FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ネット世代に向けたプライベートバンクへ望むもの

 

f:id:kuzyo:20211120182040j:plain世の中にはプライベートバンクとかウェルスマネジメントとかいう事業があります。要するに、富裕層に代わって資産運用と管理を代行するビジネスです。ところが、どうにもプチ富裕層のニーズを満たしていないように思うんですね。こんなことをしてくれるならいいのに……というのを考えてみました。

プライベートバンクがやってくれること

プライベートバンクは少なくとも預け入れ資産1億円以上、その多くは10億円以上くらい持っている顧客をターゲットにしたビジネスです。その理由はビジネスモデルにあります。

 

証券会社のようなブローカレッジビジネスとは違い、プライベートバンクのほとんどは預け入れ資産の1%を毎年報酬として払うというようなフィー型ビジネスです。そして、顧客それぞれにオーダーメイドで対応することをウリにしています。

 

資産1億円の顧客を相手にすると、その1%はわずか100万円。担当者1人に求められる売上を考えると、5000万円から1億円はほしいはず。となると、50人から100人の顧客を担当しなくてはなりません。

 

月間1回の面談を実施するにしても、担当できる顧客の上限は20人くらい。顧客個別の要望に応えるとなると、多くても10人でしょう。となると、資産額10億円くらいないと、オーダーメイドのサービスなんてできないということになります。

とはいえ運用には期待できない

顧客のニーズに沿ってポートフォリオを組んで運用してくれる——といっても、別にやっていることは特別なことではありません。顧客の考えをヒアリングしてリスク許容度を割り出し、それに基づいて株式や債券の比率を変える。価格変動で比率が崩れたらリバランスする——。

 

あれ、これって要はロボアドがやっていることじゃん? そう。そもそもロボアドは、これまで富裕層向けに人が手でやっていたことを、アルゴリズムで実行しようと生み出されたものです。なので、根幹の部分は同じようなことをやっているわけです。

人からアドバイスは得られるが……

もう1つのメリットが、運用に関するアドバイスを得られることです。どんなに優れたポートフォリオを組成しても、経済危機のときに顧客がビビって売却してしまっては真価を発揮できません。コロナショック真っ盛りのときに怖くなって売却してしまった投資家のリターンがどうなったか、いまならよく分かるはずです。

 

このときに、「いやいや、今は売るべきではありません」と押しとどめる。これこそがアドバイスの真価であり、実際にこれがパフォーマンスの向上をもたらします。

 

とはいえ、そんなふうに言われなくても自分で分かっている投資家ならば、こんなことのために資産の1%を毎年差し出すのはどうかと思います。分散投資理論となぜ長期投資が有用なのかを理解すれば済むだけの話です。逆にいえば、これには年間1000万円(資産10億の場合)の価値がある理屈だということですけど。

 

プライベートバンクがすごい裏情報とか分析能力を持っていて、上がりそうな株を教えてくれるわけではないことには注意です。もしそれを望むなら、信頼できるファンドマネージャーが運用するアクティブファンドに投資したほうがいいですね。

プライベートバンクの価値とは?

ではプライベートバンクの価値とは何でしょうか。1つは、通常の投資家が投資できない商品にアクセスできることです。その多くはプライベート商品になります。プライベートとはパブリックの逆で、要は非公開商品ということです。

 

例えば昨今話題のプライベートエクイティは要は非公開企業の株式。プライベートクレジットなら、一般販売されていない社債に近いもの。私募とかですね。こうした商品は、公開商品に比べて規制が緩く、リスクが高い場合があるため、内容を判断できるプロ向けに取り扱われています。ここにアクセスできるというわけです。

 

といっても、こうしたプライベート商品が魔法のようなリターンを上げるわけではありません。確かに、公開商品のリターンが下がっている中で、プライベート商品の期待リターンは大きいことがほとんどです。

 

ただしそれは特権的に売られている商品だからという理由ではなくて、多分に流動性リスクを取っているからと考えた方がよさそうです。たとえば非公開株式に投資したら、倒産リスクは十分に分散すればヘッジできるとしても、いつエグジットするのか? という不明瞭な点が残ります。5年後かもしれませんし10年後かもしれません。投資家はその間、投資額を現金化できず、じっと待つしかないわけです。これが流動性によるプレミアムです。

 

これを考えると、こうした商品が富裕層向けにしか売られていないのも分かります。まず1ロットの額が大きく、かつ数年単位で現金化できなくても困らない人でないと、こうした商品には手を出せません。

