正月休みなので昨年に引き続き、19年1年間の読書記録を振り返ってみたいと思います。数えてみたら、19年に読了したのは再読したものも含めて92冊でした。18年の6割にも満たないのですが、重い本軽い本とありますので、冊数にそれほどこだわらないようにします。
- 投資本:『ウォール街のモメンタムウォーカー』
- 投資本:『エンダウメント投資戦略』
- 投資本:『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』
- 投資本:『株式投資』『株式投資の未来』
- 年金:『人生100年時代の年金戦略』
- トレーダー:『松崎美子のロンドンFX』『プロになるためのデイトレード入門』
- 数学的に:『科学で勝負の先を読む』
- 経済って?:『幻想の経済成長』『資本主義と自由』
- 心に残った非投資本:『ポルシェ太郎』『トヨトミの野望』『溶ける』『マーダーボット・ダイアリー』
投資本:『ウォール街のモメンタムウォーカー』
まずは投資本から。 この『ウォール街のモメンタムウォーカー』は、名著『ランダム・ウォーカー』のもじり邦題*1ながら、トップレベルのアノマリーといわれるモメンタムを活かす投資手法を紹介している一冊でした。
インデックス置きっぱなしとは別に、こうしたアノマリーにベットする投資手法にトライするのもありだと感じさせます。
投資本:『エンダウメント投資戦略』
このエンダウメント投資戦略は、インデックスを買って放っておくのに対して、市場平均を超えるリターンを出すにはどうしたらいいのかのヒントを示します。それは、未公開株(PE、プライベートエクイティ)であり、ヘッジファンドであり、インフラファンドです。
19年の年末、ネット証券各社の手数料値下げのトレンドが鮮明になりました。これはつまり、もう上場株式のようにどこで誰から買っても同じ商品はすでにコモディティだということです。コモディティだから、証券会社には付加価値が付けられません。
一方で、PEやヘッジファンドなどは、買えるところも買える人も限られています。これらが買えるというだけで、その証券会社には価値があるということになっていくでしょう。
投資本:『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』
これは昨年読んだ中でもベスト投資本かもしれません。年金基金のように金融理論に忠実に、分散によるアセットアロケーションを基本に置きながら、アノマリーを活かして個人が機関投資家に勝つにはどうしたらよいかを、理論立てて、かつ物語風に書き記します。
一冊目で挙げたモメンタムが短期のアノマリーならば、ミーン・リバーサル(平均回帰)アノマリー、つまりバリュー投資こそが個人投資家の武器だといいます。資産がすべて上がっている今だからこそ、ミーン・リバーサルに注目しておきたいと思います。
世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方 賢明なる投資家のためのパーソナル・ファイナンス読本
- 作者:ジョン・ケイ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
投資本:『株式投資』『株式投資の未来』
そのデータに疑義がつくことも多いシーゲル教授ですが、その主張は説得力があります。いろいろと有名なフレーズや投資方針がありますが、いまのぼくに響いた点でいうと、
- やっぱり株式が長期的に最高の投資先
- 税金的に損でも高配当には一理あり
- 高成長企業の成長は、すでに株価に織り込まれている
といったあたりでしょうか。いろいろとアセットアロケーションについてのヒントをもらえる2冊だと思います。必読書の1つでしょう。
年金:『人生100年時代の年金戦略』
ちょっと政府広報的なところもありますが、年金というのをどう捉えたらいいのかをしっかり解説してくれます。年金がもらえなくなるとか、年金だけでは足りないとかいろいろな風説がありますが、突き詰めて考えると、年金というのは「長生き保険」です。
セミリタイアはもちろん、誰でもいつかはリタイアするわけですが、その時の最大のリスクは実は「長生き」。なので、損とか得とかではなく、長生きしてしまった場合に備えて、どううまく年金を活用したらいいのかを考えておくことが重要になります。
トレーダー:『松崎美子のロンドンFX』『プロになるためのデイトレード入門』
トレーディングは下手ですし、トレーディングで勝てるとも思っていないのですが、トレードをする人たちがどんな考え方で、どんな手法で投資しているのかを、垣間見える本です。
昔から「チャート分析」というのを非合理的だと思って、勉強も避けてきたのですが、これらの本を読んでちょっと考えが変わりました。要は多くのトレーダーが勝負をしている中で、ほかの人がどう考えて取引しているのかを見定めて、その裏をかくのがトレーディングなんですね。
サポートラインとかレジスタンスラインとか、要は多くのトレーダーが気にしているから意味を持つ。そう考えると、チャート分析の意味も見えてきます。なにか材料が出てくると、それをほかのトレーダーはどう捉えるのか。そこを想像して、その波に乗るというのもトレーディングです。
