。なんと法人購入なら初年度からプラスです。これはすごい。仮に買値での売却だとしても、4年めからは純資産額がプラスになります。

 

もちろん毎年借入金の返済が進むため、期が進むごとに得られる純資産額はプラスとなっていきます。ここだけ見るとかなり美味しい投資です。

 

ではそのために必要なキャッシュはどうでしょうか? 

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赤線と青線が年次キャッシュフロー、棒が累積CFです。初期費用はもちろん、毎年の税引き後キャッシュフローは赤字(税前でトントン)なので、毎年どんどんお金が流出していきます。7年後には初期投資額の倍まで現金が必要になっていきます。

 

手元の資金が尽きるか、売却できるかのチキンレースです。もちろん、手元キャッシュがきつくなったら、借り換えなどでローンを組み直すこともできますが、構造的にはこうなります。

マルチプルを考える

キャッシュはどんどん出ていく、しかし借入金返済も進むので、年月が経つにつれて売却時の利益も大きくなる。そんな構造です。では、積算価格で売却できた場合、初期費用に対して何倍のリターンを得られるのかを見てみましょう。いわゆるマルチプルです。

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 なんと初年度から1.14倍で、年を追うごとに増加していきます。10年めで2.3倍、15年で3倍を超えてきます。ただしこれは、「その年に売却できた場合」だということに注意が必要です。また、10年めで2.3倍ということは、ざっくり暗算しても年率7%程度ということでもあります。

IRRで考えてみる

となると、もう一つ考えておくべきはIRRです。IRRとは以前書いたように、同額を複利の定期預金に預けた場合に得られるリターンと比較できる、利回りの指標ですね。

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なるほど、積算価格での売却であればだいたい5%くらいを維持できそうです。ただし5〜6年後くらいをピークにだんだんIRRは低下します。買値での売却では、徐々にIRRが上昇し、3%くらいになるようです。

 

実はIRRで見た場合、それほど利回りのよい投資でもないことが分かりました。売値は正直不確実ですから、5%前後の定期預金と同様の見通しです。

自己資金比率と借り入れ金利がIRRに及ぼす影響

さらに、この投資では自己資金割合と借り入れ利率が大きく影響を及ぼしそうです。そのため、投資効率が最も良さそうな6年めに売却したとして、自己資金比率と借り入れ利率を変化させてIRRをチェックしてみました。

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なるほど、このグラフを見ると、最も利回り(IRR)に影響するのは金利というより自己資金比率のようです。自己資金比率が14%ならば、7〜8%のIRRリターンが期待できますが、自己資金比率が20%を超えると6%がいいところです。

そもそも自己資金をどう捻出するか

投資としては面白い案件なのですが、下手をすると何年も資金を回収できず凍結する形になります。そして年がすぎるほどに利回りが悪化する恐れがあります。何より問題なのは、そのためにどんどん必要資金が増えていくことです。

 

現在の資産状況では、初期の自己資金を用意することはなんとかできそうですが、その後の追加必要CFを賄うには、継続的に株式などを売却していかなくてはなりません。そして、今は株式を売るにはあまりいいタイミングではないと思うんですね。

 

想定リターン(IRR)が15%くらいあれば魅力的なのですが、そのためにはいくらで売却する必要があるのでしょう? 計算すると、「近隣成約土地値」で売却できると、6年めのIRRがちょうど15%となりました。ただし、これは建物解体費用は含んでいません。

 

そしてこのIRRは年数を経るごとにどんどん低下し、11年めには10%を切り、22年めには5%台に落ち込みます。

 

22年売却できずにいたら、その資金は素直に株式で運用していたほうがお得だったということになりかねません。なるほど、一見お得に見える物件でも、この値段(積算評価以下)で売りに出ているのはそれなりの理由があってなんですね。

 

正直、ちょっとこの物件は難しいなと思いました。価格がこの4分の1くらいなら、チャレンジしてもいいのですが、総額が高すぎです。借入金額が資産総額を軽く超えています。マイナスCFが積み上がっていくことを考えると、更地にして売却できるようになるまで頑張れる自信がありません。逆に、資金が大量にある人は、こういう物件で着実に資産を増やせるんだなと思った次第です。