最近、ARK社の米国ETFが話題のようです。いわばアクティブファンドであり、それを上場させたETFです。ディスラプトテクノロジーに特化したファンドのようで、特に暴騰したTeslaを組み入れていることや、コロナ禍でテクノロジー系の調子がいいことから、たいへん高いパフォーマンスを出しています。
でも、こちら、金融庁への届け出がないため、一般のネット証券では取り扱いがありません。ARK社のアドバイスのもと、似た銘柄を組み入れた投資信託を日興アセットマネジメントが提供していますが、信託報酬が2%近く、コスト高なのが玉に瑕。では、直接ETFを買うにはどうしたらいいかといえば、日本でも口座が作れるサクソバンク証券で購入が可能です。
ARK社のETF
ARK社のETFは次のような感じです。
- KWEB(KraneShares CSI China Internet ETF )
- ARKQ(ARK Industrial Revolution ETF )自動化&ロボットETF
- ARKW(ARK Web X.0 ETF )ネクストジェネレーションインターネットETF
- ARKK(ARK Innovation ETF )破壊的イノベーションETF
- ARKG(ARK Genomic Revolution Multi-Sector ETF )ゲノム革命分野ETF
- ARKF(ARK Fintech Innovation ETF)
- PRNT(ARK ETF Trust )3Dプリント銘柄ETF:インデックス
- IZRL(ARK Israel Innovative Technology ETF)イスラエルイノベーション技術ETF:インデックス
ZuminさんのブログでそれぞれのETFの詳細がまとめられていました。
サクソバンク証券に口座を開く
ではこれらのETFを買えるサクソバンク証券とはどんなところでしょうか。サクソバンクはデンマークのオンライン銀行で、サクソバンク証券はその日本法人子会社です。もとがFX業者であり、150種類以上の為替ペアを提供していることが特徴です。種類でいえば圧倒的ですね。また、貴金属オプションや為替オプションといった、たいへんレアな商品も扱っています。早くからVIXのETNも提供しており、ぼくもVXXや銀オプション、ドル円バニラオプションでは以前から活用しています。
また外国株式については、上記のARKのようなマイナーETFだけでなく、一般株式のCFDを取り扱うのも特徴です。CFDは差金決済で、要はFXの株式版*1。AppleやTeslaなど8000に及ぶ銘柄を、レバレッジをかけて取引できます。レバレッジは5倍と、日本株の信用取引よりも高くなっています。
ぼくが当時口座を作った際には、一定期間取引がないと口座維持手数料を取られるという、とっても欧米チックな仕組みでしたが、現在は廃止され、口座維持手数料は無料になりました。入出金も無料で、コスト面の条件はほぼ国産ネット証券と変わらない感じです。
実は安い米株取引手数料
国内ネット証券における米国株の手数料は、ほぼ横並びです。
- 約定代金の0.45%(税別)
- 最低手数料ゼロ
- 最大手数料20ドル(税別)
一方、サクソバンク証券の手数料は次のようになります。ちなみに、すべて税込みです。米国株の場合、最低5ドルかかるものの、手数料は0.2%と安く、最大手数料も15ドルと安くなっています。
米株への投資では為替コストも重要ですね。円をドルに変える必要があるからです。国内ネット証券の為替コストは、普通にやるとほぼ25銭です。一方で、サクソンバンクの場合は0.25%となっています。ドル円が100円ならばちょうど25銭で同レベル。104円の現在では26銭と少々割高でしょうか。
サクソンバンクのトレードツールでは注文ごとにコストをこのように確認できます。
問題点1:すべて円決済
ただし大きな問題があります。国内ネット証券はドル口座を持ち、米株をドルから買い付けることができます。配当や売った代金もドルのまま保持できます。SBIなどではFXをうまく絡めると、たいへん安くドルに替えられることも有名ですね。
ところがサクソンバンクでは円決済しか利用できません。米株手数料ゼロをうたうDMM証券と同じですね*2。つまり、売買のたびに為替コストが発生することになります。これはちょっといただけません。
