Bitcoinの価格が400万円を超えて推移しています。特に年が明けてからの上昇が激しく、わずか1週間で100万円を超える上昇となりました。果たしてこれは再びのバブルなのでしょうか? 各社の報道含めてチェックします。
各社の報道は「400万円」ではなく「4万ドル」
今回の上昇でちょっとおもしろいのは、各社の報道が「400万円突破」ではなく「4万ドル突破」となっているところです。海外発のロイターやブルームバーグのニュースがドルなのは分かるとして、国内メディアも「4万ドル」という表現を使っています。
下記はドル建てと円建てのBitcoin価格の年間推移です。青線がドル、オレンジが円。これを見ると、ドル建ての上昇率が1年間で300%を超えているのに対し、円建ては283%なのが分かります。
つまりこの間、それだけの円高が進んだということです。
また、上昇率だけでなく、上昇を牽引したのが日本ではなく米国だということも理由の1つでしょう。前回のバブルではBitcoinへ流入したマネーの過半が円でした。ところが今回の上昇では、ドルまたはドルのステーブルコインの流入によってもたらされています。
※乱高下? 300万円突破のビットコイン、市場関係者はこう見る (1/2) - ITmedia ビジネスオンライン
各社の報道
では各社の報道をチェックしてみます。ロイターは上昇について触れるだけでなく「近く調整も」と記しています。
仮想通貨コンソーシアム、パンクソーラグループのギャビン・スミス最高経営責任者(CEO)は「さらに上昇することは確かだが、一直線に上向くと期待するべきではない」と指摘。
「ビットコインは魔法の金の木とは程遠く、下向きの価格変動リスクがないわけではない。実際には投資家による定期的な利益確定に伴い、25%の急落も予想される」
とはいえこの程度の価格変動は仮想通貨では日常茶飯事であり、コメントも「さらに上昇することは確か」としています。
ブルームバーグは、上昇の理由として次のようにコメントを載せています。
投機的な小口トレーダーやトレンド追随のクオンツファンド、富裕層からの需要に機関投資家の参入も加わり価格が急上昇したとストラテジストらはみている。
もともと今回の価格上昇の背景は、金融緩和によるインフレ懸念を嫌気した企業や機関投資家が、ドルの代わりにBitcoinを購入したためと言われてきました。その上昇トレンドを見たトレーダーやクオンツファンドが参入し、さらなる価格上昇をもたらしたという見方です。
もう1つのポイントは、仮想通貨全体の時価総額が1兆ドルを超えたということです。日経新聞はBitcoinの価格上昇とともに、「あふれるマネーが流れ込んでいる」と表現。7日午後1時半時点で、仮想通貨の時価総額は1兆558億ドル(約109兆円)だとしています。
また毎日新聞は共同通信の配信を受け、「将来的なインフレを見込み、供給量に上限のあるビットコインを金のような資産と捉える見方が広がった」と、デジタル・ゴールドとしての側面に注目した書き方をしています。
仮想通貨時価総額1兆ドル突破
報道のとおり、Bitcoinの上昇に引っ張られ仮想通貨全体の時価総額は1兆ドルを突破しました。
これにより、さまざまな資産の中でのBitcoinの時価総額はトップ10に入ってきました。金(ゴールド)が圧倒的なトップですが、注目はTeslaが8位まで上昇していることでしょうか。
※Assets ranked by Market Cap - CompaniesMarketCap.com
ちなみに、仮想通貨時価総額第2位のEthreumも、時価総額1358億ドルまで上昇し、98位に入っています。
仮想通貨全体の時価総額は17年末のバブル期の8179億ドルを超えて過去最高ですが、実はBitcoinを除くアルトコインの総時価総額は、3180億ドルで、バブル期の5249億ドルを超えていません。
Ethreum単体で見ると、現在の時価総額は1380億ドルで、17年末バブル期の1372億ドルを超えてきましたが、価格については1409ドルの最高値をまだ超えておらず、現在1209ドルとなっています。
これはバブルか?
急速な価格上昇が続くBitcoin、そして仮想通貨ですが、これはバブルなのでしょうか。経済学的な定義のファンダメンタルズ価格(理論価格)から離れた価格がつくことをバブルとするなら、問題は仮想通貨の理論価格をどう考えるか、になります。
債券は利回りが固定されていますので、金利との兼ね合いで理論価格が導かれます。株式は企業利益と金利によって同様に理論価格が計算できます。
では仮想通貨はどうでしょうか。債券や株式のように、保有することで金利や配当があるわけではないので、「本質的価値がない」などといわれます。ところが、この性質は金(ゴールド)も同様なのですね。
では金の本質的価値はどう計算されるかというと、「金で買える商品の価値できまる」とされているようです。その昔は金本位制という、モノの値段は金何グラムかで決まっていて、それに対応する形で紙幣が発行されていました。そのため、例えばパソコンが金10グラムで買えるとすれば、金はそのパソコンだけの価値があるという計算になるようです。
一方で、貨幣で表すパソコンの値段は上下します。これがインフレやデフレですね。つまり、パソコンの価値が金10グラムだとしても、インフレやデフレによって金の価値も変動することになります。
商品は、一般的な等価物としての金と相対的な価値形態の地位位で対立しており、いかほどかのオンスの金による生産物価格がそれぞれの商品価値を表す。
翻って仮想通貨はどうかというと、残念ながら金ほどの絶対的な価値を認められていません。金で直接モノは買えないですが、金を通貨に替えられることは、誰もが認識しています。一方で、仮想通貨はそれ自体で直接モノを買うことができず、また通貨に替えることも保証されていません。
いわば、金は「みんなが認めているから本質的価値がある」わけで、仮想通貨に本質的価値がないのだとしたら、それは「みんなが認めてはいないから」ということになります。
そのため、仮想通貨が金のように本質的価値を持つかどうかは、次の2つによって決まるのでしょう。
- 仮想通貨でモノが買えること
- 仮想通貨を確実に通貨に替えられること
(1)の点ではPayPalが仮想通貨を使った決済サービスを提供したことが大きいですね。また、(2)については、法律が確定して安心して取引でき、多くの人達が価値を認めれば通貨に替えることが容易になります。これまで仮想通貨を持っていたのは個人が中心でしたが、機関投資家や企業が保有するようになって、価値を認める人が大きく増加しました。これが、仮想通貨の本質的価値の向上につながっているのだと考えられます。
では4万ドルという価格は、本質的価値と比較して妥当なのでしょうか? これは金の価格が、過去との比較でしか理論価値を算出できないのと同じように、過去と比較するしかないでしょう。
その意味では、みんなが「Bitcoin価格は急速に上がりすぎた」と思えば、適切だとみんなが考える価格まで下落でしょうし、「もっと高くていいはずだ」と思うならさらに上がるはずです。
金は、過去の価格を元に、金利の変化(貨幣の価値の上下を表す)や産出量(金の希少性の上下を表す)によって価格が変動しますが、仮想通貨は、まだアンカーとなる価格が定まっていないのが現状だと思います。
逆にいえば、多くの人がまだ「仮想通貨なんて怪しい」と思っている現状でこの価格なので、今後人口に膾炙していく中では、さらに価格は上がっていくでしょう。Bitcoinが市場において金と同様のポジションになるなら、現在の約15倍。金よりも大きなポジションを占めると考えるなら、もっと上がるでしょう。
これはあくまで可能性でしかありませんが、それだけのポテンシャルがあると考えるとワクワクしますよね。