不定期連載のポートフォリオ紹介、第8回はFacebookです。同社は2012年2月にNASDAQに上場しましたが、ぼくは同年11月に買い付けを行い、約10年間保有しています。当時の思惑から今後の見通しについて、まとめておきます。
- S&P500 ETF IVV
- Amazon テンバガー銘柄
- 新興国 ETF EEM
- ゴールド 金
- 全世界株式VT
- 総合債券ETF BND
- 未来の勝者Google
- 今でもチャレンジャーFacebook
- 孤高の高配当 ARCC
- 北米除く先進国インデックスのEFA
- ワールドコンピュータ、Ethereum
Facebookの圧倒的なシェア
Facebookは世界で最も使われているSNSとして有名です。その利用者は27億人にのぼります。ただし、CEOマーク・ザッカーバーグの慧眼は、Facebookを大きくさせるだけではなく、成長の萌芽があった競合のSNSを次々と買収していったところにあります。
上場直後の2012年4月に、わずか社員13人だったInstagramを10億ドルで買収しました。さらに14年2月には、メッセージングアプリWhatsAppを160億ドルで買収します。国内ではなかなかFacebookの人気は盛り上がりませんが、Instagramは「インスタグラマー」と呼ばれる人が現れるほどブレイクしているのはご存知の通り。
さらに、WhatsAppは海外で最もメジャーなメッセージアプリです。各国で主流のメッセージアプリのイメージはこんな感じになります。LINEが上場して海外進出にチャレンジしましたが、インドネシアでWhatsAppに完敗し、結局海外での地保を築けなかったのは有名ですね。
- 日本 LINE
- 米国・カナダ Facebook Messanger & WhatsApp
- 欧州 WhatsApp & Facebook Messanger
- インドネシア WhatsApp & BBM
- 韓国 カカオトーク
- 中国 QQ & WeChat
- ロシア Telegram
そんなわけで、世界のSNSのシェアを並べるとこのようになります。赤いところがFacebookグループ。だいたい世界の半分くらいはFacebookに牛耳られている感じでしょうか。
※• Most used social media 2020 | Statista
恐るべき効果化的な広告
Facebookの強さは、これだけのユーザー数を効果的に使った広告機能にあります。ネット広告ではGoogleのAdSenseなどが有名ですが、このCPM(表示1000回あたりの収益)は平均して300円ほど。商材によっては1000円を超えることもありますが、まぁこんなものです。
これは広告の出稿主側からすると、クリック単価(CPC)で見ることになりますが、ワードによって数十円から高くて1000円程度でしょうか。出稿主は、この単価を払って広告をクリックしてもらい、そこからコンバージョンレートに基づいて、サービスに加入してもらったり品物を買ったりしてもらいます。
一方で、Facebook広告の相場は100円あたりが目安。そのくせ、最終的なコンバージョンレートはGoogleよりも高いことが少なくありません。また、掲載側からすると、Facebook広告のCPMはGoogleの2倍から4倍くらいになることもしばしばです。
これは、キーワードのマッチングに基づいて広告を出しているGoogleに対して、ユーザーの投稿内容やプロフィールに元づいて広告を出稿しているFacebookのほうが、ユーザーにマッチした広告を掲出できているということでしょう。
ここで、原則実名、ソーシャルグラフを活用して効果的な広告を配信するFacebookの強みが生きます。実際、AdSenseへの出稿では、人が張り付いてキーワードを取っ替え引っ替えしなければ費用対比で効果的な広告となりませんが、Facebook出稿の場合、人がいろいろといじるよりもFacebookのAIアルゴリズムにまかせてしまったほうが、費用対効果が上がるのです。これはかなり恐るべきことです。
これが、直近で純利益率(Net Margin)32%という、恐るべきFacebookの利益率の高さに結びついています。
Facebookの真の強みとは?
