Bitcoinが3回目の半減期を迎えました。ほぼ4年毎に到来するため、2008年の誕生から約12年。日本時間5月12日4時23分です。半減期は時間ではなく、生成されたブロックの個数によって決まっており、マイナー報酬が半減するのはブロック#630,000から。半減前の最終ブロック、#629,999には、あるメッセージが書き込まれました。
ジェネシスブロックに刻まれたメッセージ
Bitcoinの最初のブロック#0、つまり初めてBitcoinが稼働したジェネシスブロックには、創始者であるSatioshi Nakamoto自身の手で、次のメッセージが書き込まれています。
「The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for bank」
「英財務大臣、二度目の銀行救済目前」
このメッセージが刻まれたのは、2009年1月3日。金融危機を経た直後の英Times誌の見出しです。
Satioshi Nakamotoは、Bitcoinの元となる論文で、次のように記しています。
必要なのは、信用ではなく暗号化された証明に基づく電子取引システムであり、これにより希望する二者が信用できる第三者機関を介さずに直接取引できるようになる。
※日本語で読むビットコイン原論文 [by Satoshi Nakamoto] – Coincheck blog
Satoshiの真意は分かりませんが、上記のジェネシスブロックに刻まれたメッセージと合わせて、恣意的に発行量を増減でき、救済を必要とするように従来の送金システムと通貨の問題を、Bitcoinはトラスト(信用)レスの仕組みによって解決するものだと、考えられています。
#629,999番目のブロックのメッセージ
そして、このジェネシスブロックへのオマージュとしてでしょうか。半減期直前となる#629,999のブロックには、マイナーf2poolが次のようなメッセージを書き込みました。
「NYTimes 09/Apr/2020 With $2.3T Injection, Fed’s Plan Far Exceeds 2008 Rescue」
※Bitcoin / Block / 629999 — Blockchair
これは、NYタイムスの見出しであり、「2.3兆ドルの注入で、FRBの計画は2008年の救済をはるかに上回った」というものです。いわば、限りなく貨幣量が増大する法定通貨というシステムを皮肉り、半減期を迎えてインフレ率が減っていくBitcoinと特徴を対比したものだとも見えます。
Bitcoinに書き込まれたメッセージ これはデジタルの石版
Bitcoinにメッセージを書き込むというと、すごいハッカーが行うようなイメージがありますが、実はそんなことはありません。Bitcoinのブロックチェーンは分散型台帳といわれるとおり、どのアドレスがどれだけのコインを保有しているのかが記載されています。
しかしこの残高情報だけでなく、実は任意の情報を記録できるようになっています。トランザクションを記録する部分に、80バイト(日本語は26文字)の情報を含ませることができるのです*1。送金情報の領域を使いますが、誰にも送金せずに、書き込むことだけもできます。手数料として、0.0001BTCがかかるようです。
ご存知の通り、Bitcoinのブロックチェーンは永遠です。一度書き込まれた内容は、Bitcoinが続く限り、残り続け、その内容は未来永劫残り続けます。考え方によっては、どんな記録メディアよりも長く残る可能性がある記録だとも言えます。また、それがいつ書き込まれたのかも、ブロックチェーン自体が保障してくれます。
2014年にプロポーズの言葉をBitcoinのブロックチェーンに書き込んだBitcoin著名人がいます。
このときのブロックチェーンがこちら。「Yuki will you marry me ? Tetsu.」という言葉が埋め込まれているのが分かります。
一度書いたら消せない改ざんもされないメッセージを、書き込まれた時間が保障された形で、全世界に向けて公開できるBitcoinブロックチェーン。実用面でもいろいろ使えそうですが、シンプルにワクワクします。ぼくも何かあったら、書き込んでみたいと思います。
*1:OP_RETURNという部分。一時40バイトだったが、現在80バイトに戻った