FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

なぜ日本は「安い国」になったのか

昨今、「安くなった日本」という記事を目にすることが増えました。

www.newsweekjapan.jp

モノが安い国、日本

日本に観光客が増加しているのは、おもてなし云々が理由ではなく、単に日本のすべてが安いからではないか。こうした内容の記事です。

www.news-postseven.com

では日本の物価は本当に安いのでしょうか? 下記は2015年を100とした日本の消費者物価推移です。

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日本の消費者物価の推移

これを見ると、90年代後半からほとんど物価が上がっていないのが分かります。別に安くなっていないじゃん? と見えがちですが、諸外国と比較してみると風景が変わってきます。下記は、同時期のアメリカの消費者物価指数の推移です。

 

基準年も違うので数値で比較はできませんが、90年代前半から比較すると現在は約2倍になっていることが分かります。これが海外から見て日本が「安い国」になっている原因です。

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給料も安い国、日本

物価が安いだけでなく、給料も安いというのが日本です。下記は、全労連が出している実質賃金指数の推移です。世界各国で順調に賃金が増加しているのに対して、日本は下落していることが分かります。

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全労連 実質賃金指数の国際比較

まぁ物価が安いのだから、そこで生活する人たちの賃金も上がらないというのは分かりますね。

本来は為替で調整されるはずが。。。

しかし、このように一国の物価が安く、給料も安いとなったら、本来は為替で調整されるはずです。つまり、円高が進行することで、国際的に見たら似たような水準になるはずなのです。

 

そこで、今度は購買力平価を見てみます。これは、ある国の自国だけ購買力が、他の国でも同じ水準になるように為替が調整されるという仮説です。購買力平価仮説といいます。

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これを見ると、消費者物価も企業物価も下がり続けているのに、為替は下がらず、第二次安倍内閣のスタートとともに円安方向に動いていることが分かります。

 

そう、この円安の進行が、「日本が安い国」になってしまった原因ですね。

米国株投資が儲かった理由

この観点で見ると、ここ10年ほど、米国株投資が儲かった理由が分かります。ドル建てでも米国株は上昇したのですが、本来はインフレ分を差し引いて評価しなくてはなりません。米国株が6%上昇したとしても、インフレが2%だったら、差し引き4%の成長だということです。

 

ところが日本人からすると風景が変わります。為替が大きく変わらず、それどころが円安になったからです。

 

本来、インフレ国とデフレ国の為替は、インフレ国の価値が下落することで調整されます。ところが、米国でインフレが続いているのに、円高にならずにある程度通貨は安定していました。ということは、米国株高のメリットに加えて、本来はネガティブになるはずの通貨でもメリットが出てしまった可能性があるわけです。

 

 以前、新興国債券のリスクの記事でも書いたように、利回りの高い通貨での投資は、為替が悪化することで長期的には相殺されます。

www.kuzyofire.com

これと同じことが、高金利通貨である米ドルとの間でも起きているというわけです。この無理矢理な円安がいつまでも続くわけはなく、どこかのタイミングで普通に円は100円を切るでしょう。2000年代後半には100円を切って「円高」が叫ばれましたが、当時から比べると同じ100円でも、遥かに現在は円安だということです。

現在のドル円為替は適正か?

一方で、購買力平価自体は一つの仮説にすぎません。ほかのさまざまな要素を盛り込んで、現在のドル円為替が適正かどうかをさまざまな機関が推計しています。

 

下記は、2018年にBloomberg Economicsが発行したレポート「Finding Fair Value」のドル円為替の適正レートです。

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これを見ると、09年以降のリーマンショックの前は、円は割安であり、リーマンショックから13年にかけては割高、そしてアベノミクス以降現在に至るまでは割安から適正だということになります。

 

いやぁ為替は難しい。ただし少なくとも現在のドル円レートが適正ならば、円建てではなくドル建てでの投資は、米ドルのインフレの影響を受けることなく絶対価格の値上がりを享受できるという意味でも効果が大きいものだといえそうです。
 

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