FIRE:投資でセミリタイアする九条日記

FIREを実現したサラリーマン。ETF投資を中心に、太陽光投資や不動産投資、オプション、VIX、FX、CFDまで使って資産運用をしています。

米債券ETFを比較する コール条項による修正

第1回第2回第3回と債券でチェックしておくべきパラメータについて見てきました。ここからはちょっと詳細に入っていきます。今回は「コール」条項についてです。

要は繰り上げ返済の権利

これまで債券の価格を決める要素には、「デュレーション」「スプレッド」があることを見てきました。デュレーションはざっくり満期までの期間を表し、スプレッドは格付けに代表されるような発行体が信用できるかどうか、ちゃんと返済してくれるかどうかでした。

 

そのほかに、重要になる額面の金利(クーポン)があり、またETFでは気にすることはありませんが、担保が何かという点があります。そしてもう一つが、今回見ていく「コーラブル(コール条項)です。

 

コーラブルとはCallableで、コールできる、つまり借り主が繰り上げ返済できる権利を持っていることを指します。コール条項ともいいます。この繰り上げ返済は住宅ローンでは一般的ですね。満期前でも、借入金を繰り上げて返済できることを意味します。

 

これは「返済できる権利」であり返済しないで満期まで持っていることもできます。いったん売った債券を、満期前に買い戻せる権利だと捉えれば、これがコールオプションであることが分かります。コールオプションを持っているわけですから、そこにはプレミアムが発生し、それは追加のスプレッドとなって、利息が増加することになります。

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このコーラブルによって追加されたスプレッドを、オプション調整後スプレッド(OAS)と言います。要するに、繰り上げ償還される可能性がある場合は、スプレッドが大きくなり、利回りが高くなるということです。

 

モーゲージ債でなくても、コール条項のついたコーラブル債というのもあります。同じく早期償還条項が付いた債券で、仕組債の一種です。これは、発行体がコーラブル・スワップを売却することで、そのプレミアム分だけ高い利回りを提供しています。要はOASが大きいということです。

実効デュレーション

このコーラブルは、スプレッドに影響を与えるのと同様に、デュレーションにも影響します。先の住宅ローンを証券化したものをモーゲージ債といいますが、買い手から見ると、オプションプレミアム分、利回りは高いものの、もし繰り上げ償還された場合は満期までの期間が変わるからです。

 

繰上償還リスクがある分、デュレーションは短くなります。このようにコーラブルかどうかで補正したデュレーションを実効デュレーションと呼びます。

 

例えば米モーゲージ債ETFであるMBBのデュレーションと平均残存期間を見ると、下記のようになっています。加重平均残存期間が3.8年なのに対し、実効デュレーションは1.88年と短くなっていることが分かります。

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さらに詳細な金利感応度、コンベクシティ

このコール条項によるデュレーションの変化は、さらに面白いことにつながります。そもそものデュレーションは、残存期間中のインカムを金利(利回り)で割り引くことで計算されますが、これは実際には直線ではなく、曲線だからです。

 

下記のグラフを再掲します。期間20年の債券価格は利回りによって変化しますが、曲がっていますね。単純に「デュレーション1年につき、金利1%の変化が価格を1%変動させる」といった場合、これは直線変化になります。下記のグラフでいうと、接線を表したものがデュレーションです。しかし実際は曲線なのです。

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この曲線部分を表すのが、コンベクシティです。上記のようにスマイル型に曲がっている場合、「正のコンベクシティ」と言います。コール条項のない国債などでは、デュレーションの値よりも、歪みが生じます。金利が低下したときに債券価格が上昇する割合のほうが、同じだけ金利が上昇したときに価格が下落する割合よりも大きくなります。つまり金利低下時は大きく上昇し、金利が上がってもそれほど下落しないということです。

f:id:kuzyo:20200617232328p:plainコンベクシティとは | PIMCO

グラフにするとこのようになります。

 

逆に、コール条項のあるモーゲージ債のような債券では、コンベクシティが負になります。金利が低下したときは、繰上償還して借り換える人が増加するので、デュレーションが短くなり、金利低下効果が薄れます。つまり、それほど債券価格は上がりません。

 

逆に、金利が上昇したときは繰り上げ償還する人がいなくなります。金利変化がない場合、実効デュレーションはコール条項を加味して短くなっているので、それに比べると、デュレーションが実質長くなることになります。すると金利上昇による債券価格低下の影響が大きくなります。

 

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このように、コンベクシティを見ると、コール条項付きのモーゲージ債が、金利変動に弱いことが分かります。上がっても下がっても不利に働くわけですから。

コール条項付き債券が含まれるETF

コール条項付きの債券の代表例が、住宅ローンを証券化したモーゲージ債でしょう。モーゲージ債ETFのMBBなどはその代表例です。ただし、総合証券と呼ばれるiシェアーズのAGGやバンガードのBNDにも、モーゲージ債が含まれていることには注意が必要です。

 

下記はAGGに含まれる債券の種類です。財務省、つまり国債が38%を占め最多ですが、モーゲージ債も26%入っています。ほか、金融機関の社債も入っていますね。

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こうしたこともあって、加重平均残存期間は7.94年ですが、実効デュレーションは5.8年と少し短くなっています。

 

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