FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ゲームとしての投資 3つの特徴

cis氏は著書に「投資はゲーム」と書いていますし、何人かの投資家もゲーム的に投資を見ています。では、投資をゲームとして捉えるとはどういうことなのでしょうか? ちょっと考えてみました。

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

 

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現実世界から切り離す

一つは、現実世界から切り離して扱うということです。投資では、暴落すると怖くなって最悪のタイミングで売ってしまうとか、下がっているのに損切りできず塩漬けにしてしまうとか、少し利益がでると嬉しくなって売ってしまうとか、そういった感情に基づくワナがいろいろあります。

 

いろいろな格言を聞いたり、過去のエビデンスを研究したり、確率的に期待値がどうであるかをわかっていても、この感情から逃れるのは簡単ではありません。

 

ところが、ゲーム内の出来事ならどうでしょう? 感情を排除してロジックや確率どおりに振る舞える人がけっこう多いはずです。ネタバレですが、『エンダーのゲーム』という話もあります*1

エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)

エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)

 

相場を体験できるゲームはいくつもありますが、「相場はゲームをいくらやってもわからない」といいます。これは逆説的に、ゲームでいくらうまくやれても実際の相場では感情が働くのでゲームのようには振る舞えないということを意味しています。

 

では、実際のカネを扱うのにゲームのように感じることはできるのでしょうか? 最近感じているのは、扱う金額が大きくなるほどゲームのように感じられるということです。先日、100万円ほどの札束を手に持ったのですが、こうやって現金を持つと、この重みに圧倒されます。一方で、デジタルデータ、画面上の数字の羅列にはそこまでの重みを感じないんですね。

 

現金だと浪費にセーブがかかるけど、クレジットカードだと使っている感じがないので無駄使いしてしまう。そういう話がありますが、同じようなものだと思います。

短期間の大量の試行が可能

もう一つは、複数回の試行を繰り返すことで、仮説や技術を洗練させていくことができることです。ほとんどのゲームは、同じ内容を何度も何度も繰り返せます。サッカーや野球然り、モノポリーしかり、ポーカーしかり、シューティングゲームしかり。

 

最初は失敗しても、何度も繰り返すことで技術は上がっていきます。そのために重要なのは、この試行が成功したのか失敗したのか明確で素早いフィードバックがあることです。投資、特にトレーディングはこの明確で素早いフィードバックがあることで、初心者と熟練者に大きな差がつくわけです。

 

ただしこのとき、仮説をもって取り組み、結果によって仮説を修正してトライすることが重要です。ただ漠然とやっていては、「たまたま勝った」「たまたま負けた」からは抜け出せません。ゲームが好きな人というのは、この仮説=作戦を立案する能力が高いのではないかと思っています。

 

例えば、モノポリーでいえば、ある程度の勝利の作戦を事前に立てます。「今回はグリーンで勝つ作戦を取ろう。そのためにはゲームの展開を遅くさせてインフレ気味にすべきだ」とか、「ライトブルーで早めに仕掛けて、後半イエローかレッドにチェンジして行こう」とか。もっとも、モノポリーはサイコロの目によって、取れる作戦が限定されてしまいますが。ドミニオンでいえば、「圧縮デッキで高回転を試そう」とか「庭園戦略の最適な引き方を試そう」とか、いろいろな作戦にトライできます。

 

これが意味するのは、多くの時間を使って大量のトライ&エラーが行える人は、本当に強くなれる、ということです。意思をもってトレーニングすれば強くなれるということでもあり、FXデイトレーダーなどで多くの経験を積んだ人に、初心者が勝つのは本当に難しいということでもあります。

 

また、長期投資はトライ&エラーができません。なので、基本的には過去データを活用して、擬似的にトライ&エラーを行うことになります。いわゆるバックテストですね。ロジックを組み立てて確率的にプラスリターンだったら、さまざまな条件でバックテストを行い、洗練させていくということです。

ゲームはそれ自体が目的

3つ目は、そのこと自体を目的として扱うということです。ゲームの面白い所は、目指すゴールは勝利なのですが、プロセス自体を楽しめるところにあります。負けたけどこの内容は素晴らしかった、そんなことを思いますよね。純粋なゲームほど、プロセスを楽しむことができると思っています。

 

投資自体を楽しむというのは、実は投資でお金を増やすこととは違います。大きく成功している投資家は、概してお金を増やすことよりも投資自体が楽しいからやっている傾向にあります*2。新たな仮説を作ってみること、そしてそれを実行してみること。そこに魅力を感じているようです。

 

こうした投資家は、たいへん勉強熱心です。情報収集はもちろんですが、新たな領域にトライしたり、これまでよりも規模を拡大して投資したりしています。投資を研究すればするほど、人間心理や経済という複雑なものに惹かれます。

 

世の中にはいろいろな面白いゲームがありますが、投資というゲームは、習熟するとそれがそのまま収入になります。上位5%に入ったからといってそれで食べていけるほどのゲームはまずありません。趣味と実益を兼ねるとはこのことでしょう。

 

一方で、上位5%、もしかしたら上位1%くらいに入らないと、ゲームとしての投資でリターンを得ることはできないともいえます。

*1:ネタバレ。エンダーのゲームでは、主人公のエンダーが訓練だと思わされて実際の戦争を指揮し、最終的に勝利する。訓練だと思いこんでいたからこそ、味方の損害を気にすることもなく、敵への非情な戦略も躊躇することなく実行できたという話。

*2:もちろん生存バイアスはあります。投資自体が楽しいという人は、けっこうな比率で失敗して退場しているのかもしれません。お金を増やすことにフォーカスしている人のほうが、大勝はしなくても地道に残っている可能性もあります。