FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIREして取り崩しの際の、PortfolioVisualizerのモンテカルロシミュレーションの使い方

資産の推移のシミュレーションというと、株式の期待リターンが6%くらいだから、100万円の資産を株式100%で運用すれば、20年後には320万円になっている……というようなシンプルな手法が主流です。

 

ところが実際の相場は毎年6%なんてことはなく、ある年は20%増、翌年はマイナス10%……なんてのが続くものです。長期の幾何平均が6%だというだけで、右肩上がりに資産が増えるわけではありません。

 

これがもっと影響するのが取り崩し期です。資産マックスの状態から、今度は毎年取り崩すのですから、資産はどんどん減っていきます。しかし残りの資産は6%で毎年増加するわけではなく、FIREした瞬間に30%下落の大暴落なんてことも起こり得るわけです。こうなると、その20年後に好況相場が来て20%増加しても、そのときは資産は雀の涙。まったく好相場の恩恵を受けられないことになります。

 

こうした相場変動を加味してシミュレーションする手法の1つが、モンテカルロシミュレーションです。要は乱数を使って相場変動を計算し、それを何百回も繰り返して、どのような結果になるかを幅で予想するというものです。

PortfolioVisualizerのモンテカルロシミュレーションで将来を予測する

容易にこれができるツールが、Portfolio VisualizerのMonte Carlo Simulationです。

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これは、ポートフォリオを決めると将来の資産の変化をモンテカルロシミュレーションでで予測してくれるツールです。バックテストとは違い、資産ごとのリスク・リターンなどを元に乱数を使ってシミュレーションを行い、将来の状況をパーセンタイルで表示するというものになります。

 

結果は下記のように表示されます。「10th Percentile」とは、試行100回中下位10番目の成績ということを意味します。逆に、「90th Percentile」は上位10番目の成績です。パーセンタイルはあまり馴染みのない言葉ですが、100回試行したときに、下から1番悪い、2番、3番……と順番に並べていき、X番目の成績をXth Percentileとしているわけです。

 

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未来をシミュレーションするので、設定できるパラメータはいろいろとあります。簡単に見ていきましょう。

  • Portfolio Type ざっくりした「株式」みたいな資産クラスで試算するのか、ティッカーを入れて詳細にやるのかを選択します
  • Initial Amount 初期資産額です。今回の目的ではFIRE時の資産をドルで入れます。とはいえ、初期設定の100万ドルで計算すればいいでしょう。重要なのはあくまで比率だからです

取り崩しの方法あれこれ

  • Cashflow 取り崩しの方法です。ここはけっこう複雑です。次のようになっています。

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  1. No contributions or withdrawals - 積み立て/引き出し(取り崩し)なし
  2. Contribute fixed amount periodically - 固定金額を定期的に積み立てる
  3. Fixed annual withdrawal or contribution - 固定金額を定期的に引き出す(取り崩す)。毎年のインフレ調整は、選択されたモデルに基づいて、指定された引き出しまたは拠出額に対してデフォルトで行われます。
  4. Withdraw Fixed annual percentage - ポートフォリオの残高の一定割合を毎年引き出します。このモデルでは、ポートフォリオが枯渇することはありませんが、年間支出額はポートフォリオの成長に応じて変化します。パーセンテージベースの引き出しは、ポートフォリオのローリングアベレージやジオメトリック・スペンディング・ルールを用いて平滑化することができます。
  5. Rolling average spending rule - 固定割合ではなく、複数年の平均資産残高の一定割合を引き出します。資産残高は大きく変動しますが、このルールならば引出額をある程度一定化できます。
  6. Geometric Spending rule - こちらも資産残高の一定割合を引き出しますが、一定の係数をかけて平準化させます(すみません、今ひとつどのようなアルゴリズムか分かりませんでした。。。)
  7. Withdraw based on life expectancy (平均余命に基づく年間引き出し) - このモデルは、平均余命に基づいてポートフォリオの残高の一定割合を引き出します。これはRMDアプローチであり、引き出しの割合は1 / 平均余命となります。

