いやはや驚きました。中米エルサルバドルでビットコインの法定通貨化が可決されたことです。これによって、ビットコインは国が認める通貨となったわけです。
なぜビットコインを法定通貨にしたのか
エルサルバドルのこれまでの法定通貨は米ドルです。中南米最貧国といわれる同国は2001年から米ドルを正式な自国通貨としてきました。これは米ドルが世界の基軸通貨であり、どこでも受け入れてもらえるものだからですが、そこには課題もあります。
1つは多大な送金コストです。エルサルバドルではGDPの2割が海外の親族などからの送金に頼っていますが、その送金コストはたいへん高くなっています。10%ほどの手数料がかかり、数日の期間がかかるなど、決して国際間送金は手軽なものではありませんでした。
さらに金融市場が未成熟な同国では、国民の7割が銀行口座を持っていないとか。となると、スマホ一つで口座(ウォレット)が開け、数十分で送金可能な仮想通貨は、金融課題の解決にもってこいというわけです。
ビットコインの値上がりによって送金手数料も高騰していますが、そこにはレイヤー2技術のライトニングネットワークを使用することが想定されています。米Strikeと提携して、この仕組みを構築するのだとか。
自国通貨を持たない国にとって仮想通貨は選択肢
このエルサルバドルの流れを受けて、自国通貨を持たない国や高インフレに悩まされている国の議員が、仮想通貨への支持を表明しています。自国通貨のコントロールが難しい、米ドルにおんぶに抱っこも厳しい——そうなると、ビットコインに魅力を感じるのも分かります。
ちなみにビットコインは構造的に値上がりしていく運命にあるのですが、もしビットコイン建てでモノを買った場合、1BTCで買えるモノの量はどんどん増大していくことになります。つまりビットコインを法定通貨として計算した場合、経済はどんどんデフレしていくことになるわけですが、エルサルバドルではこれを米ドルとのペアで解決するようです。
つまり、モノの値段は基本的に米ドルで記載して、計算もすべて米ドル。ただし、そのときのBTC/USDのレートに応じて、ビットコインでの支払いもOKで、税金納付もそのレートで行えるという形です。
これもなかなかに面白い仕組みですね。
もう一つの基軸通貨になるか
下記の記事で書いたとおり、現在の基軸通貨は米ドルです。それは、米国の強さのもとで、どこでも流通して受け取ってもらえることが保証されているから。ただし、一部の金は米国依存を嫌って外貨準備の一部を金に変えてきており、パワーバランスが変化しつつあります。
もしエルサルバドルに続いて法定通貨としてビットコインを採用する国が増えてきたら、次に起こるのは外貨準備としてビットコインを保有する国が出てくることでしょう。
そうした国の間では、米ドルを使わなくてもビットコインによる決済で貿易も進めることができるようになります。レイヤー2にスマートコントラクトを活用していけば、国際取引の事務実務を劇的に減らすことも可能になるでしょう。
大国は自国通貨のコントロールを手放すことはあり得ませんが、小国ではビットコインを利用するのが普通になる世界がやってくるかもしれません。
Libraの夢は結局ビットコインが
この話を聞いて思い出したのが、Facebookが進めてきたLibraです。今は名前が変わってDiemとなり、ステーブルコイン化して話題に挙がることも減ってしまいましたが、当初はこうした国々での金融包摂の課題を解決するもとを目指していました。
Facebookの影響力増大を恐れた世界各国政府によってLibra計画は頓挫しましたが、その代わりにビットコインが改めてその座についたというのは面白いところです。