「お金を持っているのに、ちょっとした費用に細かい」。富裕層に対して、こんな批判をSNSなどで見ることがあります。まぁ言わんとすることは分かります。「1億円だか2億円だか持っているのは分かるけど、それで10円、20円を気にするって、お金持ちになった意味があるの?」という話です。
でも、これはちょっと順番が逆なのです。
お金持ちが細かいのか、費用に細かいからお金持ちになったのか
実は富裕層、お金持ちになるのはざっくり2パターンあります。しっかり倹約して無駄遣いせず、資産を貯めたからお金持ちになった人(A)と、費用なんて気にせず使いたいだけ使っていたが、それ以上に稼いでいたのでお金持ちになってしまった人(B)です。
Aタイプのお金持ちは、端から見るとお金持ちだと見えないこともしばしばです。派手な生活をしていない人がほとんどで、よくよく見ると資産はたくさんあるっていうタイプ。
Bタイプは、例えば企業の創業者とか親から多額の相続を受けた坊ちゃんとかが多いでしょう。その金遣いの荒さから成金と陰口をたたかれる場合もあるし、金を使うのが当たり前という資産家情とした人もいますね。
この2つのタイプでは、冒頭の批判への対応は真逆になります。Aタイプは、ちょっとした費用にも細かいからお金持ちになったわけです。逆にBタイプは、お金に関して無頓着です。
富裕層から没落するタイプ
よくある話として、一時は羽振りがよかったけれど、いつの間にか没落して貧困生活をしている……というものがあります。事業が好調なときはよかったけれど、事業が不調になって没落したとかがたまにありますね。
このパターンは、ほとんどの場合がBタイプです。それはそう。お金がたくさんあったり入ってくるから使うわけで、入ってくるお金が減ってしまったら、それは没落します。
逆にAタイプは、そうそう簡単には没落しません。そもそも倹約で資産を構築したわけで、資産の減少やCFの減りに敏感ですし、資産を減らすような支出はそもそもあんまりやらないわけです。
10円を気にするのは性格かもしれない
こんなふうに書くと、Aタイプ、Bタイプはもって生まれた性格のようにも思えます。例えば、ウォーレン・バフェットは、「10セント落ちていたら拾う」と答えています。
2005年、バフェットとビル・ゲイツがネブラスカ大学リンカーン校で学生を前に公開対話を行った時、学生が「100ドル札を落としたら拾いに戻りますか。それとも貧しい学生に拾わせてあげますか」と質問したところ、バフェットはこう答えました。「もしビルが10セント落として出て行ったら、私が拾う」
バフェットにとっては10セントはもちろん、100ドルだって誤差の範囲でしょう。あろうがなかろうが、何の影響ももたらさないはずです。それでも、これを気にする。これが、典型的なAタイプです。
一方で、これは生活の中の習慣だともいえます。ぼく自身を振り返ってみると、20代前半の頃、欲しいものや使いたいものがあったら惜しげも無くお金を使い、足りなければ借りる、どこかの収入で埋め合わせようという生活をしていました。ATMで現金を下ろすのに手数料がかかっても「必要経費」と考え、キャッシングをして利息がかかっても「いまお金を必要としているので仕方ない」という考え方です。
いま考えると、かなりマネーリテラシー的にヤバイ感じですが、少なくとも社会人の10%くらいはこんなものです。
ところが、貯蓄のゲーム的面白さに目覚めてからは、10円でも、それどころか1円でも節約できる方法に躍起になるようになりました。例えば、200円の買い物をするときに、還元率が2%の支払い方法と2.5%の支払い方法で悩むのは、1円の差しかありません。それでも、素直に2%還元クレカで支払うか、クレカからいったんプリペイドカードにチャージして、それを登録したコード決済サービスで払うか、お得なのはどちらか?で頭を悩ませるわけです。
実質的な効果よりもスタンスかもしれない
思うに、これは実質的な効果=支払い方法を吟味すれば1円お得になる——ということよりも、少しでもお得な方法を常に考え続けるというスタンスの話なのでしょう。
本当に合理的に考えるなら、数百円の支払いでコンマ5パーセントの違いを気にしてもあまり意味はなく、「1000円以下は、常にLINEクレカ」というルールでも決めたほうが日常生活がスムーズになるようにも思います。
それでも細かな節約に心を砕くには、ちょっとした節約の積み重ねが将来の大きな資産につながるというところに立脚した、生き方のスタンスなのでしょう。1000円以下は支払い方法を気にしないというやり方は、ならば5000円以下だってどうでもいいじゃないか、1万円以下の支払い方法を気にしたって変わらない——と、際限なくバーが甘くなってしまうものです。
1円であってもカネはカネ。そして、カネは倹約できるところで倹約すべし。このスタンスが分かっていない人が、「そんなにお金があるのにケチケチするなんて、本末転倒」なんて印象を持つのでしょう。