かなり久しぶりですが、VIXをロングしてみました。狙いと手法をまとめておきます。
VIXとは?
VIXとは、ボラティリティ・インデックスの略で、市場の荒れ具合を示す指数です。株価は、下がるときは急激に下がり、上がるときはじわじわ上がる傾向があって、つまり、株価が暴落するとVIXが跳ね上がるという構造になっています。別名、恐怖指数ともいわれ、投資家が市場に恐怖を感じると上がる感じです。
VIXの算出方法は、S&P500のオプション価格から算出されます。オプション価格は、原資産(S&P500)価格と満期までの日数、そして予想ボラティリティ(IV)から決まりますが、VIXの計算では、プットとコールを組み合わせて、IVだけを元に値が決まります。つまり、投資家が今後30日のボラティリティをどう見ているかが、VIXに反映されることになります。
株価は長期的に上がり続けますが、VIXは上下を繰り返す傾向があります。ボラティリティは上がり続けることもないし、下がり続けることもないからです。現在のVIXは15.43。ただし「○○危機」のときは跳ね上がるのが特徴です。
- 2008年9月 リーマン破綻 48.4
- 2008年10月 リーマンショック 89.53
- 2015年8月 中国減速懸念 53.29
- 2018年2月 米国景気悪化懸念 50.3
- 2020年3月 コロナショック 85.47
VIXのトレンド
株価暴落時に跳ね上がり、その後上下動を繰り返すVIXですが、大きなトレンドとしては、暴落が収まったあとも2年くらいかけて徐々に下がるという動きになっています。
現在の15近辺は、歴史的にはまだ低いとはいえず、2017年には10を切っていたときもありました。現在は、大きな流れでみると下落トレンドの中にあるといえます。こういう独特の動きをするVIXに対するオプションなんてのもあって、それはそれで面白いのですが、またそれは別で。
VIXで取引できるモノ
VIXは単なる指数なので、実はVIX自体を取引はできません。メジャーなVIX投資商品は、VIXの先物です。毎月半ばに満期を迎えるVIX先物が中心で取引されています。中でも最もボリュームが大きいのが、翌月満期です。
この先物を直接売買することもできなくはありませんが、国内で手軽に取引できるのは、先物を原資産としたCFDです。GMOクリック証券の「米国VI」は、11月10日に満期を迎えるVIX先物を元にしたCFDで、最も手軽に取引できるものです。
また、サクソバンクのVXXは、複数のVIX先物を組み合わせたETNです。先物は期限があるので、例えば米国VIだと満期のタイミングで、次の限月の先物に乗り換えが発生し、その際の価格差で損益が発生してしまいます。VXXは複数の先物を組み合わせて、かつその比率を調整することで、その変動をなだらかにしているのが特徴です。
VIXの儲け方
さて、VIXには大きく分けて2つの儲け方があります。まずは、「VIXが低いから、上がる方向に賭けてロング」「VIXが高いから、下がる方向にかけてショート」という株式のようなやり方。これはシンプルですが、○○ショックなどでVIXが本当に高いときは簡単に売り禁になって、ショートはできません。
もう一つは、先物の限月間の価格差を取っていく手法です。下記は、VIXの各限月の価格です。VIX現物は15くらいですが、未来になるほど価格が上がっていることが分かります。
先ほど書いたように、長期でVIX先物へ投資する場合、先物が満期を迎えてしまうために、1カ月ごとに翌月の先物に乗り換えていくことになります(ロールオーバー)。このとき、未来の先物のほうが価格が高いと、その都度損失が発生することになります。逆に、先物をショートしていれば、その都度利益が発生します。
未来になればなるほど価格が高い状態をコンタンゴ(いまがまさに綺麗なコンタンゴです)、未来になるほど価格が下がる状態をバックワーデーション(○○ショック直後はそうなることが多いです)といいます。
- コンタンゴ ショートしていれば徐々に利益
- バックワーデーション ショートしていれば徐々に損失
という構造です。問題は、VIXが下がっているときはコンタンゴが多く、VIXが高騰しているときはバックワーデーション状態だということ。「VIXが低いので、そろそろ上がるかな?」というときは、だいたいコンタンゴなので、長期に持つとロールオーバーによる減価で損失を被るというわけです。
とはいえ、コンタンゴの利益は非常に小さく、VIXが上昇するときの上がり方はすさまじいので、ここは非均等です。長期なら多少の上昇を気にせずにコンタンゴをあてにして持ち続け、短期ならコンタンゴが悪影響を及ぼさない範囲で上昇を狙うというやり方になります。
VIXロングを建てた
というわけで、今回はVIXをロングしました。使った商品はGMOの米国VIです。満期は11月10日なので、少なくともそこまでにクローズするイメージです。10日には先物のロールオーバーが起こり、コンタンゴであれば差額を支払わなければなりません。といっても、コンタンゴ状態というのは満期までの日数が短いほど価格が下がるので、放っておいても徐々に下落する圧力がかかっています。オプションのシータみたいなもんですね。シータはガンマと表裏一体ですが、今回はボラティリティとの勝負ということです。
まぁVIXは純粋なトレードであり、宝くじ的に一発あたるロングと、コンタンゴでコツコツかせぐショートは、確率を加味した期待リターンでは同一になるはずです。というか、かなりの手数料が取られるので、期待値的にはマイナスです。
それでもここでVIXをロングしたのはなぜか。実は、VIXは単体で取引するとゼロサムゲームのギャンブルですが、他の資産と組み合わせると違った意味を持つからです。ぼくはS&P500を中心とした株価指数をかなり保有しています。ところがこの数ヶ月はけっこう荒れていて、どこかで急落がはいってもおかしくありません。
これに保険をかけるにはどうしたらいいか? S&P500をショートするという手もありますし、S&P500のプットオプションを買うという手もあります。ただ、今回はS&P500の価格とほぼ連動するVIXをロングすることで、保険を掛けたという体裁です。まぁS&P500のポジションを全部カバーするには、取ったVIXポジションは小さすぎてアレなんですけど。
もう1つは、先の記事でも書いたように、先物口座で繰り越し損失が貯まっていることです。これをできる限り埋めたかった。株価が下落したら、株式の口座で損失が出るので、VIXをロングしていれば、その損失の一部を先物口座の利益に移し替えられます。つまり、税金分だけは有利となる取引だという考え方です。
ポジションはこちら。平均購入単価は19.5ドルです。
- 10/19 19.57ドル
- 10/20 19.50ドル
- 10/21 19.37ドル
一方で、現在の米国VIは19.19ドルと、含み損状態です。一応、ロスカットレートは15ドルに設定していますが、どうでしょう。
まぁ少なくともロールオーバーの起こる11月10日までは様子を見て、どこかで一回跳ねてくれないか、期待しています。
※直近1カ月のVIX推移