日本時間2月4日朝にGoogleが決算を発表し、GAFA各社の決算が出揃いました。これを機に、各社の決算状況をまとめてみたいと思います。
明暗分けた決算直後の株価
まずは株価です。決算直後、大きく上昇したのAmazon、逆に大きく下げたのはFacebookでした。軽い上げがApple、軽い下げがGoogleです。
各社報道では、売上が予想を下回ったとか、成長率が予想を下回ったとか、いろいろと言われていますが、明確なところは分からないですね。
2020年に入ってからのGAFA各社の株価の変化は、次の通りで、Facebookが決算を機に大きく下落して、今年の上げ分を失ってしまったのが分かります。
- Amazon +8%
- Apple +6.2%
- Google +5.6%
- Facebook +0.0%
売上を比較する
ではGAFA各社の財務諸表を簡単に見ていきます。まずは売上です。2005年からの15年について推移を見ます。なるほど、Appleの売上は高水準で推移、Amazonはこの数年で急速に増加しました。Google(Alpahabet)は安定した伸び、Facebookは安定はしているものの、規模でほかに大きく差が付いています。
売上の伸び率はどうでしょうか。まずはGoogleです。四半期ごとの売上の伸びは対前年比で20%前後と安定しています。売上15兆円を超える規模で対前年比20%の伸び。恐るべし、です。
続いては、Appleです。こちらは売上こそ26超円を超える規模ですが、2013年(iPhone 5sのころ)から成長率が落ちているのが分かります。2016年は売上がマイナス成長でした。19年10-12月期は約9%成長しましたが、安定高成長企業ではもはやありません。
そしてFacebook。成長率のグラフは右肩下がりですが、もともとが対前年比100%以上というすごさ。19年10-12月期は落ちたといっても、24.64%の成長でした。
最後はAmazonです。Appleに並ぶ売上規模を持つAmazonですが、未だにすさまじい勢いで成長しています。18年の売上成長は30〜40%台。19年に入って大きく低下しましたが、それでも20%台です。
このように、売上の成長率を比較すると、Apple以外は20%成長をしていることが分かります。ただし、安定のGoogle、成長率鈍化のFacebook、次々と新しい成長軸を見つけるAmazonと、その構造は違います。
純利益を比較する
売上では、ぱっとしないAppleとこれだけ大きくなっても成長を続けるAmazonというのが印象的でしたが、純利益(Net income)を見ると逆の印象になります。次のとおり、60B$(約6兆円)もの利益を稼ぎ出すAppleは化け物のようです。一方で、Amazonの利益は増加したとはいえ10B$にすぎません。
売上高純利益率(TTM Net Margin)を見てみます。まずはGoogleですが、一時期は29%近くあったものの徐々に低下し、現在は20%前後で推移しています。
続いてApppleは、直近でも21.49%。20%を割ることはなく、コントロールされている印象です。
そして驚くべきはFacebookです。17年には41%もの純利益率を記録し、直近でも25.15%です。これは、営業利益率や経常利益率ではなく、法人税も払ったあとの純利益の売上に占める比率です。粗利率は80%以上をキープしており、売上が5兆円を超える企業とは思えません。これがAmazonの2倍もの利益を出している理由です。
最後にAmazonは純利益よりもキャッシュフロー重視なのが明確です。売上高純利益率は一時はマイナス(つまり赤字)、上昇した今でも4%台でしかありません。最も粗利率は継続して上昇しており、現在は40%を越えていることは忘れてはいけません。
EPSを見る
ここまで売上と利益を見てきましたが、実は投資家にとって最も大切なのは、1株あたり利益、つまりEPSです。すべての財務指標はEPSが伸びるかどうかの変数に過ぎないからです。
では各社のEPSは? というと、次のようになっています。各社のスケールは必ずしも一致していませんが、各社右肩上がりで伸びています。特に、2016年あたりからのFacebokとAmazonの伸びが著しいですね。
Appleの純利益は、2012年あたりからそれほど伸びていません。にも関わらずEPSが2倍程度になっているのには理由があります。株式数の変化です。下記は、発行済み株式数(Shares outstanding)の変化です。
