そろそろ株主総会のシーズンです。3月末に決算が終わった企業が5月には決算発表を行い、6月には株主総会を開く流れですね。この株主総会、実は資本主義がどんな仕組みで動いているのかを知るのに最適なのです。
株主総会に行くと?
株主総会に行くと、だいたいどこでも流れは似ています。最初に昨年1年の業績がどうだったのかという報告が経営陣から行われ、続いて今後の方針説明、Q&Aがあって、最後に役員選任や利益処分法などの議案について、株主からの投票が行われます。
正直、業績説明や方針説明はすでにIRのページに書かれていることも多く、多分に儀式的なものです。さらに、議案についても決定を左右する大株主との根回しはたいてい終わっており、
「賛成の方は拍手をお願いします」
「パチパチパチ」
「賛成多数によって本議案は可決されました」
という感じです。
質疑応答が株主総会のキモ
ではなぜこんな会にわざわざ行くのかというと、質疑応答があるからです。社長を中心とした経営陣に、直接質問をぶつけられるわけです。
投資家は企業の短期・長期の利益に関心を持っているので、業績が好調でこのまま進めてくれればいいときには、質疑応答も些細な話になります。ところが業績不調だったり、将来に不安があると厳しい質問が続きます。
経営陣は質問に対して、のらりくらりとかわしたり、想定問答を読み上げたり、開き直ったり、がんばって真剣に答えようとしたりするわけです。でも、株主が真摯に礼儀正しく聞く限り、経営陣が株主質問をバカにするようなことはありません。
株主は会社のオーナーであり、社長に経営を委任している立場だからです。
社長のボスは株主
社長のボスは株主。この資本主義の重要な仕組みを肌で感じられるのが株主総会なのです。
普通に会社員として働いていると、上司は偉い人で言うことは絶対(に近い)。社長なんて雲の上、という人が多いと思います。素直に社長の権力を当然のものとして受け入れてしまうんですね。ところが、社長が社長でいるには理由があるのです。
社長はなぜ社長でいられるのかというと、株主が選んで委任しているからです。社長の方針に異を唱えるのも株主の権利ですし、社長の方針が気に入らないなら反対票を投じることもできます。
株主の利益のために、業績を伸ばしてしっかり利益を稼ぐのが社長の役目。それを監視して、自分は偉いなどと舞い上がっていないか、監視するのが年に一度の株主総会の役割でもあります。
よしよし。そのまま頑張ってくれたまえ
実際のところ、株式会社というのは株主の多数決で物事を決め、議決権は株数によって決まります。大した株数を持たない少数株主にとっては、なんら意思決定に関与できないのが実態です。法律でも、少数株主が行えることはごく僅かになっています。
それでも、上場企業であるということは、そうした少数株主を受け入れるという宣言であり、だからこそ質疑応答では少数株主の声をしっかりと聞かなくてはいけません。そもそも、自分のやりたいように経営したいなら、上場などするべきではないのです。
そんなわけで、多分に道義的なところではありますが、株主はその企業のオーナーの一人として、経営陣に「もっと頑張れ!」とか「よしよし。そのままやってくれ」とか、言う権利があるわけです。
株主意見を気にする社長と気にしない社長
実際、少数株主に法的な権利がほとんどないとはいえ、面と向かって社長に質問して答えてもらうというのは大きな効果を発揮します。人間誰しも、オープンな場で責められるのは嫌なものですから。
だから、株主総会では「どんな質問をされるんだろう」「厳しい質問が来たら嫌だな」と思っている社長も多いものです。そして、こうした場で言われたことは、意外と社長に響いているものです。何しろ、年に1回の上司との面談なのですから。
もちろん、開き直って何をいわれようと流して気にもしないという社長もいます。実際、3分の2以上の株を支配していれば、たいていのことは思うようにできるわけで、これはこれで合理的な態度です。ただし、こういう社長は株主からは見放されますね。
株主総会は、その社長が株主のために経営しているのか、自らの栄華のために経営しているのかを見極める場でもあるわけです。
株主総会を経験すると会社の見方が変わる
そんなわけで、日本企業の株式を持っていたら、ぜひ一度株主総会に顔を出してみることをおすすめします。そして必ず質疑応答で質問をしたり、意見をぶつけてみることです。質疑応答では名前や所属を言う必要もありません。若くても年寄りでも関係なく扱ってもらえます。
何しろあなたはその会社のオーナーの一人。社長に経営を委任している立場なのですから。