優待クロスを手掛けていると日興証券の強さが目立ちます。信用取引手数料が無料で、一般信用の期間も長く、金利も1.4%。諸経費もかからず、在庫が豊富だからです。でも多くの人がこれを狙って早くから信用売を行うため、早期に在庫が切れてしまう傾向にありました。
そこでふと思ったのが楽天証券の一般信用長期です。信用売期限は無期限で、金利は1.1%と日興証券よりも優位。一ヶ月経過ごとに100株で110円の諸経費がかかりますが、信用取引手数料は大口優遇を獲得すれば無料です。これはもしかして、日興証券より全体に有利なのでは?
2日から90日までコストを計算してみた
そこで、貸株料その他のコストについて、2日分から90日分までコストを計算してみました。100株単元で50万円の場合の試算です。ここには一ヶ月ごとの110円と、買い(制度信用→現引き、いちにち信用→現引き)のコストも入れています。楽天は大口優遇前提です。
金利は、日興証券の1.4%に対して楽天証券は1.1%と有利。ただし1ヶ月ごとの110円の管理手数料があります。それでも、計算してみると、管理手数料があっても楽天がコストで常に有利にあることが分かりました。
差分をグラフにしてみると、こんな感じです。多いときで130〜150円ほど楽天のほうがお得になるようです(単元50万円銘柄の計算)。
しかし日興証券には裏技が
でも話はここで終わりません。日興証券には、一般信用売りの「週末まで」注文があるからです。例えば金曜の夜に信用売注文を「週末まで」で入れれば、次の金曜日まで注文を保留できます。翌金曜の段階で約定させればいいのです。
楽天証券の場合、金曜夜に入れた注文は週明けの月曜日には約定してしまいます。つまり、月、火、水、木の4日分、日興証券はコストを抑えることができるわけです。
この最良のタイミング、金曜夜に注文を入れた場合を「日興ミニマム」コストとして、再びグラフ化してみます。
いやぁ、いい勝負になりました。日数ごとにおいかけっこしていて拮抗しています。
楽天の管理手数料は固定額なので
でもこの試算には落とし穴もあります。楽天証券で1カ月ごとにかかる管理手数料は、1株あたり11銭。100株で11円という水準ですが、最低110円、最大1100円となっています。
つまり単元取引額が小さくなるほど管理手数料が利回りに悪影響を与え、逆に額が大きい銘柄の場合はほとんど利回りに影響を与えません。下記は100株で10万円の銘柄の場合の手数料比較です。最低110円が効いて、楽天コストが割高になります。
逆に100株で100万円の銘柄はどうでしょうか。下記のように、管理手数料はほぼ誤差となり、ほとんどの場合、日興証券のほうがコスト高くつくことになります。
最初に挙げた例の単元50万円というのは、日興と楽天のコストがだいたいバランスするあたりになるわけです。ざっくりいって、50万円以下なら日興有利、50万円以上なら楽天有利となります。
とはいえ重要なのは在庫
そうはいっても、楽天無期限や日興証券で残り20日などで在庫が残っているのは、あまり内容のよくない優待銘柄ではあります。この比較が意味を持つのは、
- 31日前の楽天管理手数料110円がかかるタイミングで、どちらを選ぶか
といったときでしょう。
それでも、かなり日数がある場合で、日興証券の「週末まで指値」を使わなくても、楽天証券がコスト的に頑張っていることが分かりました。ただし、これは大口優遇を獲得して信用取引手数料が無料になっていることを前提としていますので、ご注意を。