FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

トラリピは期待値プラスの投資なのか?

FXに「トラリピ」と呼ばれる手法があります。これは、予め設定したアルゴリズムに従ってシステムが自動的に売買を行うシステムトレードの1種です。「トラリピ」「ループイフダン」など提供会社によって名称が異なります。

 

詳細はそれぞれ違いますが、基本的には自動で買いポジションと、指値売のポジションをセットで注文するという仕組みですね。

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※マネースクウェア トラリピの説明より

レンジ相場ならば利益が出る。レンジならば……

FXをやっていてよく思うのは、取ったポジションがいったん含み損になっても、数ヶ月くらいの期間で見ると、いつの間にか含み益に変わっていることが多いことです。これは、為替相場(この場合ドル円)が上下を繰り返していることを意味します。いわゆるレンジ相場ですね。

 

もしこのレンジ相場がずっと続くのであれば、FXなんて簡単です。資金効率をおいておけば、もし含み損になっても相場が反転して含み益になるまで待って売れば儲かるわけですから。

 

トラリピは、この相場の上下動を自動的に見つけて売買してくれるツールだということです。設定によって、細かな上下でも売買をして利益をとっていくのか、大きな上下のときだけ売買するのかが設定できるようです。

 

バックテストの結果

下記のサイトがバックテスト含めて検証をしていて、おもしろい結果でした。

scam-analysis.com

 

まずバックテスト検証では、確かにドル買いで期待値プラスの結果が出たようです。ところが、ご存知のとおりドル買いにはスワップポイントが付きます。スワップスワップ込み、税前で、最大ドローダウン40%というリスクを負いながら、リターンは3.6%程度というのが検証結果でした。さらにマイナススワップとなるドル売りでは、当然期待リターンはマイナスという状況です。

 

そしてEURGBP(ユーロ/英ポンド)では期待値プラスというバックテスト結果だったといいます。ところが。。

 

問題はいつもレンジ相場じゃないこと

問題は、為替に限らず相場はレンジだけじゃないということです。トラリピ系はレンジ相場であればいずれ利益を出せる取引です。ところが、持っているポジションの逆方向に一方的に動いた場合、大損害となります。

 

つまり、

  • レンジ相場 → 利益
  • 一方後へ  → 損失

となる可能性が高いわけです。

トラリピの期待値

トラリピの期待値そのものを計算したサイトも見つけました。

EURJPYで100円買、101円売 と指値を入れたところ、100円で買が約定されました。
その後、値が動いて101円の売が執行され1円の利益を得られる確率は、どのくらいでしょうか。
ただし、20日目までとして、EURJPYの標準偏差は15%/年とします。
http://quantstrade.blog.fc2.com/blog-entry-34.html

 この1円の利益を得られる確率は81.5%。なるほど、ここだけ見るとけっこう儲かるように見えます。ところが、1円を得られなかったときの期待値は、-0.815円となります。つまり、合計するとゼロ。

 

トラリピは、81.5%の確率で利益が出るが、出ない18.5%の際は0.815円の損失期待値だということです。たいてい勝って少しだけもうかるけど、失うときは大きく失う。そう、オプションのプット売りと似ています。

 

この計算には、スプレッドや手数料は考慮されていないので、これらを入れると全体として期待値はマイナスになります。

関わる人の誰が儲かるのかを考える

バックテストしたり、細かく期待値を計算しなくても、その投資の期待値がどうかを判断することはできます。「その利益を払っているのは誰か?」を考えるのです。

 

最初に、その投資自体が新たな価値を生んでいるのかを考えます。企業であれば利益という形で価値を生んでいますし、土地はその利用で使用料を生み出します。利益を払っているのは消費者ですね。一方で、金はそのままでは何も生み出しませんし、仮想通貨もそうですね。

 

FXではどうでしょう? スワップポイントがプラスならば、短期的には価値を生んでいると考えてもいいかもしれません。ただしスワップポイントが生まれるもとの金利差は、長期的には為替変動で調整されると言われています。

 

こう考えると、短期のスワップポイントを除けば、FXはゼロサム・ゲームだということがわかります。ゼロサム・ゲームは、スキルや運を除けば期待値はゼロになります。そして手数料によって実質の期待値はマイナスになります。

www.kuzyofire.com

 

ぼくが継続的に行っているFXのスワップアービトラージはどうでしょうか? これも一見ゼロサムゲームに見えます。短期的に利益が出ていても、期待値ではゼロなのではないかと。ここを判断するポイントは、関係者の中に確実に損をしているプレーヤーがいることです。

 

そう、FX事業者ですね。同じ事業者の中であれば、同じ通貨の売りと買いのスワップを合計するとマイナスになります。普通はそうなるはずなのです。ところが、それぞれの業者を変えると売りと買いのスワップ合計がプラスになる場合があるのです。これは、明らかにスワップポイントの値付けに失敗しており、プロモーションなどの理由で意図的にこの値付けにしているということです。つまり損失覚悟。そして、FXスワップアーブの利益は、このFX事業者の損失が源泉になっているわけです。

www.kuzyofire.com

 

このように、「その利益は誰が払っているのか?」を考えると、期待値がプラスになり得るのかどうかを簡単に判断できるようになります。