FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

新興国 ETF EEMが輝く日はくるか? ポートフォリオ探訪(3)

不定期連載のポートフォリオ紹介、第3回は新興国ETFのEEMです。こちら、ぼくのポートフォリオの中で3番目に大きなシェアを持っています。

  1.  S&P500 ETF IVV
  2. Amazon テンバガー銘柄
  3. 新興国 ETF EEM
  4. ゴールド 金
  5. 全世界株式VT
  6. 総合債券ETF BND
  7. 未来の勝者Google
  8. 今でもチャレンジャーFacebook
  9. 孤高の高配当 ARCC
  10. 北米除く先進国インデックスのEFA
  11. ワールドコンピュータ、Ethereum

なぜ新興国?

EEMは正式名称を「iシェアーズ MSCI エマージング・マーケットETF」といい、ブラックロックが提供するETFになります。名前のとおり、MSCI エマージング・マーケット・インデックスに連動します。

 

はっきりいってメジャーなETFではありません。ではなぜこのETFを持っているのでしょうか。このETFを買い付けたのは、実はS&P500インデックスのIVVの1年ほど前です。2001年くらいから盛り上がった「BRICs」という言葉を覚えているでしょうか? ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)のことを指し、投資が盛り上がりました。

 

メモがなく、詳細は不明なのですが、「これからの投資先は新興国だ!」と思っていた記憶がおぼろげにあります。同時に、これからは資源だ!とも感じており、商品インデックスのGSGも購入。こちらは大損しました。

 

その後、IVVとEFAを買い、新興国インデックス一本槍から世界分散ポートフォリオへ転換しました。ただし、新興国のEEMも継続して買い増しを行っており、売却するという発想はなかったようです。

買い付けの履歴

2007年から2015年にかけて、約8年間もEEMを買い増ししてきました。この間、というか現在に至るまで一切売却をしていません。

  • 2007年6月 126.35ドルで買付
  • 2007年7月 121.01ドルで買付
  • 2007年12月 152.7ドルで買付
  • 2008年6月 141.0ドルで買付
  • (2008年7月 3:1の分割)
  • 2008年8月 39.63ドルで買付
  • 2008年10月 19.39ドルで買付
  • 2011年10月 39.38ドルで買付
  • 2012年11月 41.0ドルで買付
  • 2013年5月 43.26ドルで買付
  • 2013年8月 39.45ドルで買付
  • 2013年8月 38.69ドルで買付
  • 2015年3月 39.91ドルで買付

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一応チャートを見ると、当時の数ヶ月スパンの中で「下落した!」と感じたタイミングで買ってはいるようです。ただまぁ、このようにタイミングを図っても、焼け石に水の感はありますね。

 人気も種類もない新興国ETF

リーマンショック前の新興国株式の盛り上がりを覚えている人はあまりいないかもしれません。このEEMの設定は2003年4月。そこからリーマンショックまでは怒涛の上昇をしたものです。

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設定時の価格は分割調整後で12ドル程度。それがリーマンショック前の高値では55ドルを超えました。4年ちょっとで指数が約5倍になったわけです。それはまぁみんな飛びつきます。いまの米国株の状況を彷彿とさせますね。

 

ところがリーマンショックで暴落したあとはまったく冴えません。現在に至ってもリーマン前の高値まで戻ることなく、横ばいを続けている状況です。設定来こそ年平均リターンは10.67%ですが、過去10年では3.76%、5年は8.66%、3年は2.83%と、どんどんリターンが悪化しています。

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恐るべくは、配当金を再投資したトータルリターンのほうがパフォーマンスが悪いことです。どの期間のローリングリターンを取っても、インデックスそのものに負けています。しっかり右肩上がりでない銘柄は、配当金を再投資するとパフォーマンスが逆に悪化するという例です。

 

直近12ヶ月の配当金利回りは2.66%。IVVが1.93%なのでそれよりは多少多いですが、IVVは株価自体が上昇しています。株価は伸びず、配当金もパッとしない。厳しい銘柄ですね。

EEMの中身とは

ではEEMの中身はどのような銘柄なのでしょうか。まず新興国ということなので、どんな国が含まれているか、見てみます。実はこのとおり、41%を中国が占めています。EEMのだいたい半分は中国だということです。

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そこに、台湾、韓国、インドが続きます。ここまでで全体の約7割。なるほど、これからの成長が見込まれる国々がしっかりと入っていることが分かります。

 

ではどんな企業が含まれるのでしょうか。

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  1. アリババ 言わずと知れたEC大手
  2. テンセント 中国のSNS大手。WeChatでも知られますが、実は世界最大級のゲーム会社
  3. TSMC 台湾の半導体製造ファウンドリー。製造技術では米Intelを抜いており、世界最高の技術と生産量を持ちます
  4. サムソン 韓国のサムスンですね
  5. MEITUAN DIANPING(美団点評) 口コミサイト。ネクストBATとも言われているようです。恥ずかしながら、今回調べるまで知りませんでした
  6. リライアンス・インダストリーズ インドの石油を中心としたコングロマリット
  7. ナスパーズ ネット・メディアの多国籍企業。南アケープタウン本社
  8. JD.com 中国のEC大手。中国名は京東商城
  9. 中国建設銀行 中国4大銀行の1つ
  10. 中国平安保険 ピンアン保険。中国4大保険会社の1つ。保険会社の中で時価総額世界最大

さすがに米国企業に比べると知らない名前もありますが、アリババを筆頭に、急成長ストーリーをよく聞く企業がたくさん入っています。あれ? なんでこんなスター企業ばっかりなのに指数はいまいち?

