もう一カ月経ってしまっていますが、日経ヴェリタス6月20日号に、取材いただいた内容が掲載になりました。「放電塔」コーナーの「仮想通貨 ダブルセンター時代」の中に、コメントが紹介されました。
ビットコインとイーサリアムへのコメント
記事内で引用されたぼくのコメントは次のようなものです。
「ビットコインとイーサリアムは少なくともあと5年は保有したい。どちらにも成長期待がある」
彼はビットコインを生産量が限られる貴金属の「金」、イーサリアムを幅広い産業に欠かせない素材の「銅」のような存在ととらえ、両方に投資しているそうだ。
金と銅
ビットコインを金に例えることは、これまでも何度か書いてきました。金は代表的な貴金属であり、生産量が限られることから、極めて高い価値を持っています。また、実需はあるものの、その多くが宝飾品であり、また金地金として保管されることも多く、実際のところ、価値の保存用途で使われることが多いでしょう。
一方の銅は、産業においてなくてはならない存在です。特に、銀に次ぐと言われる高い導電率を生かし電線に使われます。送電線などは、導電率は落ちるものの軽いアルミが使われますが、建物内などの配線は銅が一般的です。実際、国内の銅消費の4割近くは電線です。
(銅の需給動向 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
まさに拡大する経済に不可欠なのが銅であり、それを如実に表しているのが国別の銅消費です。実に50%以上を中国が占めています。しかもその比率は拡大しつつあり、つまり銅の需要=銅価格を見れば、中国の経済が過熱傾向にあるか、減速傾向にあるかも分かるわけです。そんな経済の先行きを示すことから、銅は「ドクター・カッパー」などとも呼ばれています。
ちなみに銅はリサイクルの優等生でもあって、需要のうち9%はリサイクルされた銅によって賄われているといわれています。日本では、捨てられた電子機器を指して「都市鉱山」などと呼んでいますが、ここでも金や銀と並んで銅が含まれていることが強調されています。
このように、銅は、貴金属としての価値とは異なり、産業が実際に利用することが価値になっています。
イーサリアムは銅
なんで銅についていろいろと書いてきたかというと、ビットコインが希少価値を持つ金なのに対して、イーサリアムは実需としていろいろな用途に使われる銅のようなものだと考えているからです。
金も銀も銅も、「金属」というくくりには入りますし、広くは「商品」なわけですが、その位置付けはけっこう違います。過去5年の銅(Copper)と金(Gold)の価格推移を見ると、意外と異なる値動きなことが分かります。
こちらのチャートは銅とS&P500の価格推移を並べたものですが、比較的株価に連動するような動きになっていることが分かります。さすがは経済の先行指標、ドクター・カッパーだけのことはありますね。
現時点では、イーサリアムが使われるのはDeFiなど仮想通貨の世界の中に限られています。しかし、NFTなどがちゃんと離陸して、リアルな経済もEthereumのブロックチェーン上で動くようになってくると、経済にとって必須となっていくのではないかと期待しています。