積み立ては簡単な話ですが、引き出し(取り崩し)方法にはいろんなバリエーションがあります。基本的には、「一定額を引き出す」か「一定率を引き出す」なのですが、この一定率をより現実的なものにするために、さまざまな平準化の手法があります。これが、ローリングアベレージやジオメトリックスペンディングルール、平均余命に基づく引き出しなどですね。詳細は、下記のページにサンプル付きで解説されています。

www.pnc.com

期間と税金

続いては、期間と税金です。

  • Simulation Period in Years - 今後何年分をシミュレーションするかを設定します
  • Tax Treatment - 税金の扱いです。税引き後リターンで考えるか税引き前リターンで考えるかを設定します。投信などで税払いを繰り延べられる場合の資産形成は、税引き前(pre-tax returns)で計算していいと思います。一方で、取り崩しの場合は配当を受け取る際に税金を払うことになるので、税引き後(after-tax returns)のほうが保守的かと。
  • Investment Horizon - 予想期間を設定した期間だけにするか、永久(Perpetual)にするかを選びます。正直、これを変えるとどんな影響があるのか分かりませんでした。
  • Taxそれぞれ - このツールは米国製なので税制も基本は米国のものになっています。日本では株式投資は20.315%の分離課税一本なので、Capital Gain TaxとDevident Taxを20.315%に設定して、ほかはゼロ。これでいいのかなと思っています。

シミュレーションモデル

モンテカルロシミュレーションは、資産の期待リターンと想定ボラティリティに応じて、将来の変動を乱数で計算し、それを複数回繰り返すことで、あり得る幅を見積もるシミュレーションです。ということは、期待リターンと想定ボラティリティの算出方法によって、結果がけっこう変わることになります。

 

  • Historical Returns - 利用可能な過去のリターンに基づいて各年のリターンをランダムに選択し、将来のリターンをシミュレーションします。
  • Forecasted Returns - 資産の平均値と標準偏差の予測値に基づいて将来のリターンをシミュレーションします。
  • Statistical Returns - ポートフォリオの資産の平均、ボラティリティ、相関関係に基づいて将来のリターンをシミュレーションします。
  • Parameterized Returns - 指定された統計分布に基づいて将来のリターンをシミュレーションします。

基本的には過去のデータに基づく「Histrical」か、期待リターンについては過去データを使わず、そのほかのデータを元に想定値を使うかのどちらかの方向です。期待リターンは過去データ通りには基本的にならないことが知られており、想定も非常に難しいものです。どのモデルが正しいということはないので、心配ならば複数のモデルでシミュレーションすることになるでしょう。

 

Histrical Returansの場合、過去の歴史データのすべてを使うか否かを設定でき、開始年から終了年を指定して、その間のデータを使うこともできます。Forecasted Returnsの場合、収益平均値を「Mean」として自分で入力する必要があるので注意が必要です。過去のデータの扱いについては、複数期間のデータを元にして計算する手法を使います。これを「1カ月」「1年」「複数年」のどれにするか選択するのが「Bootstrap Model」です。

 

また、ForecastedとStatisticalでは時系列モデルをノーマルかGARCHモデルかを選択します。

 

金融商品においてボラティリティはいったん上がると高いまま、下がると低いままになる傾向があります(ボラティリティ・クラスタリング)。これを調整してあげようというのがARCHモデル、これを拡張したのがGARCHモデルです。

 

Parameterized Returnsでは、まずリターンの分布を正規分布(Normal Distribution)か、ファットテール(Fat-Tail Distribution)かを選択します。金融理論ではリターンが正規分布する前提で計算することが多いのですが、実際の分布は大暴落の頻度がけっこう高いファットテールになっています。これを計算上、統計モデルに組み込むかどうかです。また、Parameterized Returnsは統計モデルなので、期待リターンとボラティリティは自分で値を入力することになります。

 

モデルの選択で悩むようならHistrical Returansを使い、細かなパラメータはデフォルトのままというのでいいのではないでしょうか。

 

ちなみにぼくが作成したモンテカルロ法によるセミリタイアシミュレータは、リターンが正規分布することを前提に、期待リターン4%、ボラティリティ15%を決め打ちで計算しています。これは変数に違う値を入れてあげれば変わるので、気が向いたらあったら変更できるように対応したいと思っています。

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取り崩しに大きく影響するシーケンスリスク

続いて「Sequence of Returns Risk」。いわゆるシーケンスリスクです。これが最も問題になるのは、資産形成期ではなく取り崩し期です。株式は、長期でみると他の資産に比べて最もリターンが高いことが知られています。ただし、短期で見ると大きな下落が続くこともしばしばです。

