FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

リバランスの頻度でリターンはどれだけ変わるか

今回のコロナショックのように、株価が大きく下がると「下がったときこそ買い」という気持ちになります。これをもう少し一般化してみると、次のようになるでしょう。

  • 株価が下がって、資産全体に対する株式比率が下がったら買い
  • 株価が上がって、資産全体に対する株式比率が上がったら売り

これはいわゆるリバランスです。キャッシュを温存しておいて、株価が下がったらその分買い増すという戦略ですね。でも、リバランスはどのくらいの効果があるのでしょうか。またリバランスの頻度でパフォーマンスはどのくらい変わるのでしょうか?

株式90%、現金10%で下落相場に備える場合

今回は、Porfolio Visualizerを使って、1972-2020の期間でバックテストを行い、リバランスによってどのくらいパフォーマンスが変わるか検証してみました。対象株式は全米株式。90%を株式で持ち、10%の現金というパターンです。

 

リバランスを行わず、90%の株式をバイ&ホールドしておく場合と、株価下落時に現金を使って買い増しを行い、比率を調整するリバランスを実施した場合で比較します。さらに、リバランス頻度は、年1回、四半期に1回、毎月、バンド(絶対値で5%差が出るか、相対値で25%差が出た場合)の4パターンとしました。

 

結果は下記のようになりました。年平均成長率(CAGR)ではバイ&ホールドが最も成績がよく10%。次いでバンド方式リバランスが9.9%となりました。

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面白いのは、期間中のベストイヤーのリターンでは、バイ&ホールドが最も成績が悪いことです。バイ&ホールドのベストイヤーは1995年の34.22%。一方で、年次では1975年に34.65%、バンドも1975年に34.97%を出しています。これはオイルショックによる暴落直後ですね。やはり、暴落のタイミングで買付を行うことが、高リターンにつながることが分かります。

リスクを抑制するリバランス

今度はリターンではなく、リスク関係を見てみます。年間のボラティリティ(リスク)と、ワーストイヤーのリターン、そして最大ドローダウンはどうでしょうか。

 

これを見ると、リバランスを行ったほうがワーストイヤーのリターンは改善し、最大ドローダウンも低くなり、そしてボラティリティも下がることが分かります。

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ただ、これは考えてみれば当たり前の話で、バイ&ホールドでは株価が上昇するに連れてどんどん株式の比率が上がっていきます。リスク資産比率が上がれば、資産全体のボラティリティは当然上がるし、下落相場での落ち幅も大きくなります。

現金比率を40%まで上げてみた場合

今ひとつ、リバランスの効果が感じられる結果になっていません。仮説として、せっかく暴落が起こっても、資産の1割しかキャッシュがなければ、有効な買い増しができなかったのではないでしょうか? そこで、今度は株式6:現金4 の場合でバックテストしてみます。そのほかの条件は同じです。

 

まずはリターンから。こちらも年平均リターンはダントツでバイ&ホールドでした。リバランス方式内の違いを見ると、キャッシュ比率1割のときはバンド方式の成績が良かったのですが、今回は年次や四半期リバランスが良好です。

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リスク系はどうでしょうか。こちらはリバランスの効果がさらに如実に現れました。CAGRは0.8%ほど、バイ&ホールドから落ちましたが、最大ドローダウンもワーストイヤーも10ポイントほど改善しています。

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年次リターンが、バイ&ホールドと各種リバランスでどう違うかを見てみます。青棒がバイ&ホールドですが、後半に行くに従って、上振れ、下振れしていることが分かります。

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 ただし、これもさもありなん。この期間、米国株式は全体として好調に推移しており、バイ&ホールドしていれば、どんどん株式比率が高まっていったからです。バイ&ホールドのアセットアロケーションがどう推移したかを見ると、それがよく分かります。

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長期でもトレンドがあるなら、最良の選択はバイ&ホールド。ただし…

トレンドがある限り、変にリバランスするよりもバイ&ホールドが最良の選択だということが、過去データからは分かりました。また、これは最良の選択が全資産を株式に投じるフルインベストだということも意味しています。

 

暴落時に買い付けるために現金を保持していても、それはリバランスと同様で、現金を寝かしている間の損失が大きいともいえるからです。暴落を待って現金を保持しておくなら、全部株式に投じてエクスポージャを最大にしておくことがパフォーマンスにつながります。

 

ただしここには2つの条件があります。1つは、中長期的に見てトレンドのある、上昇している相場だということ。上記の2つのグラフを見れば分かるとおり、1972年から現在までは、ほぼ毎年リターンを上げてきたのが米国株式です。このようにトレンドがある場合、リバランスは効果を発揮しません。

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もう1つは、機械的なリバランスではなく、本当の暴落時にだけ全力で買い付けるという方法を取った場合です。ただしこれは、次回の暴落に備えてどこかで売って現金を作らなければなりません。つまり、タイミングよく買って、タイミングよく売るという話です。

 

今回のコロナショックが本当に絶好の買い場なのなら、実はタイミングよく買うのは簡単なのでしょう。ただし、売る方は誰もが絶好の売り場だという時期はなかなか難しいかもしれません。ともあれ、相場を読める人は、こういう方法もありですが、相場を読むのは想像よりも難しく、それが偶然でなくできている人なんて、ほとんどいないはずです。

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リバランス手法の違いはやっぱり分からない

ちなみに、バイ&ホールドが強すぎて、各リバランス手法の違いはほとんど分かりませんでした。バンガードも、最適というリバランスの頻度はしきい値はないというレポートを出していました。

Vanguard research has found that there is no optimal frequency or threshold for rebalancing, since risk-adjusted returns do not differ meaningfully from one rebalancing strategy to another. 

Best practices for portfolio rebalancing – Vanguard research, November 2015

 少なくとも、売買コストがかかることを考えると、リバランスをするにしても年1回で十分という感じでしょう。

 

さて、今回バイ&ホールドが強くなってしまったのは、トレンドのある市場だからです。ならば、もっと緩やかに上昇していて、レンジに近い市場の場合はどうでしょうか? 次回そちらを検証してみたいと思います。

 

→米国外の株式インデックスの場合を検証してみました。 

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