FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「安くて高品質の国」から安くて品質も悪い国へ

このところの円安と資源高のダブルパンチで、各所で話題なのが値上げです。ところが、値上げよりもひどいのが、「価格そのままお値打ちダウン♪」という取り組みではないでしょうか。

安くて高品質の国だった日本

バブル崩壊後、デフレ基調が続いた平成の日本は、基本的にモノもサービスも安い国でした。ランチが500円どころか300円を切る価格で食べられる。飲める水がほぼ無料で提供される。

 

その一方で、高品質の国としても知られていました。電車はぴったり時間通り到着し、店員は安い給料なのに「お客様は神様」だと教育される。個人的に驚愕したのは、ドコモショップに行くと、店員が床に片膝をついて「今日はどんなご用件でしょうか? お客様」とくるのです。

 

安くて高品質。そんな国でモノやサービスを享受してきた日本人は、世界で最もうるさい消費者といわれたものです。

安さ重視で品質が犠牲に

ところが、安くて高品質はそう簡単に両立できるものではありません。GDPの公式でいえば、得られた付加価値の果実は、労働者と消費者と投資家で分け合います。小泉政権からアベノミクスに続いていく市場主義の中で、日本企業は利益を増加させる、つまり投資家に果実の分配を増やすように変化してきました。

 

一方で、モノが売れないデフレ下で競争力を維持するために、安さは捨てられず、品質も下げられません。結果、しわ寄せが来たのが従業員。だから給与が上がらず、それがまわって物価も上がらない状況が続いてきました。

 

ところが、コロナ禍とそれに続く円安、物価高で限界が来ています。少なくとも僕にはそう感じられます。大手企業は軒並み値上げを発表していますが、それでも全体としての物価上昇はわずかです。

 

下記は6月24日に総務省が発表した5月の消費者物価指数(CPI)です。総合では4月に引き続き2.5%の上昇。生鮮食品を除いても2.1%でほぼ同じ上昇ということです。しかし、生鮮食品とエネルギーを除くと上昇率は0.8%。つまり、この上昇分はほぼエネルギーだということです。

値上げラッシュのようにニュースを見ると感じても、実際は値上がっているのはほとんどがエネルギーだということです。

 

では企業はどうしているか? そう。品質を下げているのです。

ステルス値上げ、サポートコストカット

よく見るようになったのは、金額はそのままに容量を減らすステルス値上げ。2017年に新パッケージになって1000mlから900mlに容量が減った「おいしい牛乳」が、僕が一番身近に感じたステルス値上げです。

nlab.itmedia.co.jp

ステルス値上げの王様といえばポテトチップスで、昨夏の北海道冷夏の影響もあったにせよ、いまは100円で買えるポテチの袋は軽いこと、軽いこと。

 

そしてステルス値上げを調べていたら、6Pチーズにも出会いました。

qr.ae

 

もう一つ、品質下落を最も感じたのは日本企業のサポート体制の劣化です。その昔、企業が設けているサポート番号は、かければ普通に人が出て、会話が通じたものでした。ところが、SNSの発展とともに「電凸」とか「特別対応された」とかが出回り、企業側もサポートセンターのマニュアル化を進めます。

 

電話をすると人が出て担当部署に回してくれるところなんてほとんどなくて、いまは音声案内に沿って番号をプッシュする自動音声応答が普通です。ちなみに、携帯からかけても有料で高額なのが常に批判されるナビダイヤルは、自動音声応答機能がサービスに含まれており、発信地域に応じて振り分けるルーティングも可能。トラフィックデータも取得できるなど、企業からするとメリットが大きいのです。

 

この自動音声応答が、コロナ禍で激しく劣化しました。まず電話をかけて「ただいま大変混雑しております」と言われないことがありません。「ただいま」ではなく「常に」大変混雑しています。そして、30分待たされることさえ普通。これがナビダイヤルだったら、怒り心頭という感じです。

 

コールセンター業界トップのトランスコスモスは「BPOサービス、コンタクトセンターサービスを中心に、地方自治体などが推進している新型コロナ対策に関連する業務の受注が増加」したとして、売上高が9.1%増加しました(2021年3月期)。コールセンター需要が増加しているのは事実のようですが、企業はここにカネをかけるのをケチっているのか、それとも需要増が大きすぎて対応しきれないのか……。

サービスレベルが上昇している海外ブランド

なぜ品質悪化と書くかといえば、海外著名ブランドは逆にサポート体制を強化していて、優れたユーザー体験を提供しているからです。個人的に感動したのはダイソン。まず製品に電話番号が記載されています。つまり取扱説明書を見なくても連絡ができます。

 

連絡先は当然フリーダイヤル。記憶が定かではないのですが、確か電話番号を伝えたら、登録されている名前や住所、使っている製品を先方で把握、面倒なやりとりなく問題の説明に入れました。リモコンの故障だったのですが、動かない旨伝えたら、すぐに「新品を送ります」と言われ、数日で新品が届きました。

 

アップルも、スピーディーな対応が魅力。店舗にいけば、その場で修理もしてくれるし、宅急便によるピックアップも迅速です。サポートは悪くないのですが、製品設計はダメなところが多く、以前MacBook Proのキートップが外れたことがあります。

 

「キートップを交換してほしいんですけど?」

「分かりました。ただし、キートップ以外にも故障が見つかった場合、同時に修理になってしまいます」

「了解です」

「最大で6万円くらいかかってしまう場合がありますが、大丈夫ですか?」

「事前にお見積りを出してもらえるのですか?」

「いえ、預かった時点で必要なところはすべて修理となります。おそらくそこまでの金額にはならないと思うのですが」

「分かりました。よろしくおねがいします」

 

修理されて返ってきた目録を見ると、「右側のスピーカー不調により、メイン基板とバッテリー交換」とあって、代金6万円ちょっとがクレジットカードから引き落とされていました。なんてこった!と思って電話したのですが、全くらちが明かず。ティム・クックにメールしようかとおもいましたがやめました。キートップが外れて6万円という、驚愕のダメ設計のMacBook Proでした。

閑話休題 安かろう悪かろうへ

そんなわけで、日本はこれから安かろう悪かろうの国になっていく予感がしています。もっとも、日本の過剰サービスは、労働者の奉仕の心で実現していた部分があります。働き方改革の良かったところは、サービス残業の撲滅や労働の対価をしっかり従業員に支払うことが普通になったこと。

 

これまで無料でサービスクオリティを上げられていた企業は、これからは相応のコストを払わなければ品質を上げられない時代になるわけです。ならば値上げしてサービス品質を上げるのか? いや、高品質を求めているくせに、そこに対価が発生したら要らないというのも日本人の特徴です。物理的なモノにはお金を払っても、サービスに対する対価を認めていない人が多いのです。

 

ahamoに代表される、ケータイショップレスのサービスが安価に登場したことも、あのサービスは過剰だったということを知らしめたわけです。

 

だから、今後は価格を安く維持したままで、どんどんサービスレベルが落ちていくでしょう。うまくITを活用して回せるところと、そうでない所に二極化されるでしょうけど、安くて高品質の日本はもう昔の話になるのではないかと思っています。

 

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