FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

金融リテラシーって難しい 「金融リテラシー・マップ」を読み解く

「金融リテラシー」という言葉を聞くことが増えました。分かるようなわからないようなこの言葉、実はけっこうハイレベルなことを指しています。金融庁や消費者庁、各金融機関の業界団体が参加する、金融経済教育推進会議というものがあります。ここが、「金融リテラシー・マップ」というものを出しているのですが、これがなかなか……。

 「最低限身につけるべき金融リテラシー」だというが

このマップ、年齢層別に「最低限身につけるべき金融リテラシー」を具体的に示したものだとされています。主な内容というのが下記の表です。

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家計管理

ここは一般社会人を想定して、それぞれ見ていきましょう。まず家計管理の項目では、

家計を主として支える立場から家計簿などで収入支出や資産負債を把握管理し、必要に応じ収支の改善、資産負債のバランス改善を行える。

とあります。負債がなければ、「もらった以上につかっちゃいけませんよ」という大学生レベルの話で済むのですが、負債を絡めてバランス改善というのはけっこうレベルが高いですね。

 

一般に大きな負債というと住宅ローンになりますが、ローン金利よりも住宅ローン減税で受け取る金額のほうが大きいご時世です。はて、資産負債のバランス改善というのは、どんなことを意味するのでしょう。

 

金利が高い一昔前であれば、繰り上げ返済を積極的に行い、負債を減らして家計のバランスシートを小さくするというのが正攻法でした。しかし低金利かつ住宅ローン減税がある今は、できるだけ借りてできるだけ返さない。つまりバランスシートをいかに大きくするかが、金融リテラシー的には正解だと思いますが、どうでしょう?

生活設計 

生活設計では、次のように書かれています。

環境変化等を踏まえ、必要に応じライフプランや資金計画、保有資産の見直しを検討しつつ、自分の老後を展望したライフプランの実現に向け着実に取り組んでいる。

学校と連携しつつ、家庭内で子の金融教育に取り組む。 

これまたハードルの高い内容です。ライフプランを作るツールやノウハウはいろいろとありますが、「環境変化を踏まえ」が曲者です。老後を展望したライフプランを考えるには、「年功賃金」「退職金」「年金」の想定がかかせません。ところが年功賃金はすでに失われつつあり、終身雇用さえ危うい状況。そのうえ、年金がいくら貰えるのかさえ不透明な状態です。

 

こうした環境変化を踏まえてライフプランを作るとなると、極端に保守的にいくか、極端に楽観的にいくかになってしまいます。結果、刹那的な生き方になったり、必要以上に貯金や資産を貯め込む方向になっているようにも思います。

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難しい状況だからファイナンシャルプランナー(FP)のようなプロがいる……と考えたいものですが、少なくともぼくが会ってみたFPの人たちはツールに入力してその結果を伝えるだけ。

 

重要な「賃金の動向」「年金の動向」については、中庸決め打ちでした。本当に必要なのは、「賃金がどうなったら」「年金がどうなったら」その後の生活がどうなるかをシミュレーションしてくれるFPですが、そんな人には会ったことがありません。ぼくがそういうツールを作ろうかしら。

金融取引の基本としての素養

続いては金融商品や金融経済の理解編です。ここには次が挙げられています。

収集した情報を比較検討し、適切な消費行動をすることができる。

金融商品を含む様々な販売・勧誘行為に適用される法令や制度を理解し、慎重な契約締結など、適切な対応を行うことができる。

詐欺など悪質な者に狙われないよう慎重な契約を心掛ける。 

これってものすごくハードルが高くありませんか? 販売・勧誘に適用される法令や制度って、ぼくもほとんど知りません。そして慎重な契約締結ってどういうことを指すのでしょう。 

 

