FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

公務員にはコスト削減のインセンティブはあるのか?

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先日、児童手当の継続確認書類が来ました。書類に署名して必要な書類を添付して郵送です。昨今、本人確認でさえeKYCという形でネット上で完了する仕組みが動いているのに、どうして役所の手続きは紙ベース、郵送ベースなのでしょう? 

 

これを受け取った側が一つ一つ目視確認して、ハンコを押して、また上司が確認して……ということをやっているかと思うと、本当に無駄なコストだなと思います。

なぜ電子化できないのか?

なぜ紙ベースで処理しているのかといえば、おそらく法律がそうなっているからです。自筆の署名が必要ということなのでしょう。ただし、それは法律を変えればいいことです。金融系の本人確認が、業界の要望で電子化できたのと同じことです。

 

電子化すれば、確認の多くが自動化できます。人手不足がいわれるなか、人件費を大きく下げられるでしょう。ネット環境を持っていない人はどうすればいいかって? そういう人だけに郵送してもいいでしょうし、プリントアウトして送付でもいいでしょう。全員に郵送はするものの、ネットでの手続きを選択可能にすることもできるはずです。

 

ただし役所は、そうした法律変更を頑張ることはないでしょう。そうすることのメリットがないからです。

役所はコストを下げたいのか、上げたいのか

よくよく考えると、役所はコストを下げるインセンティブはないようです。これまで役所のコスト削減は、国民の声として政治家を経由して、トップダウンで行われてきました。でも本来あるべきは、現場からのコスト削減アイデアの提案と、実行です。

 

ところが、役所の現場にはそういうモチベーションはないようです。下記は、大阪市人事室が公開している平成27年度の人事評価基準です。

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こうした人事評価基準を公開して、評価していることはいいことだと思います。ところが内容がやっぱりお役所なんですね。いずれも定性的な話で終わっています。役所は完全なコストセンターなので、売上に相当する項目がないのはわかるにしても、費用に関する項目もありません。

 

唯一近いのが14項目中の1つに挙げられている「業務改善・効率化」です。

  • 業務の目的と求められる成果水準を踏まえ、人的資源や予算、時間等の経営資源を有効に活用していたか
  • 効率的に業務を遂行し、部下職員の時間外勤務の縮減に努めていたか
  • 業務効率、費用対効果、市民サービスの向上等の観点から、業務・組織の改善・改革に取り組んでいたか

残業削減については触れていますが、コスト削減は評価項目にないんですね。

予算を増やすのが役所の仕事

想像ですが、コスト削減を公約に当選した政治家はともかく、役所の現場にはコストを削減するという意識はなさそうです。削減することで仕事はたいへんになりますが、それを評価してはもらえないからです。

 

何かをするとなったら、そのために必要な予算を獲得するところから役所の仕事は始まります。そしてその予算を「有効活用」はしようとしても、支出を少なくしようということはないでしょう。それは「余らせる」ということになり、翌年からはその分予算が減ってしまうからです。

 

多くの予算を獲得することは、役所内の各組織にとって重要なミッションのようです。要は予算のぶんどり合いですね。少しでも自分のところに持ってこようというのが仕事であり、ここには強くインセンティブが働きます。

 

部下の数が増えるにしても、外注に出すにしても、持っている予算執行権限は強大な権力です。この額を自ら減らそうなんて思う役人がいるはずもありません。こうなるのがコストセンターの宿命なのです。

民間ならどうなるか?

仮にトップダウンでコスト削減命令が出ても、いろいろな理由をつけて反対するでしょう。それはそうです。正確性が落ちる、時間がかかり利用者に迷惑がかかる、etc。いろいろと理由は思い浮かびます。

 

これが民間ならどうでしょう? コストダウンはそのまま利益に直結します。売上の増大とコストダウンは事業の両輪です。クオリティが下がるなんて言い訳は許されません。クオリティを保ったままコストを下げる方法を考えることが求められます。それができなければ、競合に仕事を奪われてしまうからです。

 

そう、競争があること。それが市場で複数の企業が競い合う最大のメリットであり、資本主義の根幹なわけです。

 

端的にいえば、役所は独占事業だからコストセンターでいられるのであり、競争相手がいないから、コストダウンのインセンティブが働かないわけです。

 

おそらく冒頭の書類事務も、入札を経て民間に出されているのでしょう。しかし、その入札では仕様は決められており、紙ではなく電子化しましょうなんて提案を、下請けが出せるわけもありません。そして役所側は根本的なコスト削減のインセンティブがないのです。

縦割り行政の弊害か

児童手当のような補助金は、なかなか民営化が難しいものです。業務委託はできても、補助金事業自体を民営化するというのは想像がつきにくいものです。

 

ではどうするか? たびたび言われるのは、納税とセットで、税額控除すればいいというアイデアです。毎年こまごまとした控除を経て、納税額が決まっています。対象となる人については、その額を税額控除すれば、それで済んでしまうでしょう。

 

ベーシックインカムの実現方法としても、マイナスの所得税という形で実現するのが最も事務コストが小さいとよく言われています。

 

ただし、それが現実的ではないのもよくわかります。管轄が違うからです。

 

たとえば児童手当は、厚生労働省の管轄です。納税は国税庁の管轄ですね。厚生労働省は、自分のところの予算としてこの手当のための予算をゲットしたわけです。それを理由もなく手放すはずはありません。各省で共通化して補助金を出すようにすれば事務コストが削減できるとしても、それは縦割り行政の中では優先度低となるわけです。

 

いやはや、税金の中でも優遇税制が多くて嫌になるのに、さらに各省が補助金です。どちらももらう国民はうれしいので文句を言いませんが、そこで重複してかかってくるコストは結局のところ国民が負担しているわけです。まったくね。