FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

やりたい仕事だけをやるためにFIREするということ

最近、FIREブームですね。これまで「定年前働いて当たり前」「定年前勤め上げれば老後は賄える」と考えられてきた常識が変わってきていて、「定年まで働きたくない」「定年まで働いても老後が不安」という世の中になってきたからでしょう。

 

しかし、世のFIRE本の中には、「とにかく節約しよう」「浮いたお金で資産運用しよう」という話に終始しているものも見受けられます。節約も運用も、いってみればテクニック。技術を身に付けるための本だと思えばいいのでしょうが、実はFIRE(=セミリタイア)の本質は違うところにあると思っています。

今の仕事は好きですか?

日本人は世界の中でも「仕事が好きではない」として知られています。下記は、Linkedinの2014年の調査(2014年タレントトレンドレポート)ですが、見事に26カ国中最下位。別のIndeedの調査でも低い数字が出ているようです。

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「流動性が低い」「特定企業に特化したスキルセットになってしまっている」「専門的スキルが身につきにくい」など、理由はさまざまでしょうが、多くの日本人が「仕事が好きではない」と感じていることが推察されます。

 

ではなぜそれでも働き続けるのか。その理由はひとえに「お金が心配だから」です。

お金があれば自由になれる……しかし?

お金があれば自由になれる。ドストエフスキーが「貨幣は鋳造された自由である」と言ったように、お金があれば、好きでもない仕事にしがみつく必要はなくなります。「お金のために」上司の命令にイヤイヤ従う必要もなくなりますし、「お金のために」趣味の時間を削ることもありません。「お金のために」家族との時間を失なわずに済みます。

 

この「お金がある」状態が、FIREのFI、つまりFinancial Independent(経済的独立)を指します。いわば、資産からの収入で生活が賄える状態のことですね。

 

しかし、果たしてFIREしなければ自由を得ることはできないのでしょうか?

自由を得るための選択肢

実は自由を得るためには、必ずしもFIREしなくてはいけないわけではありません。1つの方法は、自分で起業してオーナーとして事業を行うという方法があります。自分が社長になるなんて、サラリーマンよりもたいへんそうだ――そう思うかもしれません。言われるがままに働けばサラリーがもらえる従業員に比べて、自分の力量次第で収入も決まる社長の場合、たしかにたいへんではあるでしょう。

 

しかし、社長には仕事に対する裁量――つまりやりたい仕事はやるけど、やりたくない仕事はやらない――があり、この裁量のあるなしが自由に密接につながっています。

 

「ホワイト・ホール・スタディ」という英国の有名な調査があります。これはストレスと死亡率の関係を調べるために、1967年から行われている研究です。ロンドンの官庁街で働く2万8000人の公務員を対象に、組織の階層ごとの死亡率を継続調査しました。それによると、一見ストレスが多そうなトップのほうが長生きすることが示されたというのです。

  • 40~64歳の年齢層において、階層の最下段にいる公務員はトップにいる人々と比べて死亡率が4倍も高かった。
  • 喫煙率、高血圧、血清コレステロール値、血糖値など、リスク因子のすべてを加味した補正を加えたうえでの死亡率比較も行ったが、結果は変わらなかった。
  • 補正後の死亡率の差は、補正前の3分の1しか減少せず、最下層にいる公務員は依然として、トップにいる人々と比べて死亡率に2倍近くの開きがあった。
  • おまけに、喫煙者同士に限った比較でも冠動脈疾患による死亡率は、職階に基づく明確な違いが示された。

「残業規制100時間」過労死合法化する“ハイスペックトップ”だけが持つ“ある権利”とは?(河合薫)

つまり、自分で決められる、裁量権がある状態は、逆によい影響も及ぼすということです。

 

状況は違えど、これは一般の企業内でも似たことが言えます。末端の従業員よりも経営陣、経営陣よりも社長のほうが裁量を持っており、人生を豊かに過ごしているのです。それに加えて、組織の階層が上になると、給料も増えます。自由に生きられて、お金もある。実は出世することは、一つの自由への道なのです。

そうはいっても出世は狭き門

そうはいっても「じゃあ出世しよう!」と思ってできるものではありません。うまく出世ができたとしても、本当に経営トップまで上り詰める人は一握りです。もしかしたら、身も心も組織に捧げたのに、出世どころかトカゲのしっぽ切りにあうかもしれません。

 

ぼく自身も、ある程度出世はしたものの、40歳を超えたあたりから、こりゃ社長にはなれないな……と実感しました。日本企業でも早期選抜は進んでおり、30歳、40歳あたりから、自分の最終到達地点が見えるようになってきています。