そしてFacebookの最大の強みは、SNSという場を通じて、「人が何に動かされるのか」 を把握できることにあります。
それは単なる「モノを売るための広告」にとどまりません。Facebookのユーザーデータを不正に収集したケンブリッジ・アナリティカが、ユーザーの嗜好に合わせた広告を出すことで、選挙に不正に影響を与えたのではないかという疑惑は、大きな関心を呼びました。実際には、本当にそこまで影響があったのかは不明ですが、Facebookが握っている個人データは、将来的に人々の投票活動まで左右できる力を持っていると考えるべきでしょう。
ユヴァル・ノア・ハラリは、これを「脳がハッキングされる」と呼んでいます。人は自らの自由意志に基づいて物事を決めていると思い込んでいますが、実はどこを押せばどういう行動をするかは次第に分析されつつあり、その最右翼が、SNSを牛耳るFacebookだというわけです。
これはITインフラであるAWSや購買プラットフォームを握るAmazonや、検索エンジンを握るGoogleよりも、SNSには将来的な影響力のある力が秘められているということでもあります。
この分野の解析に全力を持って当たっているFacebookは、将来においてとてつもない力を持つかもしれません。米議会が企業規模でいえばGAFAで最も小さいFacebookにこれほどまでに厳しく当たるのは、その潜在的な影響力のためだともいえるでしょう。
Facebookへの投資
そんなFacebookですが、ぼくが投資を決断したのは上場後の11月でした。上場当時のFacebookはPCメインのサービスで、初値は42ドル。上場してすぐに、進みつつあったスマホブームに対する対応の遅れから株価は大きく下落。1カ月で21%も下落しました。
僕が最初に投資したときのFacebookの株価は25.9ドルでした。半年後の追加投資時は26.145ドル、さらに1年後の追加投資のときは27.19ドルです。この後に及んで、まだIPO初値をとりもどせていませんでした。今となっては、FacebookがPCメインだったなんて冗談のように感じますが、当時はそこが最大の焦点でした。
ところが、その後Facebookはスマホシフトに見事に成功します。その後の株価の上昇はチャートの通り。Instagramの買収、WhatsAppの買収もあり、SNSとメッセージング市場で圧倒的な地位を築いていきます。
当時、競合と目されていたサービスにはTwitterがありました。でも、ぼくはTwitterへの投資は全く考えず、Facebook一本で考えました。それは、匿名性が高く当時の2chに近い雰囲気を持っていたTwitterに比べ、実名主義でオフィシャル感のあるFacebookは社会の基盤になり得ると考えたからです。さらに、広告との相性を考えても、Facebookのほうがマッチしやすいと考えました。
それは、上場から780%まで上昇したFacebookと、この後に及んでも10%の上昇でしかないTwitterの株価が結果をよく表しています。
ちなみに資産の中で大きなシェアになりすぎたため、19年にFacebookの一部を売却しました。当時は、コロナショック前だったため、いいタイミングで売ったと思ったものですが、今から見ると保有し続けるべきでしたね。
Facebookの今後
もちろんFacebookにはさまざまな課題があります。潜在的な影響力の大きさから、特に米国で批判の対象になっていることが1つ。また、ビジネス的には広告一本槍で、AppleやAmazonのように多元化できていません。
またSNSというセンシティブなものを扱っているため、どのようなスタンスをとっても批判される対象になります。Twitterがこの後に及んでトランプ大統領のアカウントを永久凍結したことが賛否両論を呼んでいますが、このようにどちらが正しいとも言えないことを決断し続けなくてはならない難しさがあります。
それでもFacebookの未来に期待するのは、創業者であるマーク・ザッカーバーグが健在で、GAFAMの中で最も若く、事業にフルコミットしているからです。
- Apple ティム・クック 60歳
- Google サンダー・ピチャイ 48歳
- Amazon ジェフ・ベゾス 57歳 (創業者)
- Microsoft サティア・ナデラ 53歳
- Facebook マーク・ザッカーバーグ 36歳 (創業者)
下記の書籍には、創業から10年間のFacebookとマーク・ザッカーバーグの足取りが生々しく描かれています。当時ザッカーバーグはまだ26歳。Facebookの規模もわずか5億人でした。そこからさらに10年経って、Facebook帝国は27億人強まで増加しました。世界の人口が77億人であることを考えると、この数字のすごさが分かります。
さらに、頓挫はしてしまったものの2019年6月には、国に寄らない通貨Libra構想を打ち上げたことも、Facebookが現状の地位に安住することなく、世界を革新するチャレンジを続けていることを表しています。
リスクはありつつも、新たなチャレンジを続けるFacebook。そしてそれを率いる創業者であるリーダーは、今でもまだ36歳でしかありません。Windows 95を出した頃のビル・ゲイツでさえ40歳でした。若き天才が、今後どこまでFacebookを変革していくかに賭けて、Facebook株は持ち続けます。
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