ある証券会社の人が「投資が初めての人って、基準が仮想通貨なんですよ」と話していました。一年で2倍になるなら関心あるけど、5%程度増えてもねぇ、と。
普通の人が月に投資できる金額なんて、多くても10万円くらいだったりします。その5%は5000円! たった5000円のために10万円を預けなきゃいけない。しかも、もしかすると10万円は株価暴落で5万円になるかもしれない(※リーマンショック時)。
確かにこう言われると、それなら投資なんてしなくていいや、と思ってしまう気持ちも分かります。だから、FXとか仮想通貨とかでギャンブルしたくなるわけです。
逆に金融リテラシーがある人や、プロの人は5%のリターンって結構すごいよね、と思うわけです。5%で複利運用できれば、15年で倍になるのですから。素人の方がリスキーで、プロの方が保守的。素人のほうが多くを求め、プロは僅かしか求めない。これは戒めですね。
オプションとかの投資でも、「年率40%!」なんて書いてますが、このやり方は完全にギャンブルなわけです。プロなら単純なプット売りなんてしなくて、保険としてもっとOTMのプットを買っておくとかします。それは保守的ですが、リターンの低下につながるわけですね。
では、むやみに高いリターンを求めてしまう(高いリスクを取ってしまう)理由はどこにあるのか考えてみました。
人生を一変できるくらいのリターンがほしい
ひとつは投資に期待するものとして、人生を一変できるくらいのお金を求めている場合です。100万円が105万円になっても、おそらく人生の光景は変わりません。5%運用を40年続けたとしても、100万円が700万円になるだけです。住宅ローンの頭金や高級車は買えるかもしれませんが、人生が変わるほどではないですね。
しかし、100万円を100倍にできたら1億円です。これはさすがに人生の風景が変わります。100万円を100倍にするには、10倍を10回繰り返す必要があります。FXや仮想通貨などで大きくレバレッジをかければ、10倍は十分に起こりえます。もちろん、ゼロになってしまう可能性も相応に高いわけですが、宝くじを買うようなイメージなのでしょう。
比較対象がギャンブルになっている
5%のリターンを高いと思えるかどうかは、比較対象を定期預金とした場合は見え方が変わってきます。0.1%でも高い利率なのが現在の定期預金なので、5%もらえるのなら殺到という感じでしょうか。
どちらかというと堅実な女性などのほうが、比較対象を定期預金において考えて、5%のリターンでも十分と考えるようです。
ただしここには大きな欠点があって、5%のリターンを得るには相応のリスク、つまり価格変動(ボラティリティ)を受け入れなくてはなりません。また、株式なら年平均5%はいけるでしょうが、これはあくまで年平均なので10年単位で持ち続ける必要があります。1、2年では5%のリターンは保証されません。
「10年定期預金」だと思えば、5%のリターンは十分に納得できるでしょう。
投資金額が小さい
100万円の5%は5万円でしかありませんが、1000万円の投資金額なら50万円です。50万円はちょっと大きな金額ですね。月収に近い額でしょうから。
シニア層などは、退職金などもあり、投資金額が1000万円規模になってきます。そうすると、倍増を狙うよりも毎年5%のリターンを生んでくれることで満足できるようになります。
でも、退職金だってもともとは毎月の人件費の中から、給料の代わりにコツコツと積み立てられたものなんですよね。小さな金額を積み立てて、それが退職時に何千万円となってくるわけです。それを考えると、コツコツ貯金をして、投資の効果が感じられる数百万円レベルになってから投資をするというのはアリです。
投機に走る人の話を聞いてみると、明らかに貯金金額が少なすぎます。逆に、インデックス投資などをしっかりやっている人は、預貯金といった現金で、少なくとも1000万円以上は持っている場合が多いです。そこを超えた部分を投資に回しているわけです。
実はゆうちょの限度額である1000万円程度まで*1は、投資なんかせずに貯金をしておくというのが賢いやり方なのかもしれません。