今はけっこう投資が面白いタイミングです。というのも、インフレ退治の米利上げのために、さまざまな資産が安くなっているから。それは価格が安いというだけでなく、金利も上昇しているということでもあります。中でも面白いのが債券です。デフォルトリスクゼロの米国債で、利回りが4%を超えています。
生の債券
生の債券というのは、ETFや投資信託のようにパッケージにされていない、債券そのものを指します。日本国債そのものとか米国債そのものとか、楽天モバイル債とか、そういうものです。
債券を買うとき、例えば総合債券ETFのBNDやAGGのように、複数の債券がパッケージ化されたETFを買うやり方が簡単です。株式と同じように、市場を通じていつでも売買できることが特徴です。その一方で、複数の債券をパッケージ化しているので、「満期」というものが存在しません。
債券は、通常「償還日」というものが決まっていて、名目上の金額が、この日になると返ってきます。途中換金の場合は、債券ETFと同じように価格が変動するので、キャピタルゲインやキャピタルロスが発生するのですが、償還日まで持ちきればキャピタル損益はありません。
この償還日まで持ち切ることを前提に、価格変動の影響を受けないことが生の債券の特徴の1つです。
次に、管理費用が発生しません。債券ETFは投資信託を上場させたものなので、信託報酬がかかります。例えば【1487】- 上場インデックスファンド米国債券なら年率0.176%ですし、ドル建ての【IEF】iシェアーズ米国債7-10年ETFなら0.15%かかります。生の債券ならば、保管料は基本的にかかりません。
ただし売買に伴うコストはかかります。どの証券会社も債券の売買については「手数料無料」をうたっていると思いますが、これはつまり本来の価格にスプレッドを乗せて、相対で取引しますよ、という意味です。本来は1万円なのに、そこに5%程度のスプレッドが乗って1万500円で購入することになる。その後それを売却するときは、本来は1万円なのに9500円で買い取ってもらうことになる、こんなことが起こります。ちなみに、どのくらいのスプレッドが乗っているのかは、各証券会社ともに非開示でした。ただし売買した人に聞くと、1%以上は乗っているようです。
では生の債券ならではのリスクは何かというと、やはりデフォルトです。債券においては約束通りの利払いが行われなかったり、元本の返済が行われないことをデフォルトといいます。これが起きるときは、企業なら倒産に近い状態ですし、国債(ソブリン)の場合も相当に国の経済がヤバい状態です。生の債券の場合、デフォルトするとすべてが影響するわけで、ゼロか100かということになります。
複数の債券をパッケージにしている債券ETFでは、中身の債券の一部がデフォルトすることは予め織り込まれています。100社のうち3社がデフォルトしても、平均利回りが10%あれば、合算して7%の利回りを得ることができます。これが債券ETFのメリットで、ゼロ100のリスクを取る必要なく、リスキーな債券を購入できます。
このリスクは、デフォルトリスクがゼロとされている先進国の債券ならば、考える必要がありません。例えば米国国債ならば、償還まで持ち切る前提で、低コストで高リターンを得られるわけです。
米国債4%超え
そんなわけで、生の債券の最大のリスクはデフォルトで、それは米国債ならば考えないで済みます。そんな米国債は現在ものすごい高利回りになっているのです。それはもちろん今の米国が急激に利上げを進めているせいですが、その利回りは4%を超えてきています。
ちなみに週末の国債販売のリストを各証券会社でざっくりと見てみましょう。
楽天証券はこれだけです。あんまりラインアップがありません。ちなみに、左側のパーセンテージが利率で赤いのが利回りです。
SBI証券は次の通り。けっこういっぱいあります。
日興証券はけっこうなラインアップがありますが、いまやSBIのほうが多いかもしれませんね。
野村證券は、先日見たときにはそこそこ既発債のラインアップがあったのですが、この週末はゼロ。先日、米国債がWebローンの担保対象になったと発表があったので、その効果があったのかも。
マネックスはこんな感じ。楽天チックという感じでしょうか。