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ここ5年ほどのチャートを見ると、アリババ、テンセント、TSMCなどは軒並み株価を上げています。あまり調子がいいとはいえないサムスンでも株価は約2倍です。にも関わらず、青線のEEMの絶不調ぶりはどういうことなのでしょう。

IVV(S&P500)との比較

いやはや、バイ&ホールドといいながら、ここまで長く持ち続けながら横ばいのETFというのも辛いものです。買い付けを始めた2007年から2020年までの推移(配当再投資なし)を、IVV(S&P500)と比較すると、こうなります。

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ひどい差ですね。ちなみにCAGRは、IVVが6.84%なのに対し、EEMは1.16%。債券のほうがマシだったという感じです。では、配当はどうかというと、次の通り。

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初期こそ、IVVと近しい配当額でしたが、成長続ける米国株では配当額も増加したのに対し、なんというか大して増えていません。

 

ではこれを持ち続けるのかどうか。結論としてはホールド継続です。

なぜ売らないで持ち続けるのか

10年、20年という超長期で見た場合、経済や株価が成長する地域は循環するという考え方があります。リーマンショックからの10年ちょっとは明らかに米国のターンでした。そして現在でも米国の強さは変わっておらず、今後も成長を続けるという見方があります。

 

ただし株式投資というのは、株価に対する相対的な評価です。ここまで上昇した米国株が今後も上昇を続けるのかどうか。それとも新興国などに入れ替わるのか。いくつかの兆しはあります。

 

EEMのPERは15.83倍、BPRは1.77倍です。対するIVV(S&P500)はPER23.83倍、PBR3.73倍。PERは1.5倍、PBRは2倍程度となっています。どちらが割安かといえば、明らかに新興国のEEMですね。

 

米国のインフレ調整後利益の10年移動平均を使ったCAPEレシオ(シラーPER)を見てみましょう。歴史的に見ても、現在がかなり高い水準にあることが分かります。いくら米国経済が強いといっても、このところの株価上昇は投資家心理によるものだということです。

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この超長期の期間中、平均のPERは16.74、中央値は15.8倍でした。PERは1株利益に対する倍率だということを思い出してください。好調な経済を背景に1株利益(EPS)が成長を続けたとしても、PERが平均の15程度まで落ちれば、株価は現在の半分まで下落することになります。

 

下記は、2004年から2019年までの5年間、米国株と新興国株のPERがどのように推移したかのグラフです。新興国は横ばい、米国は上昇し続けてきました。何かのタイミングでこのギャップがうまったとき、米国株は下落、新興国は上昇することになります。

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そして、この数年の米国の行動を見ても、中国の成長は著しいものがあります。これまでは「世界の工場」などとおだてられてきましたが、米国は本格的に中国をライバルとして捉え、全面対決の構えです。逆にいうと、それだけ中国が強くなったということです。

 

新興国株式の40%以上は中国です。新興国に賭けるというのは、つまり中国に賭けるということでもあります。そして、この数年、中国企業の強さをぼくは肌で実感していたりします。

 

また世界的な金融緩和で、コモディティへの注目が集まっています。金が過去最高値を更新し、バフェットも金鉱株を購入しました。金融緩和でお金がばらまかれるということは、通貨の価値が落ちるということであり、それは相対的に量が限られるコモディティ=資源の価値が高まるということです。中国のIT系企業を別にすれば、新興国の経済は資源価格に連動します。今後の資源高を想定するなら、やはり新興国は外せないということになります。

 

というわけで、10年以上にわたり保有したEEMは大したリターンをもたらさず、結果的には失敗した投資でした。今後も経済は成長するものの株価は全体として上がらなかったり、米中貿易戦争によって中国株が売買できなくなるリスクもあります。

 

一方で、米国一強から、中国やインドなどの台頭が誰の目にも明らかになってきています。そして、米国株の人気は過熱気味。一方忘れ去られている新興国。このような構図の中、敢えて米国株への集中投資ではなく、世界株インデックスを購入してきました。

 

現在、ポートフォリオのトップはIVV(S&P500)ですが、3位にEEM(新興国)が入っているように、ぼくのポートフォリオはかなり新興国にベットしています。あと5年、10年くらいのスパンで、新興国に期待。確信度は70%とし、EEMもホールドです。

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