FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIREムーブメントが必然だった理由

f:id:kuzyo:20210913111527j:plain最近まさにブームの様相を帯びてきた「FIRE」。これは、「Financial Independence, Retire Early」の略で、経済的自立と早期リタイアの意味ですね。でも、早期リタイア(アーリーリタイア)については定期的にブームになります。ちょうど20年ほど前にも、早期リタイアが話題になったことがありました。

 

では、以前のアーリーリタイアと現在のFIREムーブメントは何が違うのでしょうか?

節約の激しさ

まずは生活コストに対する考え方です。現在のFIREの考え方の多くは、できる限り生活費を切り詰めてコストを下げ、それによって投資入金力を高めることを特徴としています。一説には、手取りの50〜75%を貯蓄(投資)に回すとされており、この入金力の高さで早く資産を築きます。

 

生活費が下がれば、FIRE後の生活に必要な資金も減るわけで、これはダブルで利いてきます。以前、「FIREで最も重要なのは貯蓄率だ」という記事を書きましたが、これがFIREの本質の1つです。

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一方で、従来のアーリーリタイアは、資産を貯めて南国の国に移り住み、全く働かずに暮らす……というニュアンスが高かったですね。当時は、東南アジアの国々の生活コストは安く、豪邸に家政婦さんと、日本の数倍豪勢な暮らしができるといわれていました。

 

ここでイメージされるのは、数千万円程度の資産をつくってのアーリーリタイアではなく、少なくとも1億円以上の資金を貯めての悠々自適生活です。昔ながらの、「お金持ちになってのんびり暮らす」という考え方に、生活コストの安い東南アジアが加わって生まれた人生設計です。

 

当然、1億円以上の資産を作ろうと思ったら、起業かギャンブル的な投資かといったところで、夢見て憧れる人はいても、現実にはなかなか難しいというのが実情でした。ところが、FIREでは、極端な話、どんな人でも、貯蓄率さえ上げれば(=生活費さえ切り詰めれば)達成できるというのが、特に若い人の琴線に触れたのでしょう。

ミニマリスト

この生活コストを抑えるという考え方には、ミニマリストブームも影響していると思います。ミニマリストは1936年にアメリカで初めて提唱され、日本では2015年に『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』がベストセラーになったことを普及しました。

 

古くから「断捨離」という言葉はありましたが、こちらは豊かな人生にモノは不要とする考えが強いですね。一方で、ミニマリストはモノの数こそ減らせど、毎日使うものは納得のいく良いものを選ぶ「一点豪華主義」の考え方が強くあります。

 

昭和が大量生産大量消費の時代で、とにかく何でもモノを買ってため込むことが幸せという価値観だったなら、平成は必要で納得できるモノだけを買って、モノを増やしすぎないというミニマリスト的発想にシフトしました。

 

ここにはデジタル化の進展と、2006年に登場した「フリーミアム」という考え方も強く関係しています。それまで、豊かな暮らしというのはあふれかえるほどのモノに囲まれることでした。それは、やりたいことをかなえるにはモノが必要だったからです。映像コンテンツを見たいという欲求は、テレビというモノを買うことで叶えられました。音楽を聴くにはステレオとCDを買う必要があり、キャンプに行って家族団らんという思いは、大きなクルマを買うことで実現できたのです。

 

しかし、インターネットの進展がこれを大きく変えます。いまややりたいことの多くはデジタルで実現可能になり、そこに必要なものはiPhone1つ。さらにサービスの多くが無料で提供されるようになったのです。これは、サブスクリプション/SaaSの進展で、「手元にモノを置かない」方向にさらに進もうとしています。

 

デジタル経済はGDPを増加させるかどうかが昔から議論を呼んでいますが、これはむしろ逆です。モノの生産と販売を軸に豊かさを測るGDPから、モノの消費がなくても満足を得られるデジタル経済に人々の嗜好がシフトしたと考えるべきでしょう。

仕事を継続するかどうか

もう一つ、FIREとアーリーリタイアブームの違いは、仕事に関する考え方です。アーリーリタイアでは、悠々自適ですから、当然仕事などせず好きな趣味にだけ時間を使うのが普通で、それが憧れでした。

