FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Binance流動性供給のリスクとリターン

f:id:kuzyo:20210510222407j:plain

このところ浮いた資金を何に使おうかな? と考えていると、やっぱり流動性マイニングが頭に浮かびます。仮想通貨の分散型取引所(DEX)に、手持ちの仮想通貨を預ける(ロックする)ことで、そこそこの利回りを得る手法です。今回は、そのリスクとリターンについて考えてみます。

選択肢の一つ、Binance流動性スワップ

AMM(自動マーケットメーカー)であるDEXに仮想通貨ペアを預けて、ほかの人のトレード(スワップ)から手数料を得るのが、流動性供給(流動性マイニング)です。その走りであり王道は、Ethereum上のUniswapですが、このところのEthereum急騰を受けて手数料がとんでもないことになっています。

 

となると、DEXではなくCEX(中央集権型取引所)になりますがBinanceの流動性スワップ。また、BinanceSmartChain(BSC)上で動作するDEXであるPancakeSwapが、候補として浮かびます。

 

改めてBinanceの流動性供給のAPY(年リターン)を見ると、次の2つが目に付きました。USDC/USDTのペアと、BTC/WBTCのペアです。

f:id:kuzyo:20210510201903j:plain

f:id:kuzyo:20210510201948j:plain

USDC/USDTのペア

USDC/USDTのペアは、ドルペッグしたいわゆるステーブルコインのペアです。

 

USDCは米サークル社が発行するステーブルコインです。仕組みはシンプルで、USドルを支払うと同額のUSDCが発行されるというものです。サークルの後ろ盾にはゴールドマンサックスがいて、NY州から仮想通貨事業の許可もとっており、さらに大手会計事務所のグラントソントン・インターナショナルが監査も行っています。つまり、USDCの裏付けとなるUSドルはしっかり存在していて、価値が担保されているということです。

 

時価総額は143億ドルで15位。伸びているとはいえ、規模的にはまだ中堅ですね。直近1年のチャートを見ると、一時は0.05%ほどのUSドルからの乖離がありましたが、現在は0.01%程度と極めて安定してきています。

f:id:kuzyo:20210510210143j:plain

 

もう一方のUSDTはTether社が発行するステーブルコインです。仕組みはUSDCと同じでUSドルを裏付けにするものですが、古くから「本当に払い込んだドルが存在しているのか?」という疑念を持たれてきました。とはいえ、時価総額は5578億ドルと大きく6位。ステーブルコインの老舗でもあり、さまざまな取引所でドルに代わり基軸通貨となっています。

 

そんな背景もあって、ドルからの乖離はそこそこあります。現在も0.17%乖離しており、まれに0.4%近い乖離が発生することもあります。

f:id:kuzyo:20210510210524j:plain

そんなわけで、USDC/USDTのペアはそれなりに揺らぐことになります。とはいっても、最大でも0.15%程度。仮想通貨や株はもちろん、為替と比べてもほぼ変動なしといえるレベルです。

f:id:kuzyo:20210510210820j:plain

驚くべきことは、このUSDC/USDTのペアに流動性を供給すると、年利16.15%ものリターンがあるということです。

f:id:kuzyo:20210510201903j:plain

流動性マイニングのリスクの1つは、インパーマネントロス(IL)です。これはペア通貨の価格が乖離すると、乖離幅によって上昇の機会損失を受けるというものでした。しかし、そもそも上昇のないステーブルコインで、かつ価格乖離がほぼゼロのステーブルコインペアならば、ILのリスクはほぼないといえます。このペアは大きな候補ですね。

BTC/WBTCのペア

もう1つの選択肢は、BTC/WBTCのペアです。BTCはいわずと知れたBitcoin。ではWBTCとは何でしょうか。

 

まずDeFiで取り扱えるのはEthereum上で取り扱えるコインであるERC20規格に則ったものになります。そのためBTCはそのままではDeFiで取り扱えません。そこでBTCにペッグしたERC20トークンがWrappedBitcoin(ラップドビットコイン)、WBTCというわけです。

 

WBTCには複数のパートナーが参加しており、販売もととなるマーチャント(販売元)にBTCを送るとWBTCが送り返される仕組みです。裏付けとしてBTCが保存されているトークンですね。

f:id:kuzyo:20210510212343j:plain

チャートを見ると、0.2〜0.3%ほどの乖離がありますが、だいたい安定していることが分かります。

 

さて、BTC/WBTCのペアに流動性を供給することの利点はなんでしょうか。APYはステーブルコインペアから大きく落ちて7.1%です。しかもうち6.3%がBNBによる報酬であり、手数料報酬は0.8%しかありません。

f:id:kuzyo:20210510201948j:plain

このペアの最大のメリットは、BTCをロングしたまま追加のリターンを7.1%得られる点です。長期的にBTCをロングしたい場合、BlockFiなどのレンディングサービスで追加リターンを得ることができます。同様に半分をWBTCに変えて流動性供給することで、追加リターンを得られるというわけです。

 

単にBTCを持っているだけならば、この方法で7.1%の追加リターンを得られます。また、BTCとWBTCの価格はペッグしているので、こちらもインパーマネントロス(IL)が発生するリスクがほとんどありません。

流動性供給のリスクを改めて

このように、さまざまな通貨ペアで7%程度の追加リターンを得られる流動性供給ですが、そのリスクは何でしょうか。

 

1つはインパーマネントロス(IL)です。ペアとなっている通貨の価格が乖離すると、その分が上昇時の機会損失となります。ただしこれは、今回の2ペアのように、互いにペッグしたものならばリスクを抑えることができます。

 

2つ目はCEX(中央集権型)の場合は倒産などのカウンターパーティーリスク。そしてCEX/DEXともにあるのは、ハッキングによる流出リスクです。特にCEXの場合、ともすれば全損となるため、起こったときの損害は激しいモノがあります。Binance流動性スワップはAMMではあるがCEXだという認識なのですが、どうなのでしょう?

 

3つ目は、今回のようにペッグコインを使った場合のリスクです。USDTもUSDCも、そしてWBTCも裏付けにドルやBTCを持つことで、その価値を1対1に保持しています。これは、裏付けとして存在するはずの資産がないということが分かれば、一気に暴落するということです。必ずしも詐欺というわけでなく、裏付け資産が実はリスクにさらされているとか、盗難にあったとか、そういうことです。また、ペッグコインを原資産に戻す手続きに滞りが発生した場合も、流動性に悪影響があるということで下落するリスクがあります。

 

4つ目は、BTC/WBTCペアのように、そもそもがBTCロングだという価格変動リスクです。BTC価格が下落すれば、全体としては損失が出てしまいます。もちろん、BTC価格変動リスクを取りたくなければ別途BTCをショートしてヘッジすることもできますが、そこまでするのなら、ステーブルコインペアを使った方がいいですね。

 

いやはや、世の中にはいろいろな投資商品がありますが、ドルと価値が固定されたものを預けるだけで、年率16%のリターンが出るというのは、どこかに落とし穴があるんじゃないか? というほどの高利回りです。だって、1000万円突っ込めば、毎日4300円もらえるという話ですよ?

 

新しい投資商品にはボーナスタイムの時期があるのですが、まだしばらくの間は、DeFi系のサービスにはおいしい点が残りそうです。

 

www.kuzyofire.com

www.kuzyofire.com