FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

米国株で言われる11種類のセクターとは何か?

 米国株を見ていると「セクター」という言葉をよく聞きます。これは何かというと、S&PとMSCIが共同で作成した「世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」(GICS)のことです。簡単にいうと、産業を11の種類に分類しましょう、というもののようです。

情報通信とヘルスケア、金融で時価総額の半分

 11種類は下記の通りです。たまに分類が変更になるようですが、大枠こんな感じです。

  • エネルギー
  • 生活必需品
  • ヘルスケア
  • 金融
  • 情報技術
  • 公益事業
  • 資本財・サービス
  • 通信
  • 一般消費財・サービス
  • 素材
  • 不動産

ではこの11種類が、S&P500の中でどのくらいの時価総額シェアを持っているかをグラフにしたのが下記です。最大規模なのは「情報通信」セクターです。次に「ヘルスケア」「金融」と続きます。

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SPDRがセクターに対応したETFを用意

各セクターごとにETFを用意しているのがSPDRです。バンガードもほぼ対応するETFを用意しています。SPDRのティッカー命名ルールは「XL」に続いてセクターのイニシャルを付けている感じです。

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上記のデータはYahoo!Finance USからです。セクターごとに、配当利回りが高いところ、ベータが小さいところ、過去5年の平均リターンが大きいところと特徴があります。

 

エネルギーや公益事業、不動産の配当利回りが3%超なのはなんとなくイメージどおりです。公益事業のベータが0.2とたいへん小さく、景気変動に左右されないディフェンシブなセクターだということも分かります。また過去5年で見ると、エネルギーセクターのリターンはマイナスなんですね。

各セクターにはどんな企業が入っているのか?

セクターといっても、そこに属する企業の集合体なわけで、ではどんな企業が入っているのかは重要です。ここでは、セクナー内のシェア4%を超える企業をピックアップしてみました。

XLK:Information Technology

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まずは最もシェアが大きく過去5年のリターンの大きな情報技術セクターです。SPDRでのティッカーはXLK。

 

見ると、Microsft、Apple、Intel、Ciscoといったハイテク企業が並びます。なるほど、こうした会社の躍進がリターンの源泉になっているわけです。ちょっと面白いのは、VISAとMastercardは金融ではなく情報通信セクターに入っています。FinTechの主役となる大企業といった感じでしょうか。

 

上位5社で過半を占めているので、比較的これらの企業の動向に影響されやすいと思われます。

XLV:Health Care

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続いてヘルスケアセクターです。こちらも世界的な大企業が並びますが、上位5社で35%にしかなりません。

 

Johnson & JohnsonとPfizerは消費者向け薬品も出しているので、日本でもおなじみです。UnitedHealthは知らなかったのですが、売上2100億ドルという世界最大のヘルスケア企業だそうです。医療保険事業も行っています。

 

Merckはドイツの化学医薬品メーカー。17世紀まで遡る歴史を持つ医薬品企業最古参というのと、株式の70%をいまだ創業家が保有しているというのが今回調べて驚いた点です。

 

Abbottも巨大な製薬企業です。初のHIV検査薬やヒュドラを持っているとされています。グラフではetcに入ってしまっていますが、上位7位(3.5%)にAbbVieという高配当な医薬品企業があります。このAbbVieはAbbottの新薬事業がスピンアウトしてできた企業です。

 

また上位6位(3.6%)には医療機器メーカーMedtronicがあります。

XLF:Financials

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続いて金融セクターです。どんな銘柄があるのかと思ったら、ウォーレン・バフェットのBerkshire Hathawayが13%を占めていました。金融事業というか投資事業会社という感じでしょうか。

 

2位はJPMorgan Chaseで、投資銀行のJPMorganや商業銀行のJPMorgan Chase Bankを傘下に持つ持株会社です。3位は米国のメジャーな銀行Bank of America、4位は資産規模全米3位のWells Fargoです。

 

ちなみにバフェットのBerkshireは、Bank of Americaの筆頭株主であるとともにWells Fargoの筆頭株主(10%)でもあります。さらにJPMorganにも出資しています。金融セクターはバフェットに牛耳られている感じです。

 

そして5位にやっとCitigroupが登場します。6位には銀行以外となるAmerican Express(2.5%)が登場します。VISAとMastercardは情報通信セクターですが、アメックスは金融セクターなのも面白いところです。

XLC:Communication Services

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XLCは通信セクターです。通信というと携帯電話会社のAT&TやVerizonをイメージしますが、もちろん入っています。ただし、順位は9位と10位。構成のメインとなるのは、GoogleとFacebookです。

 

Google=Alphabetは種類株のClass AとClass Cに分かれており、両方を足すと23%程度を占める最大企業になります。実質4位のActivision Blizzardは、懐かしのゲームメーカーです。こんな大規模になっていたのですね。

 

Comcastは米国のケーブルテレビ企業、Charter CommunicationsもSpectrumブランドで展開するケーブルテレビ企業です。

 

FacebookとGoogleで43%近くを占めており、ボタティリティの高いセクターなのが分かります。携帯電話事業者はディフェンシブ銘柄に考えられがちですが、AT&Tなどはコンテンツ投資を積極化しており、ベータも0.8です。Verizonのベータが0.42なのに比べると、アグレッシブな企業ということでしょう。

XLY:Consumer Discretionary

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XLYは一般消費財セクターです。こちらもイメージはまさにマクドナルドだったのですが、セクタートップはAmazonです。なんと25%を占めています。

 

2位のHome Depotは住宅リフォーム小売りチェーンで、Amazonの脅威を受けず安定した事業を営んでいるようです。

 

