投資でセミリタイアする九条日記

セミリタイアを実現したサラリーマン。ETF投資を中心に、太陽光投資や不動産投資、オプション、VIX、FX、CFDまで使って資産運用をしています。

なぜ日本人は「ものづくりをする中小企業」が好きなのか

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プロジェクトXじゃあないけれど、日本人は町工場が高い技術力ですごいことを成し遂げる、というのが本当に好きなんだなぁと思います。これは、池井戸潤の小説『陸王』『半沢直樹』シリーズでもそうですね。

 

悪代官 vs. 庶民の構図が根底にある?

この背景には、役所や政治家そして大企業という悪の存在と、対する真面目な中小企業というステレオタイプな見方があるのではないかと感じています。

 

あるブログでこんな表現がされていました。

払った税金が、政治家の料亭に使われたり、官僚の高級車になったりするのは嫌ですよね

 理想論としては、みんなから集めた税金は、政治によって公平な使い方を決定され、役所がそれをみんなのために使うということになっています。ところが、日本のイメージでは、

  • 税金 「お上」が無理やり巻き上げるもの
  • 政治家 税金を私利私欲に使う人
  • 役人  税金を私利私欲に使う人
  • 大企業 政治家や役人と結託して儲ける人

こんなふうになっている感じです。まさに、虐げられる庶民と悪代官の構図です。

日本の生産性を落としているのは中小企業

一方で、中小企業の生産性は低いのが現状です。2018年版中小企業白書によると、中小企業の労働生産性は大企業の半分という状況が続いているのが分かります。

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さらに、国際比較でも中小企業の比率と国全体の生産性がリンクしていることがわかります。『日本人の勝算』からのグラフですが、中小企業に勤める人が減るほど、生産性が高まっています。

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日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

 

なぜ大企業の生産性は高く、中小企業は低いのか? 先ほどの「大企業に虐げられて安く買い叩かれているからだろう」と思う人もいるかもしれません。しかし、生産性に重要な要素のいくつを見ていくと、違った風景が見えてきます。

 

こちらは従業員規模別に見た、業務見直しの取り組みです。従業員数が増えるにつれて全社単位で業務の見直しを行っていることがひと目で分かります。一方で、従業員30人以下の企業では「特段、業務の見直しは行っていない」が20%にものぼります。

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生産性向上に重要なツールの一つ、ITの活用ではどうでしょう? こちらも企業規模が小さくなるとITがぜんぜん使われていないのが分かります*1。電子メールであっても、最小規模企業群は4割以下しか利用していないのです。

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こうしたデータは、中小企業の生産性が低いのは買い叩かれているからというより、生産性向上のための取り組みが進んでいないからだということが分かります。日本の生産性を落としている要因の一つは中小企業だということです。

 

実際、小売であっても、大規模チェーン店が高機能なPOSレジを使って顧客分析を行い、多彩な支払方法に対応するのが普通なのに対し、小規模店舗ではいまだに現金レジで何が売れ筋なのかも勘に頼っている場合が多かったりします。まだままだ生産性向上の余地はあるのです。

大企業への羨ましさもあるが尊敬はされていない

大企業は生産性向上への努力をしっかりやっているはずですが、それでも世間から尊敬の目では見られていません。日本では、額に汗して身体を動かして、安い価格で良いサービスを提供するのが素晴らしいと考えられています。身体を動かす代わりに機械やコンピューターを使い、付加価値の高いサービスを、見合った高価格で販売することは、あまり評価されないのでしょう。

 

池井戸潤の小説は好きでよく読みますが、いつも違和感を持つ点があります。資金繰りに悩む町工場の社長は、大企業からの買収提案にノーと答える点です。小説の中では、常に大企業は悪で、中小企業を食い物にするように書かれていますが、実際は大企業の豊富なノウハウと資金力を使って、中小企業が持つ特許などを広く展開できる力があるはずです。

 

それを断るのは、(本当に大企業が騙そうとしている場合は別として)中小企業の社長が自分の思い通りに経営したいというエゴからのように感じます*2。技術を使って広く世の中に貢献するためにも、社員の給料を上げるためにも、大きな資本の元で展開するのが理にかなっているのにです。

 

小説では大企業は悪として書かれるので、最終的に自主独立でよかったねぇとなるのですが、多くの場合、中小企業が特許を独り占めして世の中にうまく出せないということのほうが多いのではないかと感じることもあります*3

 

日本は労働者の質は高いが、経営者の質が低いとよく言われます。実はその典型例が、ほとんどの中小企業なのではないか。日本人は、中小企業が大好きなので怒られそうですが、そう思ったりします。 

*1:このグラフには問題があって、凡例の大企業の色がグラフの色と一致していません。本文や元データでは正しいのですが

*2:でも自分自身は、エゴのために、自分の思い通りに経営できることを再重視して、中小企業でボチボチやっていきたいと思っています。日本全体のことを考えたら生産性を向上させるべきなんでしょうけど、そもそもそれをいったらセミリタイアなんてしないで、大企業内で専門領域を磨いて成果を上げるべきなんですよね

*3:もちろん、GAFAに買収されてサービスを潰されたスタートアップがたくさんあることからも、巨大企業はうまく新サービスを伸ばせないという批判もあります。それでも、巨大企業の資本とコネクションを活かしたほうが事業をスケールできるのも事実でしょう。それがどのくらいのバランスなのかは資料がなくわかりませんでしたが。