当然ですが、生の米国債はドルで買うことになります。そのため証券口座にドルが必要です。
ちなみに利付債というのは、普通の債券で持っていると年に2回、金利が振り込まれます。そして償還日に額面価格が返ってきます。既発債は、発行済の債券を途中で購入しているものなので、購入額は発行額である額面価格とは違っています。
ストリップス債とは金利が付かない代わりに、額面価格よりも低い値段で発行されたものです。10年後100万円で返ってくる債券で、金利の支払いはないけれど、代わりに70万円で売り出しますって感じ。この例だと、ざっくり利回り3.7%くらいですね。
最大のリスク、為替
さて、一回買えば満期まで利回りが確定し、かつ米国債だけにデフォルトのリスクはゼロ。いってみれば定期預金のようなものです*1。
では最大のリスクは何か。それは為替です。償還日まで持ち切るということは、その間、ドル円為替の変動リスクを取り続けることになります。毎年4%の金利が得られても、ドル円が毎年4%下落したら(円高になったら)、プラマイゼロということです。
では現在138.6円のドル円が、毎年4%ずつ下落するというのはどんなイメージでしょうか。このように、来年11月に133.1円より円安なら勝利。これより円高になっていたら損失です。そして、6年後、2028年の11月に108.5円を下回っているかどうかで、損益が決まります。
これは純粋な損益の話です。今買えば、例えば4%のリターンは確定ですが、それはあくまでドルでの話。円としては円高が進めばどんどんリターンは悪化し、ある一線を超えると損失になります。そのラインが上記のグラフというわけです。
そして基本的に、米国債を購入する場合は為替ヘッジは効きません。米国債の利回りというのはドルの金利そのものであり、為替ヘッジすると日米金利差だけのコストがかかります。そして国内の金利がほぼゼロである以上、為替ヘッジには4%近いコストがかかるっていうわけです。
例えば、FXで為替ヘッジをするにはドルを売る必要があります。1万ドルあたり1日に130円のスワップコストがかかります(最安のFX業者で)。これが1年間続くとするなら年間で4万7450円=342.3ドル。つまり、3.423%のコストがかかるわけです*2。
意外なリスク、インフレ
もう一つはインフレです。「いや、今インフレ起こってるでしょう?」と思うかもしれませんが、インフレの多寡というよりもインフレが継続した結果、社会に起こる内容です。
4%の利回りが高いと思うのは、このインフレがやってくるまで超低金利の世の中に慣れてしまっていたからのこと。ここで、20年後償還の4%利回り国債を買うということは、「いずれインフレが4%以下になる」ことにかけているということだからです。いまは利上げによってインフレを抑え込もうとしていますが、高インフレが定常的になる世界だって考えられます。
例えば40年くらい前の日本は、ゆうちょの定期預金の金利が8%くらいあったのです。そして同じくらいのインフレがありました。こんな状況がもし続くと、4%利回りで固定された債券はお荷物でしかありません。まぁ現金よりは得ですけど。
米国債を買ってみた
というわけで、ぼくは現在楽天証券にそこそこのドルを保有しています。これを円転してもいいのですが、中期的には円という通貨を信頼できていません。なので、資産の少なくとも4割くらいはドルで持っておきたい。
でドルを現金(MMF)で持つならば、4%のリターンが得られる米国債のほうがいいのではないか? 為替リスクは変わらないのだから。と思うわけです。
そんなわけで、いくつかの条件はあるのですが、米国債を買ってみようと注文しました。すると。。。
なんてこった。売り切れ? 売り切れなのに注文ボタンがあるというのがなんとも。これはそのうち補充されるのでしょうか。と思ったら、翌日少し補充されました。
というわけで、下記の債券を購入してみました。先日の逆CPIショックで利回りが4%を割ってしまっているものもありますが、まぁそこはご愛嬌ということで。
- 償還まで6年ちょっとの利付債 年利1.625%、利回り3.71%
- 償還まで6年ちょっとのストリップス債 利回り3.72%
- 償還まで21年ちょいのストリップス債 利回り4.221%