グラフではetcに入っているのですが、実は自動車メーカーも一般消費財セクターです。General Motors(GM)が2.2%のシェアで9位、Ford Motorが1.8%のシェアで10位です。時価総額では、直近、TeslaがFordを上回っているのですが、XLYにはTeslaは含まれていません。

XLI:Industrials

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資本財・サービスセクターがXLIです。自動車は入っていませんが、日本でいう製造業のイメージに近い業種ですね。

 

航空機メーカーのBoeing、Union Pacificは米国最大の鉄道会社、自動化機器のHoneywell、United Technologiesは製造系のコングロマリットです。グラフでは3Mの後、etcに入ってしまいましたがGeneral Electric(GE)がシェア3.8%で6位につけています。

XLP:Consumer Staples

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XLPは生活必需品セクターです。日本でも有名なブランドの企業が並んでいます。

 

Procter & Gamble(P&G)はヘルスケア製品のイメージも強いですが生活必需品セクターになります。5位のMondelez International は元クラフトフーヅです。

 

7位のColgate-Palmoliveは、日本では全く馴染みがありませんが、極端に株主還元を進める企業として有名です。石鹸、洗剤、歯磨き粉などの日常生活用品を扱っており、特に新興国で強いとされています。業績は横ばいですが、配当性向50%、さらに自社株買いも積極的で、総還元性向はずっと100%を超えています。株主還元の結果、債務超過状態にありますが、利益やCFなどの業績は安定しています。

XLE:Energy

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XLEはエネルギーセクターです。石油シェアの大部分を寡占する巨大企業を石油メジャーと呼びますが、その中でもスーパーメジャーと呼ばれるのが、Exxon Mobil(米)、Royal Dutch Shell(英欄)、BP(英)、Chevron(米)、Total(仏)、ConocoPhillips(米)の6社です。

 

XLEではこのうち米国籍の企業のExxon Mobil、Chevron、ConocoPhillipsが上位を占めています。また、4位以降はやはり石油関係で以下のようになっています。

  •  EOG Resourcesは石油天然ガス会社
  • Schlumbergerは油田探査
  • Occidental Petroleumはメジャーに次ぐ規模の石油会社
  • Marathon Petroleumも石油会社
  • Phillips 66も石油会社
  • Kinder Morganは天然ガスや石油の輸送・貯蔵会社でものすごく長いパイプラインを所有
  • Valero Energyは精油会社

 XLU:Utilities

 

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XLUは公益事業とされています。NextEra Energyは、再生エネルギー企業で、風力発電で北米最大です。Duke Energyは米国最大の電力会社、Dominion Energyは電力、天然ガスなどのエネルギー企業、Southern Companyも電力会社、Exelonも電力、ガス会社、American Electric Powerも電力会社、Sempra Energyも電力、ガス会社で天然ガスでは米国最大級です。

 

公益事業というのは、つまりは電力会社、ガス会社ということですね。

 

ディフェンシブな業界で、配当利回りも高いことが特徴になります。

 

 XLRE:Real Estate

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XLREは不動産セクターです。ほとんどが税制優遇のあるREIT形式をとっています。

 

シェアトップのAmerican Towerは、ワイヤレス通信や放送用タワーの保有、運営、開発を行うREITです。Simon Propertyは、ショッピングセンターやアウトレットセンター、コミュニティセンターなどを所有、開発、管理。Crown Castleも、無線通信タワーを4万塔以上保有。Prologisは、物流施設を専門に開発、所有、運営しています。

 

Equinixはデータセンターの運営企業です。Public Storageはセルフストレージを運営する企業。日本でいうトランクルームですね。

 

日本では、REITは居住用マンションかオフィス用が主流ですが、米国ではさまざまな領域に特化したREITが数多くあることが分かります。

XLB:Materials 

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 XLBは素材セクターです。比率トップのLinde PLCは、ドイツのLide AGと米国のPraxairが経営統合した化学工業企業です。本社は英国にあります。

 

2位のDowDuPontは、Dow Chemical とDu Pontが2017年に経営統合した総合化化学メーカーです。Ecolabは世界最大の清掃、衛生製品メーカーで、節水や浄水分野でも成長しています。Air Products & Chemicalsは産業用ガスおよび化学品の製造販売を手がけています。

 

Dowは、DowDuPontから2019年に分離した素材科学の企業です。DowDuPontは今後3社に分割する計画で、Dowはその1社目になります。

 

Sherwin-Williamsは自動車補修用塗料の会社、PPGはガラスメーカー、化学メーカー、LyondellBasellは総合科学メーカーになります。

 

Newmont Goldcorpは、産金会社で米Newmontがカナダの競合Goldcorpを2019年に買収して生まれました。世界最大の産金会社になります。

セクター循環投資アイデア

 さて、各セクターとそのに含まれる主な企業を紹介してきました。ではこのセクターごとのETFをどう活用したらいいのでしょうか? 1つあるのは、各セクターは景気の状況によって、強さが変わってくることです。

 

下記のように、景気が好調のときは、工業株やハイテク株が伸びますが、逆に景気が悪いときは一般消費財や公共事業などが堅調です。金利状況によっても、セクターごとに得意不得意が変わります。

 

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FRBの利上げで投資戦略はどう変更されるべきか? - Market Hack

 

現在は、景気が好調で低金利の状況でしょうか。そのため、ハイテク株や金融株は好調です。今後、金利が上昇すると、資本財や素材、そしてエネルギーに移り変わっていくことが予想されます。