FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

配当5%後半に エクソン・モービル(XOM)を分析してみる

エクソンモービル(XOM)の株価や配当水準が話題です。この1年で、高値の82.9ドルから現在は59.8ドルへと28%も下落。配当利回りも5%後半まで上昇しています。

f:id:kuzyo:20200219155940p:plain

続く増配。業績は厳しい局面

この株価水準は2010年6月以来。これをバーゲンセールと考えるか、さらなる下落の始まりと考えるかは、いろいろでしょう。とりあえずざっくりと銘柄を確認です。まずは売上高の推移から。

f:id:kuzyo:20200219160514p:plain

2006年から見ると、売り上げは直近で67Bドル。2012年あたりから見ると半減しています。ここ1年はマイナス成長ですね。続いて純利益(Net Income)です。

f:id:kuzyo:20200219160747p:plain

5.6Bドルの利益を出していますが、長期的に減少傾向です。売上高純利益率(Net Margin)はどうでしょう。

f:id:kuzyo:20200219160945p:plain

売り上げの急減に対してリストラ策も打ってきたようですが、一時10%もあったNet Marginは低くなっており、現在は5.4%。なかなか厳しいですね。続いてEPSです。

f:id:kuzyo:20200219161135p:plain

年平均で3.3ドル。かなり下がっています。ということはPERも期待できません。

f:id:kuzyo:20200219161316p:plain

2010年代は6倍〜10倍程度でしたが、売り上げ急落とともに2016年には43倍に。現在は、20倍前後での推移です。それでは上昇した配当は? というと。。。

f:id:kuzyo:20200219161554p:plain

増配をずっと続けてきた結果、2%台だった配当利回りは2015年くらいから急上昇。現在の5.8%というすごい水準に至っています。業績はあまり良くないので株価は横ばいだが、増配だけは続けていて、結果、配当利回りが急上昇という感じです。

 

増配といっても、直近は配当性向が100%を超えており、つまりその期に生み出した利益で配当を賄えない状況です。売り上げ拡大がなければ、増配を続けるのは難しい状況ですね。

 

企業の価値を決めるのは1株あたり利益のEPSであり、それを内部留保するか自社株買いするか配当にするかは経営戦略です。EPSが伸びておらず、借金をして配当を出しているというのが現在の状況だということが見て取れます。

原油価格と連動する業績

もう一つ、XOMの業績が原油価格と連動していることは忘れてはいけません。青が原油価格、赤がXOMの株価です。大きなトレンドとして見事に相関しているのが分かります。

f:id:kuzyo:20200219162659p:plain

原油価格をどう見るかはまた難しい話ですが、昨年末あたりは緩やかな上昇を予想する人が多かったようです。ところがコロナウイルス騒動で原油需要の多くを賄う中国の経済が停滞し、需要が減退。原油価格の下落の可能性が言われていたりします。

株式投資のリターンはEPS。伸びに期待するグロースと分配に期待する高配当

さて改めて株式投資のリターンがどこから生まれてくるのかを確認しておきましょう。企業は事業を運営して利益を生み出します。この利益を株数で割ったもの、つまり1株あたりの利益がEPSです。

 

投資をするのは、その企業がEPSをいっぱい稼いでくれるからです。一応、いまはEPSが小さくでもこれから多くなるだろうという期待に投資するのがグロース投資ですね。一方で、EPSが伸びなくても、そこから安定的に配当を分配してくれるという期待に投資するのが高配当投資です。

 

グロースの場合はEPSが伸びることが重要。高配当の場合はEPSが安定していることが重要です。EPSが落ちても、配当さえ出してくれればいいじゃないか? そんなふうに考える人もいるかもしれません。

 

でもこれは、一時期大人気だった毎月分配型投信と同じです。この商品の問題は、利益から分配金を出すのではなく、利益が減ってしまっても高い分配金を継続するために、元本を削っていったところにあります。つまり、高配当株式でいえば、配当性向が上がり続けている株式は、本来の実力以上に配当を出しているということです。

 

もちろん、事業の成熟に伴って、配当性向を上げるという経営上の選択はあります。ただしそのときは、投資家側が、増配の原因がどこにあるかを考えるべきでしょう。

  1. EPSが増加しているので、配当原資が増えた
  2. 配当性向のアップで、配当に回す比率が増えた

1の場合は、株価自体も上昇することが多いので、増配であっても配当利回りは上がらなかったりします。2の場合、EPSが安定していればいいのですが、「EPSが下落したが増配は必須」なんて場合だと、結果的に配当性向が上がってしまいます。EPS下落なので株価は下落することが多く、配当利回りは大きく上昇することになります。

 

利益を配当として出していて、増配している企業。利益が減ってしまっているが、高い配当は出さなくてはいけないので元本を削る、いわゆるタコ足配当になってしまっている企業。投資しようとしている高配当企業が、どちらに当たるのかは、確認して理解した上で投資することが重要ですね。