先日知人と話をしていて、「ポイント還元とか投資とか、そういうのは好きじゃないんですよ」という話が出ました。理系の技術系の人だったので、なんでかな? とは思ったのですが、その場では理由を聞くことができず。
でも、周りの人と話をしていると、
- 資産運用に興味がない(怖い?)
- ポイント還元などお得に興味がない
という人に分かれるような感じです。なぜ日本人は投資、いやお金自体について話すことにこれほど忌避感があるのでしょうか?
これまで投資は不要だった説
続く経済成長を背景とした、マイホーム購入、終身雇用、退職金という3点セットによって、投資について考えなくても問題のない人生を送れたから、という説があります。
「好き嫌いというより、投資をする必要がなかった結果として預貯金での運用が主流になっているのだと思います」
だからこそ、まっとうな人は株式などやらず、株取引をしているのはギャンブラーばかりになってしまったということでしょう。日本のFX利用者数は世界トップだといいますし、2017年の仮想通貨バブルは日本での取引が牽引しました。長期保有ではなく、短期売買によるギャンブル的な取引を好む、というのがよく言われることです。
また、貯金が大好きなために、貯金利子の延長で投資を考えるという人も多そうです。FXのスワップポイントを狙った円キャリー取引が代表例ですね。
投資家は人として嫌いだから説
続いて、お金を回して儲ける投資家という人種が嫌いだという説です。日本の経営者は、一般に投資家が嫌いです。あれこれ口を挟んでくる投資家は、自分の好きに会社を経営したい社長にとって天敵だからです。
ここには、「株主から会社の運営を任されている」という感覚はなく、「株を持っているからといって俺の会社にあれこれ言ううるさい奴」と思いが背景にあるでしょう。
投資家が嫌われるのは、おそらくリスクを把握する際、投資先の考えはさておき、根掘り葉掘り調べるからかもしれません。また、投資先の市場価格が高くなり、目標株価に達したときには冷徹に利益を確定するところも嫌われる理由でしょうか。
さらには、マネーという統一尺度で物事を判断する投資家は、「利益はさておきこの会社は世の中の役に立っている」「赤字でも従業員を露頭に迷わせてはいけない」といった、浪花節の世界と対極にいます。だからこそ、下記のような「徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」という言葉が(真意はともかくとして)普通に出てくるわけです。
「(村上氏は)「ファンドなのだから,安ければ買うし,高ければ売るのは当たり前」と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない。」と述べたことでも多くの市場関係者の反発を買った。しかしこの言及は、フジテレビやライブドアなど、村上氏と接触のあった関係者の信頼を逆手に取って利益を上げた氏の投資手法の背信性を強調するためのもので、ここだけから「裁判官が金儲けを否定した」と決め付けるのは、いささか飛躍が過ぎる
業界が投資商品を悪徳なものにしてきた説
最後に、前森金融庁長官の言葉です。
「では何故、長年にわたり、このような「顧客本位」と言えない商品が作られ、売られてきたのでしょうか?」
投資商品が顧客を食い物にするようなものばかりだったら、確かに投資に手を出した人は大やけど。投資なんてしないほうが安心ということになってしまいます。
実際、株式のリターンなんて長期でも年間6%くらいなのですから、手数料が高かったら利益なんて簡単に吹き飛びます。下記の記事によると、毎年取られる信託報酬が1.5%もあるのに加え、販売手数料も3%近くあったそうです。
投信の信託報酬ですが、90年代初頭と比べると、実は、二倍近くになっています。日本株で運用する普通のファンドの信託報酬は90年代の初頭は0.8%程度だったのですが、これが徐々に上昇して、94年くらいから1%を超えて、98年くらいから1.5%前後の水準になってほぼ現在に至っています。
ふつうの株の取引でも、自由化前は片道0.42%。買って、売ると1%です。売買手数料が高いなら長期に保有すればいいのでしょうが、営業マンがせっせと「売りましょう、買いましょう」と営業するという実態がありました。
東京証券取引所の取引参加者である証券会社の手数料率の平均は、自由化前の99年3月期の0.42%から、2012年3月期は0.06%に下がった。
労働は尊く、金を回して儲けるのは汚い説
汗水たらした労働でお金をもらうのは尊いことだが、金を右から左へ動かしてお金を儲けるのは汚いことだ。こんなふうに考える人も多そうです。
「お金は汗水流して稼ぐもの」という言葉は、労働者にとっては当たり前、資本家にとっては「何いってんの?」というものになります。
ぼくは「労働は尊い」という価値感は、資本家が労働者を働かせるために作り上げたものじゃないかと疑っています。労働をせずにみんなが幸せに暮らせるなら、労働なんてないほうがいい。そんなふうに思うのですが、それでも労働することで金を稼ぎたいという人は跡を絶ちません。
でもみんなお金はほしい
それでも不思議なことに、みんなお金はほしいんですね。給料を上げてくれ、報酬を増やしてくれ、何かにつけてそういいます。そしてほとんどの場合、そこに市場原理はありません。「他社はもっと高い給料(報酬)をくれると言っている」。そういう議論にはならないんですね。
節約も嫌い、投資も嫌い。でも給料や報酬はもっとほしい。なかなかにお金というのは難しいものです。