Appleは純利益の伸びが鈍化した2012年あたりから、すごい勢いで株式数を減らしています。つまり、自社株買いをしているわけです。EPSは、純利益を発行済み株式数で割った額ですから、これがEPSの伸びを支えています。
利益成長は鈍化したものの、それを自社株買いに使って株主還元する。そんなステージにAppleが入っており、だからこそ減収になっても株価が大きく上がっていることが分かります。
PERを見る
最後に、EPSに対して何倍の株価がついているか、つまりPERを見てみます。実は、利益率も利益も極端に低いAmazonは、PERが比較できないほど高くなっています。直近では、Appleの18.8倍、Googleの26.1倍、Facebookの28.4倍に対し、Amazonは76.8倍。しかも一時期は700倍を越えていました。
このPERを正当化する、というよりどう見たらいいのでしょうか。ヒントの1つは、株価売上高倍率、いわゆるP/S Ratio(株価が、1株あたり売上高の何倍か)にありそうです。2014年から見ても、P/S Ratioは大きな変動がなくトレンドの通りになっているようです。
Googleは6倍近辺で安定です。売上に比例して株価が動く感じです。一段高いP/S RatioなのがFacebookです。これは、他社に比べて利益率が倍近いことを考えると、妥当だともいえそうです。そして実はAppleとAmazonが非常に似通って倍率になっています。
売上規模は近しいものの、利益率20%のAppleと4%のAmazon。安定した巨額の利益を使い自社株買いを進めるAppleと、利益をほとんど出さず売上成長に邁進するAmazon。両社の経営スタイルはかなり違いますが、1株あたり売上の株価倍率で見ると、意外に近い評価をされているということが見えてきました。
最後にROEを
また、ROEで見ると、Appleがあたま一つ抜けているのが分かります。ROEは、純利益/自己資本で、自己資本の何パーセントの利益を上げているかを示します。3社が20%前後なのに対し、Appleだけが50%を越えています。
ROEを上げるにはいくつは方法があって、すぐ思いつく方法が分子の純利益を上げることです。ところが、ROEに絞って考えると、分母の自己資本を減らすことでもROEを上げることができます。
たとえば配当を出せば自己資本が減るのでROEは上がります。また自社株買いにお金を使っても自己資本は減ります。自社株買いをするとEPSやBPSも上昇するので、株価のアップという意味ではたいへんに効果ありです。
とはいっても、自己資本をそうしたことばかりに使ってしまっては、必要な投資が行えません。通常は、自己資本を減らすとともに借入をすることで必要な資金を手当します。いわゆる財務レバレッジですね。では、この借金と自己資本の比率、Eebt/Equity Ratioを見てみましょう。
はい。GoogleとFacebooのEebt/Equity Ratioは0.1以下、つまり10%に届かず、ほぼ無借金経営なのが分かります。一方のAppleは1.0に到達しており、自己資本と同じ額の借金を抱えていることが分かります。
借金の比率はともかく、手元現金(Cash on Hand)の額も見ておきます。なんとトップは実はGoogleで、なんと121B$(13兆円)もの現金を保有しています。しかもほぼ無借金。どんな企業も買収し放題という感じです。
利益額に比べてAppleの現金が少ないのは、やはり配当や自社株買いに使っているからでしょう。それでも100B$もの手許現金があります。ちなみに同じ基準でトヨタ自動車の手元現金を入れてみると、56B$となり、AmazonやFacebookよりちょっと多いくらいというところです。GAFAのすごさが分かります。
各社異なるビジネスモデル
決算が出揃ったことを機に、過去10年あたりの財務諸表をさかのぼって比較し、各社の経営方針が違うことを見てきました。グラフはmacrotrendsからになります。
- 安定した利益を、配当と自社株買いに費やし、借入も使ってROEとEPSを上げるApple
- 成長率は鈍化しつつあるものの、40%を超える驚異的な純利益率のFacebook
- 低い利益率を維持して積極投資し、Apple並の売上規模ながら20%成長を続けるAmazon
- 多くの指標は各社の平均あたりだが、他社を圧倒する手元現金を持ち、M&Aにも配当や自社株買いにも振り分けられるGoogle
GAFAとかThe Fourとも言われますが、サービスだけでなく経営方針も各社各様です。なお、ぼくはApple以外の3社の株をほぼ同額保有中です。