FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

為替ヘッジを、オプションで低コストに行う研究

円安がすごいことになっていますね。昨日は日銀の大規模緩和を継続する方針発表を受けて、円安が再加速。130円を超えて、20年ぶりとなっています。この円安の理由や見通しについては、以前も簡単にみましたが、今回はリスクをヘッジする方法です。

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円急騰のリスク

まず何のリスクをヘッジするのかというと、円が急騰して円高に振れるリスクです。為替は短期から長期までさまざまな要因で動きますが、株式ほどファンダメンタルズが明確でないせいか、いったんトレンドが作られるとそれが継続する傾向にあります。

 

つまり、シンプルに言ってしまえば行きすぎるのです。今回の円安が行きすぎた水準なのか、まだまだ売られる水準なのかは分かりませんが、円安トレンドは、次の材料が登場するまで継続すると見られます。ストラテジストたちも、さまざまな観点から130円台後半から140円台も視野に……などとしており、そこまで行く可能性もあります。

しかしこれを逆の視点から見ると、行きすぎた為替はググっと戻るということです。オーバーシュートしていたものが、戻ってくるとき、今度は円高に大きく振れるリスクが生まれます。これをヘッジしておこうということです。

 

正直、ドルベースの資産を持っていれば、円安は基本的に歓迎です。ドル建てでは不調な株式市場ですが、円建では急激な円安により含み益が増加している状況。気にしなくてはいけないのは円高への動きになります。

ヘッジの方法としてのオプション

個人投資家が小規模でできる為替ヘッジは限られます。実需で使う為替予約のような方法は、投資におけるヘッジには適していないし、個人投資家ができる手法ではないでしょう。

 

最も手軽なのはFXを使って、ドル円をショートする方法です。日本のFXはスプレッドが極端に小さく、1万通貨で30円とかですから、もっぱらコストはスワップポイント。DMM FXで見ると、1日20円/1万通貨くらいなので、年率にすると0.5%くらいコストがかかることになります。

 

ドル資産のすべてを為替ヘッジしようとすると、0.5%リターンが失われるのは小さいとはいえません。特に株式はともかく、もう少しローリスク・ローリターンな資産の場合、0.5%は大きすぎます。

 

もう一つ、FXによる為替ヘッジは、為替のダウンサイドリスク(円高リスク)を完全になくすと同時に、アップサイドリスク(円安リスク)もなくしてしまいます。円安トレンドはまだ継続するかもしれず、その恩恵も受けられなくなってしまうのです。

もう一つの方法、為替オプション

そこで考えるのが為替オプションを使った方法です。最もシンプルなのが、ドル円のプットオプションを買う(ロング)方法です。プットロングは、ストライクプライスまでは何も起きず、それを下回った場合に利益が積み上がっていくポジションですが、現物と組み合わさると、いわゆるプロテクティブプットになります。

これはいいですね。だって円安の恩恵は無限に受けつつ、円高に振れた場合は損失が出なくなるのですから。といっても、そこには当然コストがかかります。プットを買うわけですから、その代金(プレミアム)を支払わなければなりません。

 

それはどのくらいか。10万ドルの為替をプットロングでヘッジしてプロテクティブプットのポジションを作ってみます。ヘッジ目的なので満期日は1年後、ストライクプライスは120円としてみましょう。

 

そのコストはサクソバンク証券の場合で1ドルあたり2.572円。つまり、10万ドルなら25万7200円。1.9%のコストでヘッジできるわけです。利益のほうは青天井、120円以下に円高が進んだ場合の損失は完全ヘッジ。そんな都合のいいポジションに対し、1.9%を高いと見るか、安いと見るか。

ちなみに、もっと欲張って、127円以下からヘッジしたい場合はどうなるでしょうか。はい。そのコストは5.358円、プレミアムでいうと53万5800円のコストとなり、4.1%のコスト支払いです。プロテクティブプットを保険と捉えるなら、ちょっと高いですね。

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カラーポジションでコストを減らす

単純なプロテクティブプットは、期間が長くなるとけっこうなコストになります。その理由の1つは、円安に振れた場合の利益側も青天井だったからです。そこで、プロテクティブプットに加えて、コールも売ってみたらどうでしょう? そうすれば、プット買いのコストをコール売りで相殺できるはずです。

 

例えば、現在ドル円が130円、ヘッジしたいラインのプットのストライクプライスを120円、ここから先の円安益は諦めるというコールのストライクプライスを140円としてみます。まず損益曲線は下記のようになります。いわゆるカラーポジションです。

次にそれぞれのコストです。同じく、1万ドルを満期1年後で、プット買い、コール売りした場合のプレミアムを見てみます。プット買いは2.477円の支払い、コール売りは1.363円の受け取り。差し引きで1.114円、つまり11万1400円のコストで済むことになります。コストは0.85%。コール売りを組み合わせたことで、コストが半減しました。

ヘッジとともに、利益も出す

オプションの面白いところは、満期をいつにするか、ストライクプライスをいくらにするかを調整すれば、もっとコストを節約したり、場合によっては利益を出したりできることです。

 

例えば、プット買い120円、コール売り140円のポジションで、満期を変えてみるとプレミアムは次のように変化します。

1ヶ月分ヘッジした場合のコストは4900円(10万ドルあたり)。つまり、0.037%です。1300万円相当のドル建て資産の為替ヘッジを1ヶ月行うコストとしては、悪くないと思いませんか?

 

満期が長くなるとコストは増加する……はずだったのですが、意外なことに6ヶ月後の7月29日満期の場合、なぜかコストがたったの2800円まで減ります。これならヘッジに使うのもいいかな…とも思いますが、ショートポジション側には証拠金52万円あまりが拘束されることには注意が必要です。

 

さらに、幅をもっと狭くしてみるともっと面白いことになります。プット買い125円、コール売り135円のポジションを考えてみましょう。125円を超えて円高に振れた分はヘッジできる代わりに、135円を超えて円安が進んでも益もチャラになるポジションです。

これがまた面白いことになりました。1年間のコストは3万0900円とかなり高いのですが、6ヶ月分だとマイナス1600円、1ヶ月だとマイナス9200円。つまり、支払う買いコストよりも受け取る売りコストのほうが多く、利益が生まれるポジションなわけです。

 

つまり、直近でいうと、125円を下回る可能性よりも135円を上回る可能性のほうが高いと市場は見ていて、それがプレミアムの価格に反映されているということになります。

オプションの可能性

最近の相場は、ひたすら為替に振り回されています。正直、株価の変動よりも為替変動のほうが大きくて影響があるイメージです。円安に振れることは円建て資産の増加につながるわけで、それはそれでいいのですが、不安も高まるわけです。

 

おそらく、為替をヘッジしようと考える投資家は極めてまれで、気にする人なら最初から為替ヘッジ付きの投信を買っているでしょう。また、ヘッジしようと考える人もFXを使うのが普通ではないでしょうか。

 

でも、オプションを使うと、設定によって柔軟なヘッジの仕方が可能になります。例えば、「ここから半年で、円高に振れるのはリスクだと思うけど、130円を超えることはもうないだろう」と考えるなら、125円のプットを買って、130円のコールを売れば、1.253円のコストを払って、2.612円を受け取ることができ、差し引き1.359円の利益を得られるわけです。10万ドルなら13万5900円の利益です。

 

唯一、国内証券会社ではサクソバンク証券くらいしかバニラオプションを取り扱っておらず、そのスプレッドも強烈に高いのが問題です。本格的に為替オプションを使うなら、IBとか海外証券会社に口座を開きたいところです。それでも、こんな投資方法があるって面白いですよね。

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