FIREが最近ブームなようで、目指したいという人も増えてきたように感じています。一足先にFIREを達成した身として、このところFIRE関連でよく聞かれる内容について、自分でもまとめておこうと思います。第1回の「思いたった理由」に続き、第2回は不安について。
Q:FIREへの不安はなかったのか
FIREに対する不安とは何でしょうか。やはり最大の不安は固定収入を失って(減って)も暮らしていけるか? にあります。ぼくの場合、ここには一つの前提がありました。
仕事を完全に辞めてリタイアしたいとは思っていないということです。ちょうどリンダ・グラットンの「ライフシフト」を読んだタイミングでもありました。サラリーマンとして過ごしていたら、60歳で定年です。その年に至ってから、次のキャリアを探していくのは、かなり厳しいだろうと考えました。
マネジメントはスキルだなんていいますが、実績ある社長経験者でもない限り、60を超えた人をマネージャーとして採用したいという企業はまずありません。ほかのスキルは年齢関係なくアウトプットで評価されることが期待できますが、ことマネジメントスキルについては、意外に技術と年齢がセットです。どの企業だって年下のマネージャーなんてわざわざ外からは取りたくないものです。
ぼくは直近のキャリアの長くをマネージャーとして過ごしてきました。マネージャーのスキルは貴重だとはいわれますが、日本企業では意外と汎用性がなく、横展開も難しいものです。ハローワークにシニアな人が来て、「何ができますか?」と聞かれて、「部長ができます」と答えた、という話が、笑い話になってしまうことからも分かります。
ということは、人生100年時代なら、100歳まで働けるスキルと仕事を見つけなくてはなりません。45歳の段階で、あと55年間。これはとっても長いですね。この期間を過ごすためのスキルを身につける。そのためには助走期間が必要です。
ぼくの中では、50歳を超えたら、新しいキャリアを切り開くためのチャレンジをするモチベーションはかなり薄くなっているんじゃないか? という恐怖がありました。あと10年、いまの会社とポジションにしがみつきたくなるんじゃないかということです。
そうなると、少しでも早く次のキャリアを見つけ出す必要があります。45歳。これは、ぼくの中では、ギリギリであり、資産とのバランスでいっても、ちょうどいいタイミングでした。
こうした前提のもと、資産と運用でどのくらい余裕があるのか、シミュレーションを繰り返しました。ここでは楽観は禁物です。さまざまなパラメータはかなりシビアに入れます。働き続けるといっても、その年収はほぼゼロに近いくらいを想定します。運用も、過去のパフォーマンス実績の、4分の1くらいを想定します。家族の貯金などは一切考慮にいれません。
そうした上で、なんとかなりそうだなという結論を得ました。決断した当時の資産額は、年間生活費の約23倍でした。運用と取り崩しを併用すれば、いまの生活レベルのままでも大丈夫という計算です。
ただし、運用は平均値では語れません。過去と同じパフォーマンスが将来も続く保証もありません。リーマンショックからの10年は、平均と比べても市場がたいへんよい時期だったという認識もあります。そこで、単純に「年平均リターン3%」といった試算ではなく、モンテカルロ・シミュレーションによって、問題なく老後まで過ごせる確率がどのくらいあるかを計算しました。
さらに、税金関連や太陽光発電をやっている法人の資産も入れて、どんな状況になるのかをFPにも試算してもらいました。これらの結果、厳しいという結論が出なかったので、安心してFIREに踏み切った形です。
→第3回 他のFIREした人を見てどう感じるか FIREの4分類