FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

なぜ金融業界の人はうさんくさいのか

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やっと投資が根付いてきた感のある日本ですが、「銀行がお勧めする商品ではなく、つみたてNISAを使って世界に分散させたインデックスファンドを積み立てましょう」みたいな真っ当な内容の記事でも、「ポジショントーク」「同じ穴のムジナ」なんてコメントがたびたび付きます。

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これはなぜか。やはり金融業界で投資に携わっている人が言うことは、「それを売るとキックバックがあるのではないか」「ダマそうとしているのではないか」と思われるようです。なぜそんなふうにうさんくさく思われるのでしょう?

潜在層と顕在層

すごくマーケ的な見方でいうと、これは潜在層と顕在層でそれぞれ異なるアプローチがあるからではないかと思います。

 

顕在層というのは、すでにその商品に興味関心を持っていて、あとは「どれを買おうか」「どこで買おうか」「いつ買おうか」と悩んでいる人。潜在層とはそもそもその必要を感じていなくて、まずは「欲しい」「やってみよう」と思わせる必要がある人です。

 

クルマでいえば、潜在層に「このクルマはすごいんだよ!」と力説しても響きません。まずは、「クルマがあると生活がどう変わるのか」「どんな楽しい人生になるのか」という点から訴求していかなくてはならないのです。そこで興味をもってもらって初めて、「買うならこれがいいよ」という話に関心が向くのです。

 

先の記事でいえば、これはある程度関心を持っている顕在層だが、実際の商品選びで悩んでいる人がターゲット読者ですね。でも、「投資なんてギャンブルじゃなくてコツコツ貯蓄でしょ」というコメントをしている人は明らかに潜在層。または拒絶層といってもいいかもしれません。潜在層と顕在層の間には、意外と深い谷があるわけです。

潜在層でもセールスにうさんくさく感じる

しかし潜在層でもセールスや「これがいいですよ」と言われると、うさんくさく感じるものです。これはなぜか。一つには、投資商品には大きなリターンを得られる可能性を持つものもあるので、販売にかかわる人の手数料といった利益も大きいからです。手数料率が低い商品でも、例えば1億円分販売すれば手数料は莫大になります。こういうものすごく儲かる領域には、山師的な口八丁手八丁の人が集まってくる傾向にあります。不動産業界などもそうですね。

 

そのため、本当は良心的な人が多くても、一部にうさんくさい人が混じっているせいで、全体がうさんくさく見られてしまう。こんなことはあります。

 

また、一件誠実で信頼できそうな人でも、良心的ではないものを売っていることがあるのも問題です。銀行窓口、対面証券、郵便局……。こうしたところでは、販売している人自身は誠実でしっかりした人が多いのに、上層部からのノルマによって、買う人の利益反した商品を売りつけているという現実があります。

 

「お客さんのためにならないものばかり売らされて、それがいやで辞めました」。これは大手証券会社を辞めた人の話を聞くとよく出てくる言葉です。銀行などではもっとたちが悪くて、売っている本人がその商品を全く理解していないこともよくあります。悪い商品だという認識がないから、平気な顔をして売りつけられるのです。

良い物なのか欠陥商品かが分かりにくい

なぜこんなことが起こるのか。クルマのような商品では、中古車を除くとこうしたことはあまり起こりません。「儲かるけど質が悪い」といったクルマを作ってしまうと、販売力で売れはするものの、次第に悪評がたち、「あのメーカーのクルマはダメだ」というイメージがたってしまうからです。豊田社長以前のトヨタがまさにそうでした。ダメなクルマを販売力で売るという状況がながらく続いたのです。

 

このように販売力で売り切ってもモノが悪ければ、評判が落ちて売れなくなります。ところが、投資商品はそれが良いモノだったのか、悪いモノだったのかがたいへん分かりにくい商品なのです。

 

1つには、パフォーマンスであるリターンの善し悪しが市況に左右されて分かりにくいからです。どんなダメ商品でも市況がよければ大きなリターンをもたらしてしまうのが投資商品の難しさです。

 

2つ目は、リスクとリターンの関係です。意外と知られていないのですが、リターンを上げる最も簡単な方法は高いリスクを取ることです。ほかの商品よりも大きなリターンが出ても、実は裏側で大きなリスクを取っている商品がいろいろあります。このリスクは、破綻するまで分からなかったりします。

 

3つ目は長期的な商品であることです。例え現時点でのパフォーマンスが悪くても、「今は悪いけれど、あと数年持てば盛り返す」こんな言葉を証券営業から聞くこともあるでしょう。そして、これは案外事実だったりするのでたちが悪いのです。商品が悪いからパフォーマンスが低いのか、現在は本質的価値以上に売り込まれているだけで、待てば盛り返すのか、これが非常に分かりにくいのです。

みんなが買っていれば安心なのか?

