FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

SBIの暗号資産ファンドが残念な理由

SBIが国内初となる暗号資産ファンドの一般販売を始めます。ついに日本でも!と期待した人も多いかと思いますが、中身をよく見るとがっかりだったのではないでしょうか。

SBI「暗号資産ファンド」

国内初となる一般向け仮想通貨ファンドは、ビットコイン、XRP、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、チェーンリンク、ポルカドットに投資するもの。1資産あたり最大20%として時価総額に応じて配分してポートフォリオを組みます。

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購入も売却も3カ月かけて行い、投資タイミングリスクの軽減を図るとしています。

 

1口100万円で、最低500万円以上。金融資産3000万円以上など基準を超えた顧客のみに、対面で販売するということです。1年間の運用期間中、中途解約はできません。

期待したことと期待外れだったこと

最低500万円とか対面販売とか、ガチ富裕層向けの商品だということはありますが、やはりみんなが期待したのは、普通の投資信託と同じように分離課税20.315%となるか? ということだったと思います。

 

ところはこちらは総合課税の雑所得。つまり、普通に仮想通貨を買うのと税制の違いはありません。であれば、普通に取引所で買うのと比べてデメリットしかありませんね。いずれの仮想通貨も普通に国内の取引所で買えるものですから。

なぜこうなった?

期待させてがっかりという声もSNSでは聞かれますが、こういう形になったのには理由もあります。まず、分離課税扱いとなる投資信託には、「投資信託及び投資法人に関する法律」というものがあって、その内容は細かく定められています。その第二条1項には次のように書かれています。

信託財産を委託者の指図(政令で定める者に指図に係る権限の全部又は一部を委託する場合における当該政令で定める者の指図を含む。)に基づいて主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの(以下「特定資産」という。)に対する投資として運用することを目的とする信託

ついまり、投資信託に組み入れられる資産は「特定資産」のみということになっているのです。では特定資産とは何か。「投資信託及び投資法人に関する法律施行令」によると、

第三条 法第二条第一項に規定する政令で定める資産は、次に掲げるものとする。
一 有価証券
二 デリバティブ取引(暗号資産(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する暗号資産をいう。第十九条第五項第二号において同じ。)及び暗号資産関連金融指標(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百八十五条の二十二第一項第一号に規定する暗号資産関連金融指標をいう。第十号ハ及び第十九条第五項第二号において同じ。)に係るものを除く。第十号ハ及びニ、第百十七条第四号並びに第百二十五条第一項第二号において同じ。)に係る権利

もう明確に、「暗号資産および暗号資産関連金融指標に係わるものを除く」と記載してあります。日本では、暗号資産を組み入れた投資信託は、法律で禁じられているというのが実情なのです。

ファンド=投資信託だけではない

これがSBIが暗号資産投資信託ではなく暗号資産ファンドと書いている理由でもあります。ファンドというと投資信託のイメージが強いですが、これはあくまで運用の箱(ビークル)の話で、投資信託以外にも組合型もあるからです。

 

そこで今回SBIが採ったのが匿名組合型でした。金商法は第2条2項5号、6号で集団投資スキームについて定めています。これが各種組合型です。その中ではいくつかのビークル候補がありますが、例えば投資事業有限責任組合はベンチャー投資などに利用される組合ですが、法律で暗号資産やデリバティブ取引を組み込めません。となると、あり得るのは匿名組合か海外籍のリミテッドパートナーシップとなります。

 

匿名組合は商法535条で規定されていて、組合といっても法人格を持たず、相互の契約にすぎません。Wikipediaによれば実務上、TKとも呼ばれるそうです。

 

この匿名組合は、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングでよく使われます。出資者は匿名組合に出資し、匿名組合が融資を行う形です。今回の暗号資産ファンドでいえば、出資者が出資して、匿名組合がSBI VCトレードを通じて暗号資産を買い付ける形です。

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このように、単なるビークルであって法人ではないので、匿名組合として利益を上げても法人税の支払いなどは必要なく、利益も損失も出資者に出資比率に基づいて配分されます。いわゆる、パス・スルー型の事業体です。

 

そして、ソーシャルレンディングやクラウドファンディングがそうであるように、こうして出資者が利益を得ても、それは雑所得という形になるわけです。ちなみに下記がソーシャルレンディングの構造。よく似ていることが分かります。

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抜け道はあるか?

いやはや、暗号資産ファンドと聞いて期待したものの、普通に仮想通貨を買うことの劣化版となり、がっかりです。ちなみに、海外ではビットコイン先物を原資産としたETFが上昇したことが話題になりましたが、海外ETFは国内で登録がないと、証券会社は取り扱えません。なので、簡単には取引できないのが実用です。

 

では、仮想通貨を20.315%の分離課税で買うことができないかというと、実はそんなことはありません。同じくSBIが取り扱う「ビットコイン先物インデックストラッカー」「イーサリアム先物インデックストラッカー」がそうです。

 

※追記:SBIが仮想通貨トラッカーなどeワラントの取り扱いを終了したというご指摘をいただきました。もし購入するなら、開発元のカイカ証券(旧eワラント証券)からになりますね。

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これはシカゴCMEに上場しているビットコイン先物に連動するリンク債に連動させた商品になります。実質的には、ビットコイン先物を原資産とするオプションを証券化したものです。一般的にはカバードワラントと呼ばれ、開発したeワラント証券(現カイカ証券)ではeワラントと呼んでいます。特徴は、カバードワラントが金商法上有価証券にあたることです。つまり税制上、先物やFXなどと同じ分離課税(20.315%)になるのです。

 

もっとも、ビットコイン先物のオプションを証券化したカバードワラントという構造なので、間にいくつもの手間がかかっており、とにかく手数料が高い。ここまでして分離課税を求めるなら、素直に法人を設立して、法人で投資したほうがよいのではないかという気もします。

 

一応、国内取引所でも法人口座は作れますしね。ただ、かなり審査には時間がかかるようです。ふと思ったのですが、個人で仮想通貨を買付けて、自分の法人のウォレットに譲渡するというのはどうでしょう? 買ってすぐの譲渡なら、損益もそんなに大きくありませんし。問題はそのウォレットが法人の所有であることをどう証明するかでしょうか。別に登録するようなものでもありませんしね。決算の時に、保有財産として記載しておけば大丈夫なのでしょうか。この方法はちょっと気になりますが、さすがにこれに詳しい税理士さんというのも少なそうです。はてさて。

 

www.kuzyofire.com

 

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