これまた工夫を凝らしたサービスが登場しました。決済サービスの「IDARE」は、「スマート積立アプリ」をうたい、保有残高へ年率2%のボーナスを付与します。あれ? これってKyashが1%で行おうとしてコケた仕組みでは。と思ったのですが、攻略法を考えてみました。
IDAREの概要
「スマート積立アプリ」っていうと何だ? と思いますが、仕組みはKyashと同じです。運営は、フィンテックスタートアップのFivotとオリコ。銀行口座やクレジットカードから残高をチャージし、バーチャルクレジットカードやリアルカードを用いて決済に使えるサービスです。
Kyash、TOYOTA Wallet、B/43、MIXI M、バンドルカード、Revolutなど、今や競合ひしめくサービスです。
サービス開始は2021年4月27日。しかし早くも22年2月9日にサービスをリニューアルし、残高に2%付与を開始しました。また、リアルカードを手数料900円で発行しています。現在、3月10日まで、手数料をキャッシュバックするキャンペーン中です。
入金は銀行のほかクレジットカードが利用できます。クレカチャージには3Dセキュアが必要。ただしIDAREを使った決済では3Dセキュアに対応していません。
2%還元の概要
では2%還元の概要を見ていきましょう。
- 残高の2%相当を毎月付与
- 付与額の上限は、当月積み立て額の20%
- チャージは月間最大100万円(KYC済みの場合)
- 決済も月間最大100万円(KYC済みの場合)
- 残高保有上限は100万円(KYC済みの場合)
これがどういうことか、例で考えてみましょう。まず10万円をチャージしたとします。その2%は2000円、月単位だと166円になります。そのため、毎月166円が擬似的な利息として入ってくることになります。ただし付与上限があるので、166円の利息を受け取るにはその5倍の830円を月間でチャージしなくてはなりません。
利息もつくし追加のチャージもあるので、どんどん残高は増加していくことになります。そして、100万円に到達すると、保有上限なので追加チャージができず、つまり付与も受けられなくなるというワケです。
これを回避するには、どんどんチャージするだけでなく、チャージ分+利息分を決済で利用しなくてはなりません。ひたすらチャージして、チャージ分の20%を利息で得、そしてその合計額を決済で利用する。そんな行為を後押しする設計になっているわけです。
最大限の利益を得る方法
最大限の利益を得る方法を考えてみましょう。保有上限が100万円なので、まず100万円分チャージします。保有額は毎日計算ということなので、1日に100万円入金すれば、毎日の残高が100万円となり、月間平均残高も100万円となります。このあたりは、メイン画面に「今月のボーナス付与予定額」として表示されているので、そこをチェックします。
翌月、1日に利息が「ボーナス」という名称で付与されます(タイミングはサポート確認済み)。100万円の2%の月割なので1666円になります。前月は100万円チャージしているので、付与上限は軽くクリアですね。
ここで翌月も1666円のボーナスを受け取るためには、8333円をチャージする必要があります。しかし、残高は100万円に達しているので、少なくとも8333円を何らかの方法で消費する必要があります。バーチャルカードまたはリアルカードで8333円を決済します。そうやって空いた枠に、改めてクレカからチャージします。すると、翌月も1666円が付与されるはずです。
ちなみに、IDAREへのチャージにはKyashが利用できました。また、ボーナスとして得た額は、残高の中で2%付与の計算に含まれません。
実利回りは?
さて、IDAREの利回りを検討してみましょう。まず、利息を得るには残高だけではなく継続的なチャージが必要だというのがミソです。計算すると、必要入金(チャージ)額は年間で、残高の約10%に相当する額になります*1。
ボーナス付与が年間12回ある前提で、各月の必要入金額とボーナス付与額を計算すると、毎月残高+入金額に対して、0.165%のボーナスが付与される計算です。残高10万円からの推移を表にすると下記のようになります。ボーナスは残高に計算上加わらないので、複利ではなく単利、ただし入金額が徐々に増大するという、いわば積立額が変化する形なので、簡単な計算ではないですね。
ともあれ、IDAREにチャージした残高はいずれ決済で利用せざるを得ず、そのときには何らポイント還元はありません。ただしIDAREへのチャージでも還元があることが重要です。例えば今なら、三井住友ゴールド(3.5%)→Kyash(0.2%)経由でチャージすれば、3.7%をゲットできます。
リスクは?
チャージした残高は、他のIDAREユーザーに送金できるほかは、クレジットカード決済に使えるだけで、現金として出金はできません。そういう意味では、失敗したからといった銀行口座に出金はできないので、あまり大量の残高を持つのは少々リスキーではあります。
ちなみに、IDAREは前払式支払手段、いわゆる電子マネーの発行登録をしており、残高は基本的に半額が法務局に供託されます。IDAREが倒産しても、少なくとも半額は保証されているということです。
IDAREの事業モデルを考えると、預けた残高はいつか決済に利用され、決済利用時は店舗から2-3%程度の決済手数料を得られます。残高の2%を毎年ユーザーに還元していては、少なくとも2年目からは赤字になるモデルです。さらに、資金の貸し付け「BNPL」にも否定的です。
わたしたちは、このような「将来のリスクと引き換えに『欲しい』を早く叶える」というサービスではなく、その対極である「しっかりと自分の力で積み立てた先に購入し所有する」という体験を提供したいと考えました。
となると、IDAREが果たしてどこで利益を得るのかは気になるところ。別の収益モデルを付け加えない限り、持続不可能なモデルだと思うからです。
とはいえ、スタートアップでもあり1年くらいは持つでしょう。早期サービス終了ならば、少なくとも残高の返金対応くらいは受け付けないと、社会的に容認されないとも思われます。
どうするか?
というわけで、ぼくの場合はKyashにけっこうな額が滞留してしまっているので、その額をIDAREに動かして、2%ボーナスを受け取ってみることにします。100万円入れると、毎月1600円あまり得られるわけですが、そうすると毎月9000円弱くらいの追加チャージと9000円くらいの決済利用が必要になるので、もう少し控えめにしておきます。
リターンをどう考えるべきか、ほかの手法と比較できるように、もう少し考えておきたいとも思っています。
*1:残高の2%が付与されますが、そのためには付与額の5倍の入金が必要なので。