 

さらに、出世した先にある仕事は楽しいのか? ということも問題です。オーナーには真の意味で自由がありますが、たとえ出世して社長になってもそれは雇われ社長。企業の状況にもよりますが、自由を持つオーナーとは違い、結局のところ上級管理職でしかないのです。Excelとにらめっこして予算を作ったり、人事査定とか面談、そして次々と現れる会議で1日が終わっていきます。

 

あれ? 就職活動のとき、この仕事を目指したのは、こんなことをしたいからだったんだっけ? ぼくの場合は、これがFIREを意識した理由でした。本当に自分がしたかった仕事をしたい。給料や地位、権力よりも、一番楽しいと思えることをしていたい。そう考えたとき、FI(Financial Independent)が達成されていたら、RE(Retirement Early)をしなくても、好きなことができるじゃないか、と思い至ったわけです。

定年退職後も見据える

よくも悪くも、ぼくがしたい仕事は、人を差配して組織が円滑に効果的に動くように調整するということよりも、自分で手を動かしてアウトプットを出すことでした。一時期は、新規事業担当として思ったように好きなことができましたが、再び大組織の中に戻ったときに待っていたのは、ひたすらの会議と、縦割り部署間の縄張り争い。お金のために人生の時間を無駄にしているな、という思いを抱いたものです。

 

その上、もしこの政治闘争に勝利してさらに上に登っても、そこには定年という終着点があります。オーナーでない限り、定年を過ぎたらただの人に戻るわけです。

 

「ライフ・シフト」は、人生100年時代において、途中でキャリアチェンジをする必要性を説いています。昔と違い、定年を迎えたらしばらく老後があって死んでしまう、わけではなく、実は第二のキャリアが始まるのが現代です。60歳から先、身体が不自由になる時期まで20年近くは人生が続きます。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
 

 これに備えることを考えると、管理職としてのキャリアを積むことは不毛にも感じました。それよりも、自分がオーナーとして事業を営んでいけるためのスキルを改めて持つこと。そのためには、現場に戻る必要ある。そう考えたわけです。

 

このときの事業は、壮大な事業計画を作り、仲間を集めて、VCから資金を調達し、5年後のIPOを目指す――なんてものである必要はありません。従業員の人生なんて背負わず、自分がやりたい仕事だけを行い、自分と家族が暮らしていけるだけのお金を稼げればいいのです。

 

さらにこのとき資産があれば、その分、事業の営利性が低くても大丈夫です。資産があれば、自由に仕事ができるわけです。

経済的独立があれば、やりたい仕事だけができる

ここでは、FIREは「経済的に独立して早期退職する」という意味ではありません。「経済的に独立して、やりたい仕事だけをする」ということを指していて、FIREの区分では「バリスタFIRE」や「コースとFIRE」に当たるでしょう。別に早期退職が目的ではないという意味で、ぼくは「セミリタイア」を名乗っているわけです。

 

なぜ仕事にこだわるのか。それは人生を考える上で、仕事は欠かせないピースだと思うからです。ただし、仕事とはお金を稼ぐ手段ではありません。いったい何かを考えるときに、有名な「ikigai図」、元の名前を「Puporse Diagram」が参考になります。これは「生きがいを見つけるためのベン図」です。

 

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※システムデザイン・マネジメント研究の前野隆司教授の図

ここには仕事がどのような要素で成り立っていて、4つの要素の重なり具合でどのように感じるのかが、端的に示されています。

 

この4つがすべて調和している「Ikigai」状態が、たしかにベストでしょう。でも、ほとんどの場合、いずれかの要素が薄くなりがちなものです。となると、自ら進んでどこかの要素に偏らせる。その場合、最も簡単なのが「稼げる事」を諦めることだと考えました。何しろ、これは単なるマネーの話であって、仕事とは別に資産があれば、それで代替できてしまうからです。

 

そうすると、使命や情熱を最優先して、仕事をすることができます。「自由」を求めるとともに、「やりたい仕事をやる」ためにFIREする。これがぼくのFIREの目的でした。

 

人によってFIREの目的は違うはずです。そして、もしそれが「自由」や「やりたい仕事をする」ためだったら、いろいろな選択肢があります。将来に向けて豊かな暮らしをしたいのに、過度な節制をするのは本末転倒。資産運用は大事ですが、それに時間をかけすぎて本当に自分がやりたいことができなくなっては元も子もありません。

 

節約や運用はあくまでテクニックです。FIREという概念は、日本人にとってこれまで当然だった人生のレールを、自らもう一度考え直す契機に使うのがいいんじゃないかな? なんて思っています。

www.kuzyofire.com

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