「米国の株価指数、たとえばS&P500では、不調な企業を早々に指数から落として、好調な企業と入れ替える。だから指数自体は伸びていく」。こんな説明を聞くことがあります。確かに調子のいい企業ばかりを残した指数ならば、それはグングン伸びていきそうです。
でもこれは正しいのでしょうか?
米国株式市場の指数として有名なものに、ダウ工業株平均、S&P500、ラッセル1000、CRSP(クリスプ) USトータルマーケットインデックスなどがあります。それぞれの簡単な特徴は下記の通りです。
- ダウ工業株平均 組入数30 株価加重平均
- S&P 500 組入数500 時価総額加重平均
- ラッセル1000 組入数1000 時価総額加重平均
- CRSP USトータル 全米網羅約4000 時価総額加重平均
平均方法の違いはありますが、ダウが30銘柄で、S&P500が500銘柄、ラッセル1000が1000銘柄とだんだん企業数が多くなります。CRSP USトータルはほぼ全米全銘柄といっていいですね。
もし「上位の指数には優秀な企業が選別して残っている」から「パフォーマンスが高い」のであれば、全米網羅よりも選別群であるラッセル1000やS&P500のほうがパフォーマンスが高くなりそうです。
上記は、2006年から2018年の、各指数の推移です。赤がダウ、青がS&P500、緑がラッセル1000、黄色がCRSP USトータルの代替としてVTIです。うーん、見たところどれも同じような値動きですね。特に選別軍のほうがパフォーマンスが高いようには見えません。
過去2年で見るとこうなります。赤のダウがパフォーマンスがいいように見えますが、これはスタート時点を変更するだけで変わります。
これは2013年からの2年を見たものです。今度はダウのパフォーマンスが低いように見えます。
企業数が増えても、小粒な企業が入るかどうかなので変わらない?
ラッセル1000は時価総額ベースで、全米の約90%をカバーしているようです。S&P500は約80%をカバー、ダウ工業株平均で20〜25%がカバーされます。つまり、全米企業の時価総額の合計値のうち、2割から3割が30社で占められているということですね。これはすごい。
ということは、指数を比較しても値動きが似たようになるのは当然ともいえます。ダウを除けば全米とS&P500で20%しかカバーする時価総額が変わらないのですから。すると問題は、S&P500に選別された500社と、選別されなかった残り3500社のパフォーマンスを比較するべきでしょう。
というわけで、今度はラッセル2000という指数です。米国企業上位1000社がラッセル1000ですが、上位1001〜3000までの2000社を指数化したのがラッセル2000です。
青い面グラフがラッセル2000、紫の線がS&P500です。期間は2002年から2019年です。今度は異なる兆候が見られました。全期間で青い面グラフのほうが高パフォーマンスに見えます。でもしかし、ラッセル2000というのは、上位の選抜銘柄に入れなかった小型の株でした。そのほうがパフォーマンスがいいのです。
これはいわゆる「小型株アノマリー」と呼ばれるもので、下位の小さな銘柄のほうがパフォーマンスが高いことが多いことを指します。
でも本当に小型株アノマリーがあるのなら、「選別された上位銘柄のほうがパフォーマンスがいい」というのと真逆ですね。選別されなかった下位銘柄のほうがパフォーマンスがいいということなのですから。
シーゲル教授の説明
このような上位選別銘柄からなる指数は、市場平均よりパフォーマンスが高くなるという考えに対して、『株式投資の未来』で知られるシーゲル教授は、『株式投資』の中で次のように書いています。
S&P500指数は、業績が好調に推移している企業を構成銘柄から外すことはないが、急成長を遂げる小型・中型株をなかなか取り込むことができない。たとえば、マイクロソフトは株式公開から8年後の1994年7月までS&P500には含まれなかった。一方、小型株指数は、やがて急成長を遂げる銘柄の「揺りかご」の役割を果たすと同時に、大型株指数から降格した「堕天使」銘柄も含むことになる。

- 作者: ジェレミー・シーゲル,藤野隆太,林康史,石川由美子,鍋井里依,宮川修子
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なるほど、少なくとも「指数が選抜銘柄だからパフォーマンスが良い」ということは特になさそうです。
日本でも東証が市場の枠組みを変更することが話題です。指数に変な期待をしないようにしたいと思います。