FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

実は東京が一番物価が安い説は本当か?

先日、ちきりんのVoicyを聞いていて、「実は東京が最も物価が安い」説が出てきました。東京は物価が高いといわれるけど、実はそれは不動産が高いためで、実際のモノは地方よりも安いという話です。果たして、これは本当でしょうか?

「実は東京が最も物価が安い」説

ちきりん説は、だいたい次のような論旨です。

  • 東京が物価が高いと言われるが、実は高いのは不動産だけ
  • その他のものは、高いものから安いものまで幅がある
  • 安いものを選ぶなら、地方より東京のほうが安い

voicy.jp

確かに東京には、超高いホテルとか超高い服とか超高い食材とかも売っているけど、それは全部が高いということではなくて、廉価品から高級品まで多様な需要があって、それに応える多彩な商品が用意されているということ。

 

また、例えば外食やホテルでいえば、客からすれば選択肢が多く、運営側からすれば回転率が高いため、不動産は高いものの、利益率が高まりやすくなります。さらに、多数の競合がひしめいているがために、クオリティの低い店はすぐに客足が遠のき倒産。高品質の店舗ばかりが残るということです。つまり、一見同価格だったとしても、東京のほうがサービスなどのクオリティは高くなるというロジックでした。

 

例えば、外食なら大体において次のような旨さの序列になりますね。東京>チェーン店>地方の店舗。まぁこれがすべてに当てはまるわけではありませんが、その傾向はたしかに分かります。

 

ふむふむ。なるほど確かに。そう言われると、不動産が高いことによる影響はあるものの、それ以外の要素で見ると、東京のほうがモノの値段が高くなる理由ってあんまりなさそうです。

それは本当か?

とはいうものの、それは本当でしょうか。そこで、政府統計の小売物価統計調査を見てみました。これは、「国民の消費生活において重要な商品の小売価格及びサービスの料金について調査し、毎月の動向及び地域別の物価を明らかにすることを目的」としたものです。

 

調査概要は次の通り。

  • スーパーを中心に代表的な店舗で調査
  • 都道府県などの地域別価格差を捉えることを目的として、地域により価格差が見込まれ、かつ、家計消費支出のウエイトが大きい「うるち米」、「ラップ」、「養毛剤」などの 57品目58銘柄 について調査
  • 短期間(7日以内)の特売価格や棚ざらえ、在庫一掃セール等の特売価格は調査しない

つまり全国各地のスーパーで「コシヒカリ」とか「揖保乃糸 上級品」「国産豚肉バラ(黒豚除く)」「キッコーマンしょうゆ」又は「ヤマサしょうゆ」「サランラップ」又は「NEWクレラップ」といった具体的な製品を指定して価格を調査するというわけです。

 

統計データから代表的な製品をいくつかピックアップし、東京を100%として政令指定都市ごとに価格の違いを計算してみました。それが下記の図です。

米については、那覇市(沖縄)、さいたま市(埼玉)、神戸市(兵庫)あたりが東京よりも高いですが、概ね東京よりも安くなっています。秋田市など11%も安く、米が取れるからでしょうか。

 

差が大きかったのがコロッケで、静岡市、津市のように東京よりも10%近く高いところがある一方で、長野市は40%も安く、甲府も36%も安くなっています。清酒はなぜか広島と那覇が高いんですね。ラップも松江がなぜか39%も高いという異常値です。洗剤の価格差も極めて大きく、これは本当にたまたま長期目玉商品をピックアップしてしまったんじゃないかな? と思ったり。複数年のデータを並べてみないと本当のところはわからないですね。

 

全体を単純に平均すると、プラス0.7%となり、本当にざっくりですが確かに東京は他の都市よりも少しだけ価格が高いようですね。

住居や光熱費、教育費なども見てみる

では同様に、住居や光熱費、教育費なども比較してみますよう。まず総合順位は県ごとに次のようになっています。全国平均を100とした指数です。

  1. 東京 105.2
  2. 神奈川 103.2
  3. 京都府 101.6
  4. 千葉県 101
  5. 埼玉県 100.6

逆に安い順は次のようになります。

  1. 宮崎県 95.9
  2. 群馬県 96.7
  3. 鹿児島県 97.2
  4. 奈良県 97.3
  5. 岐阜県 97.4

確かに東京は高い。ただ、この中で最も価格差があるのは住居費です。まずは住居費を高い順に並べてみます。東京はずば抜けて高い134.5。全国平均よりも34.5%高いわけです。まぁ23区に限定したらもっと高くなるでしょうし、山手線沿線に限ればもっと高くなるんでしょうけど。

 

一方で、最も安い鳥取(グラフ表示は秋田ですが、その下に鳥取があります)は82です。

一方で、水道光熱費は東京のほうが安くなっています。最も高いのは暖房費がかかる北海道。これはまぁ分かりますね。

教育費もやぱり東京が高いのかと思ったら、意外とそうではありませんでした。大阪がトップで続いて京都。和歌山、滋賀と並びます。近畿は教育が高い傾向にあるのでしょうか。

ではどんな項目に地域差が大きいのでしょうか。やはり最も差があるのは住居費。そして、教育、被服、光熱・水道と続きました。

あれ? 被服なんて地域差があるんですね。これも取り出してみます。意外なことに別に東京は高くありません。最も高いのは栃木県。そして最も安いのは香川県です。いったいなぜなんでしょう? 本当によくわかりません。

さてこのように見ると、たしかに東京の生活費は高いのですが、影響が大きいのはやはり住居費でした。そして、そのほかの地域差が大きいものを見ると、水道光熱費は東京は安い皮だし、服もそれほど高いわけではない。教育は高いけれど、トップではないという具合です。

 

それでもおしなべていろいろなものが高いため、住居費を除いた集計でもやはり東京がトップ。ただし全国平均との差は3.4%まで小さくなりました。

果たして東京の物価は高いのか?

推論とファクトをそれぞれ見てみました。ファクトのほうをぼくなりにまとめると、

  • 東京は総合で全国平均よりも5%ほど物価が高い
  • 特に高いのが住居費
  • 住居費を除くと全国格差は3%ほどに縮まる

となります。これを踏まえて、再度推論をみてみると、「住居費を除けば東京が一番物価が安い」は誤り。ただし、極端に物価が高いわけでもなくて、数パーセントくらいの違いという感じです。

 

そもそも、ECの発達によって生鮮食品以外の地域物価格差は縮小しているようにも思います。例えば、家具や家事用品を地域のお店で買っていた時代はともかく、今はニトリのような全国チェーンで買うでしょう。チェーン店もネット以前なら、地域によって価格を変えていたかもしれませんが、ECで価格がすぐに分かり購入もできる現在、全国同一価格が基本だと考えるほうが素直です。

 

教養娯楽にしても、書籍代はそもそも全国一律ですし、ネットサービスの料金に地域差はありません。

 

というわけで、東京の物価は確かに総合的に3〜5%くらいは高いし、住居費は34%も高いものの、そのほかのコストは特段高いわけではなく、ネットの発達でどんどん価格の地域格差はなくなっているはず。そして、わずかな価格の高さの代償として、多様な商品やニッチなサービスが存在するのが東京というわけです。

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