FIRE:投資でセミリタイアする九条日記

FIREを実現したサラリーマン。ETF投資を中心に、太陽光投資や不動産投資、オプション、VIX、FX、CFDまで使って資産運用をしています。

我々はインフレを知らない 

最近、将来のインフレが気になっています。中央銀行の役割は「インフレを抑え込むこと」と言われたのも今は昔。デフレ脱却を完全には果たしていない日本では、日銀が2%のインフレ目標を設定するなど、警戒する空気はありません。

 

それどころかコロナショックを契機に、各国中銀は過去最大規模の金融緩和を行っています。いまは、実体経済のサポート、そして金融危機を防ぐために必要な措置ではありますが、これは何をもたらすのか。

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はたして、本当にインフレは退治されたのでしょうか?

この40年はインフレ率が下がり続けた

確かにこの40年はインフレ率が低下し続けてきました。政情不安な一部の国を除き、先進国では0〜3%程度が普通です。

 

インフレ率が5%程度あったのは、日本でも1980年代のことなので、もう40年前。バブル期ですね。このときのことを経験として知っている投資家はもはや少ないのではないでしょうか。ぼく自身も、インフレを知らない世代です。

 

下図は1980年からの日米のインフレ率の推移になります。

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INTERNATIONAL MONETARY FUNDより

今後も、現在からほとんど変わらないインフレ率が想定されています。しかしこれは本当に続くのでしょうか?

200〜300年に1回、大きな物価上昇

ふと思って手に取ったのは、その昔に読んだ『振り子の金融史観』です。人類の歴史をさかのぼって、どのような経済の推移を経てきたのかが考察されています。

振り子の金融史観―金融史と資産運用

振り子の金融史観―金融史と資産運用

  • 作者:平山 賢一
  • 発売日: 2008/03/01
  • メディア: 単行本
 

 それによると、世界経済の過去のインフレはこんなサイクルだったようです。

  • 中世以降のインフレ率は、大きく4回加速上昇
  • 13世紀、16世紀、18世紀、そして20世紀
  • 200〜300年に一回程度、大きな物価上昇期を経験
  • 4〜5回のコンドラチェフサイクル(約50年周期の変動)のうち、中でも1回が特に大きな波

 単純なサイクルでインフレが起きるのならば、次は22世紀あたりかもしれません。しかし、インフレの萌芽はあるところから生まれると著者は書いています。

13世紀も16世紀も、インフレ率上昇のモノの時代の前半は、小麦や木材といったコモディティ価格の上昇の時代であり、一般物価の上昇は、インフレ期の後半になってはじめて明らかになってきた 。

現代がコモディティ価格の上昇だけであって消費者物価指数の上昇に浸透していないのは、構造変化によるものであって、インフレなき時代を迎えていると考えるのは早計と言わざるを得ない

インフレというのは、要するに需要と供給の関係が崩れ、需要のほうが増大した局面になります。 そしてそれが始まるのは、まずは木材、石炭、石油といったエネルギー価格の上昇からだというのです。

 

下記は、1861年からの長期の原油価格の推移です。1860年代の米国南北戦争の際に原油価格は高騰。その後、落ち着いた時期が続きましたが、1973年の第1次オイルショックの際に再び高騰し、5年後の1978年には第2次オイルショックとしてピークを付けました。

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その後、しばらく価格は落ち着きましたが、「コモディティ価格の上昇はすでに1999年から始まっている」(本書より)わけです。徐々に値上がり始めた原油価格は2008年のリーマン・ショックで高騰し、現在はサウジ増産で急落したものの、それでも1999年と比較すればまだ高い価格なわけです。

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直近では、原油価格の下落でオイルメジャーの業績も悪化という感じですが、中長期で見れば別に激安というわけでないのが原油価格でもあるわけです*1

インフレが来る前には何が起こるのか

インフレ率が低下する局面とは、要は低金利の時代です。そして、低金利が続くと世間にカネがあふれ、より高いリターンを求めてイールドハンティングが行われます。これがまさに今起こっていることですが、著者は14〜15世紀のイタリアでも、同様のことがあったと書いています。

20世紀の2つのバブルである、1920年代と1990年代も、高いインフレ率が低下する局面で金利低下期待が高まる中で発生しました。同様に、イタリアのマーチャントバンクが台頭した14世紀から15世紀の低インフレ期にあっても一種のカネ余り的な状況の中で、より高いリターンを求める投資行動が強まりました。

 しかし、誰もがそうだと思っているように、そこら中に投資マネーがあふれ、行き先を探して少しでも利回りの高そうなものがあったら買い漁って利回りが下がるという世界は、何かおかしいものを感じます。

インフレ率低下の末期に発生するカネ余りとバブルは、その後の株価暴落のバーストに受け継がれていきます。インフレ動向の局面転換期には、株価暴落が生じやすいという点は大事なポイントです。

低インフレは低い金利を可能にし、低い金利は資産価格の上昇をもたらします。要するに、低金利化ならば高いPERが正当化されるわけです。そしてこれは、いったんインフレが始まれば、逆回転します。

 

インフレ率増大→金利上昇→PER下落→株価暴落、という流れです。金融危機やコロナショックなど、さまざまな出来事によって、各国中銀はすぐに利下げするようになっています。株価が上昇しても、インフレ率が上がらない。そんなふうに感じてしまうのが現状です。

 

でも、「世界のルールが変わった」と誰かが言い出すころは、そのフレームの限界が来ているタイミングであり、結局は歴史的にごくごく当たり前の状況に戻ったりするわけです。 

1970年代にインフレ率のピークを迎え、その後インフレ率が低下する中で「カネの時代」を謳歌したグローバル経済も、20年以上の期間を経過し、そろそろインフレ率が上昇する「モノの時代」を迎えていると見なすことが自然な思考でしょう。

ここで、1970〜80年からの金と原油のチャートを載せておきます。

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 長期で見たときのインフレ対応の難しさ

さて著者はアクティブファンドのストラテジストでもあるので、インフレ期においては必ずしもインデックス有利とはならないということも書いています。

 

シーゲル教授の指摘する株式長期保有の有効性は、半永久的に運用を持続する超長期運用において発揮するものの、一般大衆が資産運用する場合の投資ホライズンでは、必ずしも有効性が認められないのです。

(米国株式は)1966年から1981年にかけての高インフレ期には、名目収益率はプラスではあるものの、それを上回るインフレ率の影響で、実質的な収益率はマイナスになっています。

 

チャールズ・エリス氏の名著『敗者のゲーム』には、「S&P500インデックスに負けた米国投資信託の比率」が記載され、パッシブ運用の優位性が実証されています。(中略)「平均アクティブ負け率」は約58%となっており、アクティブ運用の旗色はよくないのです。しかし、インフレ率が高位で変動した1974年から1982年までの期間に限定して、この「平均アクティブ負け率」を算出すると41%になります。(中略)一般的にはアクティブ運用による優位性は認めがたいものの、インフレ率が高位で変動する時期には、むしろアクティブ運用の優位性が高まっている点を再認識すべきではないでしょうか。

 ポジショントーク的な感じもしますが、インフレに向かう時代をこの50年、我々は経験していないわけで、これは怖いものだとも思います。

 

次回は、コロナショックがインフレにつながるのかどうか、そしてインフレが起きるのであれば、どんな対策が取り得るのか、そのあたりを考えていきたいと思います。

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*1:もちろんインフレを考慮に入れるとまたけっこう変わります。40年前の原油20ドルと、今の原油20ドルは違うわけで。