事業承継、資産継承に強み

もう1つ、プライベートバンクの強みといえるのが事業承継や資産継承です。プライベートバンクは、数年間依頼して終わりというものではなく、資産を子の代までどう安全に引き継がせるかをウリにしているところが多くあります。

 

つまり、節税を考慮しながら運用を行うというわけですね。優秀な税理士ならば節税についてのアドバイスはできますが、運用面は分かりません。優秀な運用者でも、税金を加味するとやり方はけっこう変わってきます。これを総合的に判断して提案してくれるところにプライベートバンクの魅力があります。

 

ただし、事業承継ならば会社の売却先を見つけてくる能力や、相続では不動産などの活用が欠かせません。ここまで面倒を見てもらおうと思ったら、国内では大手銀行や大手証券のウェルスマネジメント部門にお世話になるほうがメリットが大きいでしょう。

 

一方で外資のプライベートバンクを使うメリットは、海外の投資先にアクセスできることや、海外法人を設立しての節税などのノウハウを持っていることだと思われます。一時期、シンガポールに法人を設立して、そこで海外籍の生命保険に入ることで、節税と相続を有利に行うというかなりグレーな手法がもてはやされたことがありました。これを個人でやろうと思うとけっこう大変なわけで、このあたりにはプライベートバンクの魅力がありそうです。

ネット世代が求めるプライベートバンク的サービス

一方で、これらのメリットはどちらかというとかなりシニアの大富豪向けな感じです。正直、資産数億円くらいにすぎないネット世代に向けたサービスではありません。一方で、昨今増加しているこれらネット世代に向けたプライベートバンク的なサービスがないな……とも思っています。

 

まず世界経済の分析やポートフォリオ組成のアドバイス、売買タイミングのアドバイスは不要です。そんなことは自分で行えます。これにコストを支払いたくはない。

 

また株や債券といったトラディッショナルな商品についてのブローカレッジ業務も不要です。昨今、ネット証券は手数料無料化が進んでおり、ほぼゼロコストで取引が可能になっています。ここをわざわざ人に代行してもらって手数料を取られるのもなしです。

 

期待するものの1つは、プライベート商品です。といっても、プライベートエクイティ(PE)は、いくつかの資産運用会社が公募投信化も検討しているようです。運用コストは取られるとしても、これならば流動性リスクもなく、相対的に高いリターンが期待できます。先日、未公開株のセカンダリーマーケット構想を発表したFundinoのように、ネット完結でPEに投資できる仕組みを整えてきている業者もあります。プライベートクレジットについても、ソーシャルレンディング業者であるSiiiboなど、私募をネットでマッチングさせる低コストな仕組みを用意していますね。というわけで、プライベート商品の中でも、海外のよりアクセスしにくいものへの投資を可能にしてくれるなら、そこは期待です。

 

2つ目は、クリプト(仮想通貨)への対応です。ネット世代のミリオネアの多くは、仮想通貨ホルダーでもあります。そして、仮想通貨の取り扱いは非常に難しい。レンディング1つとっても、中立的でしっかりとしたリスク分析は難度が高いし、現物を保有するにしても紛失リスクがあります。日本では仮想通貨のカストディ(保管業者)が存在していないので、海外のカストディを活用できるようなサービスがあれば、これは魅力的です。さらに、クリプトには税金と相続の問題もあります。ここに組織だって対応できる、しかも安心できる事業者は、ぼくが知る限りありません。

 

アート投資に代表される現物投資も、総合的にバックアップしてくれるパートナーがいるとありがたいものです。絵画、ワイン、高級腕時計、クラシックカー。いずれも、昨今の値上がりは著しく、オルタナティブ投資先として注目されています。直近ではさらにここにNFTも入りそうです。これらは正確な値付けが難しいだけでなく、流動性も低く、保管も大変です。ここを解決してくれる金融事業者がいたら、お互いにハッピーですね。

 

そんなわけで、自分でネットで情報を集めてネットで発注を出せるネット時代の投資家にとっては、周辺領域のサポートが期待されます。それぞれの詳細については、個別の専門家を使えば良いのですが、全体を総合的に俯瞰して判断できるサービスが求められるという感じ。金融系の法律を分かりながら、クリプトにも明るく、さらに現物投資についても知見がある。そして税制を判断して、どのようなマルチアセットポートフォリオを組んで、その後どう運用するべきかをアドバイスしてくれる存在です。

 

なかなかにハードルの高い要望でしょうか?

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