1億円あったらどう資産運用するか? という記事がありました。これに乗っかって、ぼくも1億円あったときの投資方法を考えてみます。
当然前提によって違う
当然、今自分がどんなステージで、今後どうしたいのか? によって解は変わってきます。ここでは、将来セミリタイア/アーリーリタイアしたいという前提で、年代別に考えてみます。
若い内と中年になってからでは、1億円の意味が違うからです。
40代〜50代の場合は1億円を年間支出で割ってみる
40〜50代の人で、セミリタイアやアーリーリタイアを考えているなら、今がそのときです。健康寿命は残り多くはありません。厚生労働省のデータから、残りの健康寿命を見てみます。
- 40歳の人 残り40年(95%信頼区間)
- 45歳の人 残り35年(95%信頼区間)
- 50歳の人 残り30年(95%信頼区間)
- 55歳の人 残り25年(95%信頼区間)
つまり、男性の場合、だいたい80歳が健康寿命ということです。不健康な期間は95%信頼期間で1.3年〜1.5年でした。意外に短いですね。
この残りの寿命に対して、徐々に取り崩していった場合、1億円が持つでしょうか?
- 40歳の人 残り40年 年250万円
- 45歳の人 残り35年 年285万円
- 50歳の人 残り30年 年333万円
- 55歳の人 残り25年 年400万円
単純に資産を取り崩していくと、上記のような生活費が使えることになります。年金はざっくりいうと、国民年金が年77万円、厚生年金が100〜200万円程度。しかもこれは65歳以降となります。
生活費にもよりますが、たぶんこれでは足りないので、3%運用したとしてみましょう*1。
- 40歳の人 残り40年 年432万円
- 45歳の人 残り35年 年465万円
- 50歳の人 残り30年 年510万円
- 55歳の人 残り25年 年574万円
多少増加しました。これならば、生活できそうという人も多そうです。足りなければ、セミリタイアにして差額分を稼げばいいことになります。ちなみに、5%運用するとどうなるかが下記になります。
- 40歳の人 残り40年 年582万円
- 45歳の人 残り35年 年610万円
- 50歳の人 残り30年 年650万円
- 55歳の人 残り25年 年709万円
さすがに5%運用するとけっこう額が増えます。ただし、利回りを増やすということはその分リスクが増加するということであり、場合によっては運用計画が破綻する可能性があります。3%程度が順当な想定利回りになるでしょう。
こう見ると、1億円では足りないと考える人もけっこういそうです。
30代の場合は出世可能性を考える
30代の場合は、かなりのリスクを負って高利回りを予定しないと、リタイアには厳しくなります。リタイアしてもかなり生活費を切り詰めたものになるでしょう。
そこで考えなくてはいけないのは、出世可能性です。まだまだ人的資本の額が大きいため、あと5年、10年働くことで1億円を保ったまま、収入を増加させることが可能です。普通にいけば、1億円の運用益だけでなく、貯蓄ができるでしょう。
まだリスクの取れる年齢なので5%の運用利回り想定で計算すると、5年で1億2700万円に増加します。10年運用すれば1億6200万円までいきます。こうして40歳になったときにリタイアするなら、健康寿命内の毎年、704万円(3%運用)の取り崩しが可能になります。
10年間、単に1億円を運用するだけでなく、年間100万円の貯蓄をするとどうなるでしょう? 資産はなんと1億7500万円まで増加し、40歳でリタイアしても759万円の取り崩しが可能になります。
同様に、30歳から15年間貯蓄と運用を行い、45歳でリタイアならば、資産は2億を超え、取り崩し可能額は年間1000万円を超えます。これならまぁ余裕ですね。
20代ならば出世を考える
もし20代ならば、出世を考えましょう。違う言い方をすれば、仕事のパフォーマンスを上げることにフォーカスしましょう。成果を上げて、給料が増加することが最大のリターンをもたらすからです。
そのためには、1億円を5%運用することに加え、取り崩して自己投資があり得ます。ただし、どんなことに使うのが最も自己投資として有効かは、ぼくにはちょっと分かりません。
成果が昇給に結びつく企業もあれば、年功序列的昇給のほうが大きい会社もあります。人気なのは英語などの資格取得ですが、英語を話せてもそれを活用できない仕事もたくさんあります。プログラミングや会計知識も有用ですが、それが生きるかどうかは仕事によって違うからです。
人生の満足度を上げるという意味では、会社の近くに引っ越すのもアリです。通勤時間分を仕事に当てることもできますね。
お勧め運用は、全世界インデックス+債券または現金
では3%や5%で運用するために、どのような資産に投資するのがいいでしょうか? 全世界インデックスへの運用が基本だと思います。MSCI ACWIをベンチマークとする投資信託や、VTなどのETFを買えば終わりです。
よく一気に全額を投資しないで毎月少しずつ一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」が重要などと言われることがあります。でもこれは定率で積み立てるのに比べて定額が有利という意味です。すでに投資できる資金があるのに、これを小出しにすることはデメリットしかありません。
現在の株価が割安なのか割高なのかを判断して買い付けを決めるのは、相場が読めると思っているということです。自分には相場はわからない。そう考えるのが合理的です。
このやり方をした場合、リスクもありますが、長期で見ると7%程度のリターンが期待できることになります。
3%や5%での運用の場合、ここに債券ETFや現金を組み合わせることになります。半分を現金で持てば、ポートフォリオ全体としては3.5%程度の期待リターンになります。リスクも半分です。現金の代わりに、BNDなどの債券ETFを買う手もあります。配当利回が2〜3%程度あるので、少し期待リターンが上ります。また、債券が株価と逆の動きをするようなら、ポートフォリオのリスクを減らす効果もあります。
40歳以下なら、全額をこのポートフォリオにして、個別株やFX、仮想通貨などのデリバティブは避けるべきです。それはリスクがどうというよりも、資産のことは忘れて仕事に打ち込んだほうがパフォーマンスが上がるからです。
40代以降ならば、もし資産運用に関心があるなら5%程度をトレードに近いものに充ててみてもいいかもしれません。資産があると、どうしても人は勝負をしたくなるものだからです。そこで資産の大部分を失わないよう、5%程度に限定して、いろいろな投資商品を試してみれば、勉強ができるだけでなく、本体で売買してしまって大やけどをおわずに済むでしょう。
1億円の投資法としては、極めて普通でつまらなかったかもしれません。 でも資産運用には王道がないというのは事実です。トレードで損失を作ったり無駄な手数料を払わないこと。株価が下落しても慌てて売らないこと。それが重要なことです。
【投資方法に関する根本的な考え方です】
*1:この計算は、ExcelのPMT関数で簡単に行なえます。FP試験に出てくる6つの係数とExcelのFV、PV、PMT関数の関係を参照のこと