FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

書評:『生命保険は「入るほど損」?!』

生命保険についてもう少し勉強したいと思い、元生保営業マンが書いた『生命保険は「入るほど損」?!』を読みました。業界の裏側が分かりへぇーという点と、そしてやっぱりねという保険に対する感想でした。 

生命保険は「入るほど損」?!

生命保険は「入るほど損」?!

 

保険は掛け捨てが基本

やっぱりね、と思った最大のポイントはこちらです。 

保険は「掛け捨て」が基本。「戻ってくるお金」にこだわると、より損が膨らむ仕組みです。

 「戻ってくるお金」とは解約返戻金のことで、貯蓄性のある保険とも言われます。積み立てていくと、もしものときの保障があるだけでなく積み立てた額の1.x倍になって返ってきますよという商品ですね。

 

なぜ掛け捨てでないと損が膨らむかというと、これが保障部分と運用部分を組み合わせた商品だからです。1万円の保険料があったとして、5000円分が保障にまわり、5000円分が運用にまわります。保障部分は同額の掛け捨て保険を買ったのと同じ、5000円分は同額の債券や投資信託を買ったのと同じになります。

 

ただ、バラバラに買ったのと違う点が2点あります。

  • 10年など長期間を過ぎないと払込額を下回る返戻金
  • 保険会社の手数料がけっこう取られる

そのため、運用部分のリターンは自分で債券を買ったほうが大きくなる傾向にあります。日本国債のリターンは極めて小さいので、保険でも自前運用でも誤差のレベルで小さいですが、米国債で考え得るとわかりやすくなります。

 

例えば30年ものの米国債の金利は3%を超えています。これを購入して30年持ち続ければ、年率3%の金利が確定しているというわけです。3%で30年運用するとなんと2.42倍になります。毎年一定額を積み立ててそれを3%で運用した場合、30年で1.6倍になる計算です。

 

保険の場合、年数がたいへん長いので、1.6倍になって戻ってきますと言われるとすごくお得な気がするのですが、実は普通に米国債運用してもそのくらいになるわけですね。資産運用は資産運用、保障は保障で切り離して考えましょうというのがこの話のポイントです。

もしものときの期待値は30%くらいしかない

では保障部分がどうなっているかを見てみましょう。当然ながら保険は「もしものとき」に備えるものです。「もしも」が起きる可能性が10%で、保険料を10万円払ったとき100万円もらえるなら還元率100%となります。損も得もない賭けですね。

 

ところが保険会社にも運営費がかかるので、還元率が100%ということはありません。宝くじは胴元である国が約半分を持っていき、還元率は46.5%と言われています。競馬では75%が購入者に払い戻されます。では医療保険ではどうでしょうか?

たとえば、女性の30〜34歳では、加入者に給付金として還元されるお金の割合は、5500÷1万8744円=29.3%です。

 なんと、実に70%相当が胴元である保険会社の手元に入るそうです。期待値で考えるならその金をギャンブルに費やしたほうがいいくらいの数字です。

 

上記は医療保険でしたが、日本の保険のベストセラーであるがん保険の還元率はもっとひどいことになっています。

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30代では2%〜5%、70歳以上でも26〜35%の還元率。これが日本のがん保険の実態だそうです。

 

こうした還元率を考えると、医療費やがん医療など貯蓄で対応できるくらいの金額しかかからないものに対して保険に入るのは、お金のほとんどを捨てているようなものだということが分かります。10年分の保険料は年齢が上がれば80万円超にもなるわけですが、これを貯蓄しておけばいいわけです。

 

保険はいざという時に支払えないくらいの額が必要になる場合に備えて入るものです。たとえば交通事故で相手を死なせてしまったり、火事で家屋が萌えてしまったり、自分が死んで幼い子どもの養育費教育費が払えなくなってしまったり。医療費レベルの出費は「いざ」というときも支払える金額だったら、保険に入るだけ損というのは著者も何度も書いていることです。

  

とはいえ保険に入りたいときは 

とはいえ、保険というのは期待値だけで語れるものではありません。心の平穏を買える商品でもあるからです。起こるかもしれないリスクに毎日ドキドキするより、期待値的に損であっても、ドキドキを消し去る効果があります。ぼくも自動車の車両保険は迷ったものの、入っています。支払えない額ではありませんが、いざというときのことを考えると、心のショックが大きすぎるからです。

 

ではどこの保険会社のどんな商品を選ぶといいか。著者は「大手だから安心」は間違いだと言っています。

大手だから支払いが早く漏れが少ない、というデータなどは特にないからです。むしろ2005年から2008年にかけて保険金の不払い問題が発覚した際、最も悪質だったのは、事務的なミスなどではない意図的な不払いがあり、金融庁から2度の業務停止命令を受けた明治安田生命だったことを忘れないでいただきたいと思います。

 確かに保険会社が破綻すると、得られるべき保障もなくなってしまうので、財務的に安定しているところを選びたいです。こちらを見ると、保険会社の破綻ってけっこうあるんですね。破綻すると、予定利率の引き下げなどのデメリットはあるようですが、生命保険契約者保護機構というところが引き継ぐ仕組みになっているようです。

 

そしてどんな保険を選べばいいのかというと、著者は次のように書いています。

おすすめは「お金がもらいにくい保険」

1 老後に保障が切れる

2 (保険金・給付金の)支払い要件が厳しい

3 特約がない

 つまりは一見不利に見えるような商品を選べと。結局のところ確率に基づいて、補償金額と保険料は決まっているので、保障が手厚いからといっていいわけではないということですね。そして、特約など、複雑になるほどに保険会社の手数料が増え、損になっていくようです。

 

この本を読んで、改めて残ってる自分の保険をチェックしたのですが、全然ダメではないものの、やっぱり微妙でした。損害保険以外は、やはり保険は入るものではないと改めて感じました。