そして金融分野共通としては、次になります。

金融商品の3つの特性(流動性・安全性・収益性)とリスク管理の方法、および長期的な視点から貯蓄・運用することの大切さを理解する。

お金の価値と時間の関係について理解する(複利、割引現在価値など)。

景気の動向、金利の動き、インフレ・デフレ、為替の動きが、金融商品の価格、実質価値、金利(利回り)等に及ぼす影響について理解している。 

ここは、いわゆる投資教育の1つとしていろいろなところで語られ、そこそこ浸透してきたもののように感じます。投資でいえば、長期・積立・分散ですね。しかし、これだけ低金利が長く続くと、割引現在価値のパラメータのほとんどはリスクプレミアムになってしまい、複雑になりますし、後半の金利やインフレ・デフレ、為替が金融商品の価格にどう影響を及ぼすかは、実はとっても難しいものです。

 

市場金利とはイコール債券価格の裏返しであるとか、長短金利差が保険業や銀行業の利益の源泉であること、二国間の金利差が為替を動かす基本要因であること、インフレは表面金利を引き下げて実質金利を低下させることで、割引価値を増加させて企業価値の増大につながることなどなど、いくつかの要素を取り出しても、その1つで一冊の本になるくらいの内容のはずです。

 

これを「理解」するのは相当難しいですよね。

金融知識:保険商品

金融知識の中の「保険商品」の欄では、次のように書かれています。

自分自身が備えるべきリスクの種類や内容を理解し、それに応じた対応(リスク削減、保険加入等)を行うことができる。

自動車事故を起こした場合、自賠責本件では賄えないことがあることを理解している。

保険は期待値的にはマイナスの商品であるため、忌避する人も多いのですが、確率の低い1回で壊滅的なダメージを負うため、それを避けるために入るものです。ぼくの場合はセミリタイアの状況なので、ぼくが死んでも資産によって家族は安泰。なので、生命保険には入っていませんが、以前に入っていて支払い済みの終身保険もあります。

 

あ、正確には生命保険控除のために「じぶんの積立」に入っていますね。こちら支払った額の1.1倍しか支払われないので、全然保険機能を果たしていませんが。それから、当然自動車保険にも入っています。

 

「不安だからとにかく保険に入る」のが間違いなように、「保険は損だから入らない」も間違い。避けらなれない壊滅的なリスクをヘッジするために保険に入るわけで、資産額からいって壊滅的でなければ保険は不要というのが、金融リテラリーなんじゃないかと思いますが、どうでしょ。

金融知識:ローン・クレジット

続いて借金のお話です。

住宅ニーズを考慮したライフプランを描いている。現在とリタイア後の住宅ニーズを考慮したライフプランを着実に実行しつつある。

住宅ローンの基本的な特徴を理解し、必要に応じ具体的知識を習得し返済能力に応じた借入を組むことができる。

ローンやクレジットは資金を消費してしまいやすいことに留意する。クレジットカードの分割払いやリボルビング払いには手数料(金利)負担が生じる点に留意する。ローンやクレジットの返済を適切に履行しない場合には、信用情報機関に記録が残り、他の金融機関等からも借入等が難しくなることを理解する。

「住宅ニーズを考慮したライフプラン」というのは全くもって意味不明です。家は人生で最も大きな買い物だとよく言われますが、では家を買った人がライフプランの検討の結果、購入に至ったのかというと、必ずしもそうではなさそうです。自分と似た境遇の人がみんな家を買っているから買った。そんな感じではないでしょうか。

 

税制優遇や恐ろしいほどの低金利、上昇が続く不動産価格などを見ると、投資観点では家を買いたいのですが、ぼくの場合はライフプランを考えるとどうやら買えそうにありません。現時点でこそ都心近くの好立地に住んでいますが、まぁ住んで5年。その後は、もっと田舎に移りたいと考えているからです。これが「住宅ニーズを考慮したライフプラン」という意味なのでしょうか? でもそれをいうなら、「ライフプランに即した住宅選び」 という表現であるべきでは?