いわゆるインデックス系のアセットアロケーションを突き詰めるのとは違うし、バリュー投資家のように業績や財務を分析するのとも違う、1つの投資法だということが理解できます。
プロになるためのデイトレード入門 1巻 板読みと歩み値を極めてライントレードの精度をあげる編
- 作者:サンチャゴ
- 出版社/メーカー: サンチャゴ
- 発売日: 2014/02/08
- メディア: Kindle版
数学的に:『科学で勝負の先を読む』
データをもとに科学で将来を予測するというと、すぐにビッグデータだとかAIだとかの話を想像して、自分には理解できないと思いがちですが、実はそんなことはありません。本書は、数式なしで、どうやって未来を予測するかを具体的な例に基づいて紹介しています。
題材も身近で、「じゃんけん」「宝くじ」「テニスのサーブ」「野球とフットボール」「パスワード」「偽造された数字」「住宅価格」そして、もちろん「株式市場」です。
株式市場についていえば、「株価はつまるところ企業の収益によって決まる」という誰もが当然という前提を出発点に、しかしそれにしては株価の変動が大きすぎるというアノマリーについて分析が始まります。今回改めてざっと再読しましたが、たいへん興味深い内容だったので、あとで別途記事にもしたいと思います。
科学で勝負の先を読む -投資からテニスまで先を読むため・読まれないための実践ガイド-
- 作者:ウィリアム・パウンドストーン
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2014/12/18
- メディア: 単行本
経済って?:『幻想の経済成長』『資本主義と自由』
昨今経済といえば、それはGDPのことを指します。いろいろな指標がありますが、それらは最終的に1つの数字としてGDPにつながります。でもGDPって一体何で、本当に意味があるのか? 数年前にそのものズバリの『GDP』という本を読みましたが、こちらの『幻想の経済成長』はGDPの歴史から始まり、その問題点、解決法まで網羅したジャーナリストによる一冊です。
もう一冊の『資本主義と自由』は、リバタリアンの精神的支柱であるミルトン・フリードマンの代表作です。もう何年も前に『選択の自由』を読んだのですが、19年はさらに深くフリードマンを読みました。
果たしてリバタリアニズム的な自由資本主義が理想的な社会なのかは分かりません。それでも、特に日本はこの数十年でどんどん自由資本主義の考え方が浸透してきていると思います。それを極端に推し進めたのがリバタリアニズム。なんでも民営化すべきだし、医師免許さえいらないと説くフリードマンの言説から読み取れるものは多いと思います。
心に残った非投資本:『ポルシェ太郎』『トヨトミの野望』『溶ける』『マーダーボット・ダイアリー』
羽田圭介といえばベストセラー作家ですが、今回の『ポルシェ太郎』はなぜか心に残りました。ステータスとしてのクルマに惹かれていく主人公の太郎。裏社会で膨大なお金を生み出す反社会的な組織に憧れる気持ち。個人的には、ないないと思いながらも、こうした気持ちは理解できます。
まさに非日常。そうした特殊なシチュエーションを描くのが、羽田圭介はうまいのではないかと思い始めました。ちなみに羽田圭介は「投資するベストセラー作家」としても有名です。
もう一つは『トヨトミの野望』。実在の愛知の自動車メーカーの経営陣を描いた問題作ですが、これがまた面白い。こういう企業ってあるよね、と企業の経営に触れたことのある人なら実感をもって読めると思います。続編も出ました。こちらは今年読みたいと思います。
同じ経営者でも、個人的にバクチにのめり込んで有罪となってしまった大王製紙会長の自伝が『溶ける』です。言い訳と自慢たっぷりの一冊ですが、数百億円をかけるギャンブル、しかもテクニックなし完全に偶然というギャンブルにのめり込む様は、鬼気迫るものがありました。
ちなみにSFの当たりは『マーダーボット・ダイアリー』です。主人公の護衛ロボットが日記風に日常を語るという視点が面白く、いささかご都合主義的なところもありますが、戦闘シーンをはじめガジェットも盛りだくさん。人間とは何か? という古典的テーマを描き出しながら、最近はロボットとかAIは異質なものではなくて、人間の隣にある存在だよね、という感じをうまく描いています。
主人公のロボットが密航するにあたり、宇宙船のAIに「ダウンロードしたドラマをあげるからタダで乗せて」と交渉して、貨物扱いで乗り込む。そんな世界なわけです。
さてこうして昨年1年間の読書を振り返ると、読みたい本は多いのに、1年はあっという間だとしみじみと感じます。最近は「積ん読」の代わりにAmazonのウィッシュリストに入れるようにしているのですが、その中だけでも231件も!*2しかも、絶版になってしまい数万円の値付けがされている中古本になっているのを見ると、「積ん読」のほうがよかったかと思ったりもします。2020年は少なくとも、ウィッシュリストの増える速度よりも読む速度のほうを上げていきたいものです。