では本当に良い商品をどのように選んだらいいのでしょうか。よくある方法は「みんなが買っているものを買う」方法です。クルマでもほかの商品でも、これは案外正解だったりします。群衆の知恵という言葉があるように、みんなが買っているなら良い物である可能性は高いはずです。

 

ところが残念なことに、投資商品ではこれは当てはまりません。みんなが買っている商品は、巧みなマーケティングやセールスで売れているだけとか、もはや実態を超えて上がりすぎていて、飛びつくのは遅すぎるとか、そんなことがたびたびあります。個別株でも「みんなが買っていて上がっているから」買って、大やけどをしたことのある人は多いでしょう。

 

では専門家のアドバイスを聞けばいいのか? ここで最初の「うさんくささ」に戻ってきます。金融やマネーの専門家と言われる人には、一定うさんくさい人が交じっており、しかもうさんくさいのに成功して残っているのは、人を魅了して信頼させる力がある人だったりするからやっかいです。

 

結局、誰を信頼するのか、どの商品がいいのか、を自分で判断せざるを得ないことになってしまうのです。

何を判断の軸にするか

では自分で判断するとして、何をその軸にすればいいのでしょう。やはり最も安定感があって、信頼できるのはアカデミックな研究に基づくものではないかと、ぼくは考えています。つまり、現代ポートフォーリオ理論です。

 

なぜこれが信頼できるかというと、まず理論を作った人たちが投資家の利害に関係がないからです。理論を作った人たちは、過去のデータを基に当てはまるロジックを考え、時の試練を経る中で、評価が固まってきました。彼らは、自分の作った投資商品を売るために理論を作っているわけではないのです。

 

現代ポートフォリオ理論とかノーベル賞とかいうと、ものすごく難解な印象も持ちますが、その意味することは比較的シンプルです。おおまかにいうと次の2つです。

  • リスクとリターンは比例関係にある
  • 値動きの異なる複数の資産を組み合わせると、リスクあたりリターンが改善する

別に個別株投資を否定する理論でもありませんし、インデックス投資が最強だという理論でもありません。高いリターンを得たければ高いリスクの銘柄を選べばいいし、別に市場平均のインデックスを買わずとも、10銘柄程度に分散すれば、インデックスに近い分散効果は得られるからです。

 

それでもこれが有用なのは、「リスクを超えたリターンは存在しない」と知れることでしょう。月利10%なんていう投資話が詐欺だというのは、この時点ですぐに分かります。仮想通貨が年に5倍になるのは、5分の1になる可能性もあるから。リスクのない高リターンなんて存在しないのです。

 

そしてすべての株の平均がインデックスであることから、株式インデックスは個別株よりも基本的にリスクあたりリターンが良くなります。個別の株が持っているシステミックリスクは分散投資することで消し去ることができるからです。

 

ファンドマネージャーは、いかにリスク当たりリターン(シャープレシオ)を上げるかを工夫して苦労していますが、だいたいにおいて、インデックスを買っておけばシャープレシオはベターな結果となるわけです。

 

こうした理論は、目利きの存在を否定していません。生存バイアスという効果はあるにせよ、本当に優秀なファンドマネージャーは過小評価されていたり、期待よりも成長する企業を見抜く力をもっており、うまく個別株を選択できれば市場よりも大きなリターンを上げることができます。現代ポートフォリオ理論でも、理論と異なる結果となる要素を「アノマリー」と呼んでいて、代表的な例にフレンチ・ファーマのファクターモデルがあります。

株式の期待リターンは、(1)CAPMが予測する市場ポートフォリオのリスクプレミアムから生まれるものに加えて、(2)小型株効果(3)割安株効果からもたらされるとしたものだ。期待リターンの水準を決定する要因が3つあるので、これをファーマ=フレンチの3ファクターモデルと言う。

ともあれ、ほかの商品と同じリスクなのに高いリターンを得られる商品は存在しません。一方で、同じリスクなのにリターンが低い商品はけっこうあって、その最大の特徴は手数料が高いことです。

 

リスクあたりリターン。これは非常に重要な要素なのですが、おそらく銀行の投信窓口はもちろん、証券会社の営業でもしっかり答えてくれる人はほぼいないでしょう。そこには、リスクを正確に測るのは難しい、将来のリターンを測るのはもっと難しいという理由もあるからです。

 

でも、リスクとリターンの関係を知っておけば、どんな商品であっても判断の軸にできるのではないか。そんなふうに思っています。

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