 

一方で、ローンやクレジットは書かれている通りですね。分割払いやリボルビング払いの金利は、ホワイトゾーンで最高の15%。気軽に使えるとはいえ、お金が必要なときは別の手段を考えるべきです。キャンペーンなどで金利を上回るリターンが得られる場合でもない限り、決して手を出してはいけません。

 

リボルビングでまかなえるような金額ならば、そのくらいは生活防衛資金として貯金しておくべきですし、それも難しいなら、銀行や公的機関からもっともっと低利子の融資を受けられます。そうしたものを当たるべきですね。

金融知識:資産形成商品

今度はいわゆる投資の話です。

自らの生活設計の中で、どのように資産形成をしていくのかを考えている。

リスクとリターンの関係を踏まえ、求めるリターンと許容できるリスクを把握している。分散投資、長期投資のメリットを理解し、活用している。

分散投資を行っていても、定期的に投資対象(投資する国や商品)の見直しが必要であることを理解している。

 資産形成というのは、毎月の収入の一部を貯蓄や投資に回し、老後に向けた資産を作っていくことですね。年金+退職金で老後が賄えた昔と違い、また最低限ではなく充実した老後を過ごすためには資産形成が必須です。いわゆるライフプランニングをしましょうということです。

 

リターンとリスクの関係は、基本的に比例します。ただ、「求めるリターン」や「許容できるリスク」がどれくらいなのかは、非常に難しく、投資のプロであっても「把握している」人なんてほとんどいないんじゃないでしょうか。

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分散投資、長期投資のメリットは、値動きが異なる資産を組み合わせることでリスクあたりのリターンを向上させられること。また、長期に投資すると、1年あたりのリターンを平準化できることがメリットです。しかし、「定期的に投資対象の見直しが必要」というのはどういうことでしょう。株式であれば全世界のインデックスファンドでOKで、特に見直しをする必要もないように思うのですが。

外部知見

 こちらも投資の話。

金融商品を利用する際に相談等ができる適切な機関等を把握する必要があることを認識している。

金融商品を利用するに当たり、外部の知見を適切に活用する必要があることを理解している。

金融商品の利用の是非を自ら判断するうえで必要となる情報の内容や、相談しアドバイスを求められる適切で中立的な機関・専門家等を把握し、的確に行動できる。

 さて残念ながら、「相談等ができる適切な機関等を把握」は、ぼくもできていません。そういう意味ではマネーリテラシーが低いということなのでしょう。果たしてそれは銀行でしょうか? 対面の証券会社でしょうか? それともIFAなどでしょうか? いったいどこの人が、こうした相談に乗ってくれるのでしょう。少なくともぼくが相談した金融機関の人で、株式、債券、コモディティなどについて適切なアドバイスをしてくれたところはありませんでした。

 

アドバイスをもらえたのは、保険、不動産、太陽光発電、クリプト(仮想通貨)くらい。つまり、個別性がたいへん大きい(不動産や太陽光発電)か、内容が専門的(保険やクリプト)なものでなければ、書籍やネットの情報でもかなり深いところまで得られるということだと思っています。

 

いまでも専門的で中立的な機関や専門家のアドバイスは聞きたいと思っています。でもそれは、「この物件のリスクはどこにあるのか」「今年の株の確定した利益を翌年に繰り越すコストのかからない方法は?」とか「先物の利益を株式の利益に振り替えるには?」とか「ETHのステーキングを行うのに最も安全で低コストな方法は?」といった、個別性が高いかかなり突っ込んだ話になるわけです。

業界に都合のいいマップ?

こうして1つ1つ見てみると、どうにも金融業界にとって都合のいい金融リテラシーマップになっているような気がしてなりません。まず信頼できる金融機関というのはなかなかないのは前提として、下記あたりが、シンプルでわかりやすい金融リテラシーではないでしょうか。

  • お金は入ってくる以上に使わない
  • 住宅ローンは繰り上げ返済しない(税制的に現時点では)
  • 年金額を計算して、老後100歳までの収支計画を計算してみる
  • 自動車保険は入る、子供がいる人は掛け捨ての生命保険に入る
  • ほかの保険には入らない
  • 分割払い、リボルビング払いは使わない
  • 投資は、全世界株式インデックスファンドを積み立てる。売却はしない
  • 最低300万円は現金や預金で保有する

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