問題点2:特定口座がない
もう一つ、そして最大の、多くの人がサクソンバンクを敬遠する理由が特定口座がないことです。一般口座のみ、つまり確定申告が必要になります。
とはいっても、ドルでの取引がなく、すべて円決済なので、損益報告書にも、◯◯円で購入、コストは◯◯円、◯◯円で売却、利益は◯◯円と出てきます。このコストと利益を確定申告書に書けば終わりなので、実はそれほど大変ではありません。ETN、オプションなどで何度も確定申告していますが、ほかの確定申告に比べて特段の難しさはありませんでした。
注意点としては、国内株の場合、売買手数料を反映させて購入単価が計算されますが、サクソンバンクの場合、手数料が別計算になっているということ。これは年をまたいでポジションを持っているときに問題になります。
またサクソンバンクでは、受け取った配当金を自動的にその銘柄に再投資するDRIP機能という欧米では一般的な機能があります。配当に課税されることなく再投資できるので、課税を先送りできます。コレ自体は素晴らしいのですが、特定口座に対応してないため、こちらの確定申告は再投資時点の為替レートをチェックして処理が必要なようです。
実際の購入までの流れ
ではARKKについて、実際に購入するまでの流れを画面で追ってみましょう。残念ながら、今回は実際に購入はしていません。サクソンバンクはデモ口座を開設でき、仮想の売買も可能なので、操作に不安がある場合、実際に試してみることをおすすめします*3。
なお画面は、Mac版のSaxoTrader PROのものです。まずはログインします。
入金は、メニューの「口座番号」から「入金と送金」を選ぶと表れる「クイック入金」から。押すとWebが開き、普通の証券会社同様に銀行から即時入金が行われます。
入金はまずFX口座(S)に入ります。ここから米国株なら「一般外国株式(Z)」に資金を振り替えます。ちょっと前まで記号しかなくて、何がどの口座かわかりにくいことこの上なかったのですが、最近のバージョンアップでよくなりました。
メニューの「リサーチ」から「銘柄詳細」を選ぶと、銘柄の検索画面が出てきます。ここで例えばARKと打つと、関連する銘柄が一覧できます。
銘柄を選ぶと、パフォーマンス、気配値、チャート、ニュース、ETFの構成内容などが一覧で表示されます。
右上の「取引」ボタンを押すと、注文画面が出ます。注文タイプは、成行、指値以外に、逆指値、逆指値(指値)、逆指値(トレイリング追随型)」、OCOなど、FX的な注文方法がいろいろと使えます。注文の有効期限も月末、年末、無期限、期間指定など柔軟です。決済注文も、決済指値、決済逆指値、さらにその設定もパーセント、価格、ティックなどこまかく設定できます。
右上の「i」ボタンを押すと、次のように取引費用の詳細が表示されます。
さて、ここで「発注」ボタンを押すと、最終確認画面になります。
これで発注すれば、終わりです。
ちなみに、メニュー「口座番号」から「各種レポート」を押すと、次のような画面が出ます。この「財務諸表」に確定申告に必要なデータが入っています。ただし、国内証券会社のようなフォーマットを期待するとかなり違うので、最初は戸惑うと思います。
ちなみに、サクソバンクのコメントとして「まもなく特定口座を提供」というのが、定期的に流れてきますが、これってもう何年も前からそう言っているんですよね。Twitterなどで検索してみてもらえると、19年にも18年にも言っていることがわかります。やるやる詐欺とまでは言わないのですが、きっと金融庁が……のような問題があるのでしょう。
数ヶ月前に顧客データの大規模流出をしてしまったサクソバンクだけに、新たな機能追加はけっこう大変なんじゃないかな?なんて思っていたりします。それに一般口座は悪いことばかりではありません。給与以外の収入(正確には費用を除いた収益)が20万円以内ならば、確定申告不要だからです。つまり、特定口座はそれ自体で完結しているからいいとして、仮想通貨やソーシャルレンディングや貸株などの雑所得、FXや先物などの申告分離、また一般口座での取引で、合計20万円以内に利益を押さえれば、確定申告不要、つまり所得税の支払いも不要ということです。正確には住民税の支払いがいるので、いろいろと面倒ではありますが、一般口座も使いようかなとも思ったりします。