FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ヘッジファンドの投資戦略

最近はすっかり聞かなくなりましたが、一時一世を風靡したのがヘッジファンドです。最近有名なのはレイ・ダリオのブリッジウォーターで「世界最大規模のヘッジファンド」なんて呼ばれますが、その戦略として話題になるのはリスクパリティでトラディッショナルなポートフォリオを組んだ「オールウェザー」のほうで、いわゆるヘッジファンドらしい「ピュア・アルファ」のほうはあまり話題になりません。

 

というわけで、今回はヘッジファンドの投資戦略について、調べたことをまとめておきます。

ヘッジファンドの基本戦略

いわゆる普通の投資家は、「上がりそうな株を買って持つ」という方法で投資をします。これはプロの投資家、いわゆるアクティブファンドのファンドマネージャーも同様で、キモはどの株が上がるか、見極めることにあります。

 

ところがヘッジファンドの場合、考え方はけっこう違います。大別すると、次の2つがあると言われています。

  1. レラティブ・バリュー
  2. ディレクショナル

ヘッジファンドのリスク特性について(三菱UFJ信託銀行)

レラティブ・バリュー

レラティブ・バリューとは、日本語に直訳すると「相対的価値」。基本的に同じ価格になるはずなのに、異なる価格になっているものを見つけて、高い方をショート、安い方をロングします。いずれは価格は同じになるため、収益が得られるというものです。別の言い方ではアービトラージ、裁定取引ですね。

 

よく対象になる商品は、債券や転換社債など。債券においては、現物と先物の間で差が開いた時など……といわれますが、そんな都合のいいチャンスがそこらにあるわけではありません。この手法で有名だったLTCMは、例えば人気が高いため割高になりやすい新発の30年国債と、人気が低く割安になりやすい既発の30年国債との間で裁定取り引きを行ったようです。

 

転換社債は、株価がもし上がったら株式に転換できるというもので、中身を分解すると社債と株式のコールオプションを組み合わせたものになります。普通の社債よりもコールオプション分高いはずですが、その価格になっていない場合がよくあります。BS式があまり普及していなかった頃は、価格が乖離しまくりで、濡れ手に粟だったと、何かの本で読んだ記憶があります。

 

扱う商品の中にはもちろん株もあります。この場合、株のロングとショートを組み合わせて、株式の市場連動リスク、いわゆるベータをゼロにする、マーケットニュートラル戦略が基本です。複数のファクターがあるなかで、市場ファクターをゼロにして、ほかのファクターに存在する歪みを取っていく戦略です。

 

イベントドリブンをレラティブ・バリューに入れるかどうかは微妙ですが、アービトラージ系の中には入るでしょう。これは合併や買収の際に双方の株価が最終的に一致することを見越して歪みを取る、破綻企業の価値を分析して社債や株式を購入し、割安になっている分を利益とするなどの戦略です。比較的、個人投資家でもやっている人が多い戦略ですね。

 

レラティブ・バリューの特徴は、比較的安定した収益が得られることです。Mercerのデータを分析した三井住友DSによると、2020年までの20年間のレラティブ・バリュー戦略を採るヘッジファンドのリターンは次のようになりました。

  • 年率リターン 5.7%
  • ボラティリティ 4.6%
  • シャープレシオ 0.9
  • 最大ドローダウン ▲18%
  • 正のリターンの月 77%

ヘッジファンドの各成績の中でも、シャープレシオが高く、安定しているがリターンはそこまで高くないという感じです。そして多くの場合、僅かな歪みからリターンを絞り出すために、大きなレバレッジをかけます。先のLTCMの破綻は、ロシア国債のアービトラージポジションを取っていて、ロシアがデフォルトし、そのレバレッジの高さ故の破綻でした。

ディレクショナル

ディレクショナルとは「方向」の意味で、市場が上がるだろうとか下がるだろうという方向性に賭けるものです。

 

メジャーな戦略は、株式ロング・ショートなど。これは株のロングとショートを組み合わせるものですが、ベータを打ち消すマーケットニュートラルとは違い、割安な株を買って、割高な株を売るのが基本です。いわば、買いだけでなく売りも行うアクティブファンドというわけで、ベータは多少減少し、市場が下落している中でも利益を上げることが可能ですが、ファンドマネージャーの腕次第という感じです。

 

CTA戦略はコモディティ・トレーディング・アドバイザーの略で、別名マネージド・フューチャーズなどとも呼ばれます。商品先物への投資を行うような名称ですが、現在は商品先物(コモディティ)だけでなく、為替から株までさまざまなものを活用します。投資の考え方としては、テクニカル分析を中心としたトレンドフォローです。

 

グローバルマクロ、またはマクロ戦略は全世界のマクロ経済の見通しから、各国の株式、債券、為替まで使い方向性に賭ける戦略です。ポンドショートで英中央銀行に打ち勝ったジョージ・ソロスのクオンタムファンドが、グローバル・マクロとしては有名ですね。もちろん、ロングもショートも組み合わせるので、この方向だ!と思ったところから多くの収益を得ることができます。

 

と書くとすごくリスキーな印象ももちますが、先のMercerのデータを分析した三井住友DSによると、2020年までの20年間のマクロ戦略を採るヘッジファンドのリターンは次のようになりました。

  • 年率リターン 4.6%
  • ボラティリティ 4.8%
  • シャープレシオ 0.7
  • 最大ドローダウン ▲8%
  • 正のリターンの月 57%

また株式や債券との相関も極めて低く、ショートも活用するヘッジファンドの面目躍如という感じでしょうか。ただしさまざまなデータを取得して分析し、投資する商品も多岐に渡るため、大規模かつ能力の高いヘッジファンドでなければ運用が難しいものにもなるようです。

ヘッジファンドの魅力

最近では、この2戦略のほかに、仮想通貨に投資するヘッジファンドも登場しています。というか、直近のリターン上位はほぼ仮想通貨ヘッジファンドが独占でした。

 

投資対象ではなくて、投資手法で戦略が決まるというのがヘッジファンドの特徴だと思っていましたが、なぜか仮想通貨については一つの手法になるんですね。

 

オルタナティブ投資にはいろいろな手法がありますが、ヘッジファンドの最大の魅力はトラディッショナルな投資方法である株式との相関の低さでしょう。よく絶対収益を目指すといわれるように、株式市況の下落時にも利益を出すことができます。互いに異なる値動きをする資産をポートフォリオに組み込むことで、投資における唯一のフリーランチである分散効果を手に入れられるも重要なところです。これがあるから、世の企業年金とか大学基金は、資産の一部をヘッジファンドに回すわけです。

 

ところが、昨今のヘッジファンドは株式との連動が高まっており、ベータに依存しています。これでは本来のヘッジファンドの意味がないわけで、困ったものですが、収益を得ようと思ったら株式市場にロングするほうが容易だという市況環境もありました。

 

個人としては、レラティブ・バリュー以外にもモメンタムなど、複数のアノマリを組み入れ、マーケットニュートラルでベータを打ち消すポジションを取る、SUSTENのグリーンファンドに期待したのですが、残念ながら、現在は惨憺たるパフォーマンスです。なかなか理屈通りにはヘッジファンドはうまくいかないようです。

www.kuzyofire.com

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