 

さて、取り崩し期に入ってからの資産額の変化を見ると、当然最初が最も資産額が大きく、取り崩すにしたがって資産額が減っていくことになります。このとき、最も資産額が高い初期に大暴落が来たら、いくら後半に好調相場が来ても取り返せません。この「いつ暴落が来るか」によって資産額の変化に大きな影響がでてしまうのがシーケンスリスクです。

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後からどのようにも挽回できる資産形成期とは違い、失敗したら後がない取り崩し期においては大きなリスクです。そのため、シミュレーションにストレスをかける目的で、「シミュレーションの初期に大きな暴落が来たらどうなるか」を検証するのが、この「Sequence of Returns Risk」になります。

 

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シーケンスリスクを考慮しない「No Adjustment」のほか、最悪の1年が最初に来た場合という「Worst 1 Year First」、最悪のx年が最初に来た場合の「Worst x Year First」まで選べます。最も厳しい「Worst 10 Year First」は、歴史上最も厳しい市況と同じものが最初の10年間続いてしまったら、資産はどうなるのかをシミュレーションすることになります。

インフレ

最後にインフレです。取り崩し期において、シーケンスリスクと同じくらい重要なのがインフレです。インフレが進むと、同じ額を取り崩していても生活はどんどん苦しくなります。

  • Inflation Adjusted - インフレを考慮に入れるかどうかを選択します。インフレ考慮とは、インフレ率に応じて取り崩し額を増加させるという意味です。当初年500万円の取り崩しでも、2%インフレだったら、翌年は510万円を取り崩すことになります。
  • Inflation model- 歴史上のインフレレート(Historical Inflation)を使うか、パラメータを設定してインフレレートを決めるか(Parameterized Infraction)を選びます。パラメータ設定の場合、平均インフレ率と、インフレ率のボラティリティも入力することになります。

取り崩し結果の例

では、実際に資産の取り崩しをやってみた例を。初期資産100万ドル、固定額4万5000ドルを毎年引き出す設定です。試算期間は40年、税引き後リターンの計算で、税率は日本に合わせています。

 

シミュレーションモデルはHistorical。シーケンスリスクとして「Worst 5 Years First」を選び、FIREした直後に最悪の5年間か来るという想定でストレスをかけます。またインフレモデルはHistricalで、米国の歴史的水準のインフレが来るという想定です。

 

ポートフォリオは米国株インデックス5000ドル%:米長期債50%というオーソドックスなもの。

 

さてこれでどんな結果になるでしょうか? まず最初に確認すべきなのが、「Portfolio Success」のグラフです。FIREにおける資産取り崩しでSuccess(成功)というのは、生きている間に資産が尽きないことです。下記のグラフは、上記の条件でモンテカルロシミュレーションを回した場合に、成功した試行が何回あったかを示しています。

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これを見ると、12年目まではほぼ100%成功しています。ところがここから成功率がどんどん下がっていき、40年後も資産が尽きない確率(全試行回数のうち成功した回数)は、42.6%となりました。これを高いと見るか低いと見るかはひとそれぞれですが、2回に1回は40年間保たないポートフォリオだということです。

 

続いて資産の増減グラフです。上位10%の結果ではなんの問題もなく資産は増加しています。実に40年後には1800万ドルを超えている計算です。50th Percentile、いわゆる中央値ではどうかというと、こちらは残念ながら31年目で7万2000ドルにまで減少。そして32年目でゼロになっています。中央値で考えると、この資産の寿命は31年だった=つまり残り31年しか生きられない、ということになります。

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さらに改善計画も提示されます。下のほうにある「Safe Withdraw Rate」は、どのくらいの引き出し率ならば安全か、また「Perpetual Withdraw Rate」は永久に資産が保つのはどのくらいの引き出し率なのかを示しています。この数字はあくまでポートフォリオから算出されるものなので、シミュレーションの際の引き出し方法などには関係がありません。

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さて、次回はこのPortfolio Visualizerを使って、実際のFIRE後の取り崩しにおいて、どんなポートフォリオが最適なのかをシミュレーションしてみたいと思います。

 

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