 

一方で、FIREは(人によって幅はありますが)不自由な会社員生活から抜け出すことが主眼で、その後は自由な働き方をしていきたいという考え方です。正社員はすでに安定しているとはいえず、定年まで1つのところで働き続けることに疑問を持つ人も増えてきました。にもかかわらず、なかなか会社員を辞められないのは、経済的に不安があるから。ならば、資産を貯めて経済的に自立すれば、組織にとらわれず、自分がしたい仕事だけをできるのではないか、というわけです。

 

ぼく自身も、アーリーリタイアではなく、セミリタイア、FIREと記載しているのは、この考え方が中心にあるからです。仕事をしたくないのではなく、組織に縛られた無意味な仕事をしたくない。自分の能力を発揮できる仕事を、給料に関係なくやっていきたいという考え方です。

 

そして、2017年にはフリーランスブームがやってきました。脱社畜などがいわれ、組織を飛び出す働き方がももてはやされるとともに、ランサーズ、クラウドワークスなど、フリーランスに仕事をマッチングするサービスも隆盛。ブログだけでなく、YouTuberなど「当たれば儲かる」仕事も増加しました。書籍本から始まったせどりも、さまざまな商品に拡大。組織に所属しなくても、さまざまな収入を得る方法が現実のものになったのです。

 

FIREを達成した人たちのその後をみても、何もしないで遊んでいますという人はほぼおらず、ブログだったり執筆や講演だったり、なんらかの副業をしている人がほとんどです。ここには、働くのが嫌なのではなく、仕事の内容と量を自分でコントロールしたいという思いがあるのでしょう。

脱社畜と人生100年時代

この背景には、実質的に崩壊した日本型終身雇用があります。昭和の時代は、正社員として企業に就職したら、定年まで勤め上げて退職金をもらい、その後は年金で暮らしていれば、退職金が尽きるころには寿命を迎えるというのが、一般的なイメージの老後生活でした。

 

ところが、日本の終身雇用は崩壊間近で、トヨタのような伝統的大企業でも終身雇用を否定する時代です。さらに、60歳の定年後も65歳までの間は年金がもらえません。そして、年金自体が財源不足であり、存続はするにしてもいったいいくらもらえるのか想像もできない状態です。

 

そこに追い打ちをかけるように、寿命も健康寿命も延び続けています。いまや、60歳時点での平均余命は23.8年となっており、80歳以上まで生きるのは当たり前。それどころか医療の向上に伴って、100歳まで寿命が延びることが想定されるわけです。

 

60歳の定年退職から、10年程度で亡くなっていた昔とは違い、100歳まで生きるなら定年後の時間は40年。会社員生活をしていたのと同じくらいの時間が残されているわけです。

 

みなが漠然と感じていたこのことについて、明確な指針を示したのが『ライフ・シフト』です。「100年時代の人生戦略」と副題があるとおり、定年退職後の時間が増加するに当たって、どんな人生設計を行うべきかの指針を示しました。

ざっくりいえば、ライフ・シフトでは、人生には第2ステージがあるので、そこに向けて新たなスキルを身につけて、新たな仕事をできるようにしましょう——というものです。

 

定年退職後の再就職で、誰にでもできるような単純労働で尊厳を失うような毎日は嫌だ。そう思うと、もっと早くから会社に依存しない生き方、働き方を模索するのも分かります。そしてこのとき、経済的に自立していれば、内容も量も自分でコントロールできるわけです。

 

ぼくがセミリタイアに踏み切った最後の一押しは、この『ライフ・シフト』から得たものでした。

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FIREムーブメントは必然だった

そのようなわけで、定期的にアーリーリタイアブームはやってきますが、今回のFIREムーブメントは、下記のような要素が組み合わさってもたらされているのではないかと考えています。

  • ミニマリストブーム
  • フリーミアム
  • フリーランスブーム
  • 終身雇用崩壊
  • 人生100年時代

言ってみれば、今の時代、日本でもFIREムーブメントがやってくるのは必然だったといえるのではないでしょうか。

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